熊本県の空き家調査|住宅が余る地域と足りない地域の見分け方

熊本県の空き家調査|住宅が余る地域と足りない地域の見分け方

熊本県の総住宅数は85万1,100戸で、5年前から4.6%増加。空き家も13.6%増えて12万7,100戸となり、空き家率は14.9%になりました。

ただし県内の数字を見ると、まったく別の県が2つあるように見えます。1世帯当たりの住宅数は、上天草市で1.35戸、天草市と水俣市で1.32戸。一方、菊陽町・合志市・大津町・益城町は1.07戸です。住宅が世帯より35%多い市と、7%しか多くない町が同じ県内にあります

空き家率も上天草市26.4%に対し菊陽町6.7%で約4倍。賃貸にも売却にも出ておらず別荘でもない放置型に絞ると、上天草市22.2%、菊陽町0.93%で約24倍の差になります。この記事では、不動産会社・リフォーム会社・自治体それぞれが熊本県でエリアをどう選ぶべきかを整理します。

この記事の結論

  • 熊本県の空き家率は14.9%、空き家は13.6%増えて12万7,100戸(令和5年)
  • ただし放置型は6万5,000戸で、5年間の増加は600戸のみ。増えたのは賃貸用など
  • 県内の1世帯当たり住宅数は1.35戸から1.07戸まで開いている
  • 放置型の割合は上天草市22.2%、菊陽町0.93%と約24倍の差。同じ県として扱えない
  • 費用は10,000㎡あたり1,000円(税別)〜の従量制。地域によって調査項目を変える設計が有効

熊本県の空き家を数字で確認する

熊本県企画振興部統計調査課が公表した令和5年住宅・土地統計調査の県内結果による数値です。

項目 熊本県 全国
総住宅数 85万1,100戸(+4.6%) 6,504万6,700戸(+4.2%)
総世帯数 72万7,700世帯(+3.4%)
1世帯当たりの住宅数 1.17戸 1.16戸
空き家数 12万7,100戸(+13.6%) 900万1,600戸(+6.0%)
空き家率 14.9%(+1.1pt) 13.8%
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 6万5,000戸(7.6%・+600戸) 385万6,000戸(5.9%・+10.6%)
同上が空き家に占める割合 51.1% 42.8%
持ち家住宅率 62.9%(+1.0pt) 60.9%

出典:熊本県企画振興部交通政策・統計局統計調査課「令和5年住宅・土地統計調査結果 住宅及び世帯に関する基本集計(熊本県分の概要)」(2025年3月公表)。

増えたのは賃貸用、放置型は600戸だけ

空き家は1万5,000戸増えました。しかし放置型は6万4,400戸から6万5,000戸へ、600戸の増加にとどまります。増加率にすると0.9%。全国の10.6%と比べると、ほとんど動いていません。

総住宅数が4.6%増えていることを踏まえると、増えた空き家の大半は、新しく供給された住宅のうち埋まらなかった分だと読めます。放置された住宅が急増しているわけではありません。

それでも放置型は6万5,000戸ある

増えていないことと、少ないことは別の話です。放置型6万5,000戸は空き家全体の51.1%を占め、総住宅数に対する割合は7.6%。全国平均5.9%を上回ります。

母数はすでに積み上がっており、そこから横ばいで推移している状態です。「増えるのを待つ」戦略は効きませんが、対象そのものは十分にあります

県内に、性格の違う2つの地域が同居している

熊本県で最も重要なのは、県平均ではなく市町村別の数字です。

地域 1世帯当たり住宅数 空き家率 放置型の割合 持ち家住宅率
上天草市 1.35戸 26.4% 22.2% 81.8%
天草市 1.32戸 24.4% 18.6% 75.6%
水俣市 1.32戸 25.3% 19.5% 75.1%
熊本市 1.15戸 13.2% 4.1% 51.9%
合志市 1.07戸 7.6% 3.1% 74.1%
大津町 1.07戸 8.0% 2.6% 60.2%
菊陽町 1.07戸 6.7% 0.93% 46.2%

上天草市と菊陽町を比べると、空き家率で約4倍、放置型の割合では約24倍の開きがあります。1世帯当たりの住宅数も1.35戸と1.07戸で、住宅が余っているかどうかという根本的な条件が違います。

通勤時間にも差が出ています。持ち家世帯の通勤時間の中位数は、熊本市北区・合志市・菊陽町で25分以上、人吉市・水俣市・上天草市・阿蘇市・天草市では15分以内です。

調査の目的が、地域によって変わる

1世帯当たりの住宅数が1.07戸ということは、住宅の余りが7%しかないということです。この地域では、空き家を探すより土地を探すほうが実務に合います。菊陽町の放置型は190戸、大津町は420戸。空き家調査で拾える件数そのものが限られます。

逆に上天草市・天草市・水俣市では、住宅が世帯より3割以上多く、放置型の割合も2割前後。こちらは空き家調査が成立する地域です。

土地調査では、空き家(戸建て)と空き地(更地)を調査項目として使い分けられます。同じ県内でも、地域によって指定する項目を変えるのが合理的です。

目的によって、見るべき数字と調査項目が変わる

立場 主な目的 優先すべき地域 調査で指定するとよい条件
不動産会社(仕入れ) 売却・買取につながる物件の発掘 放置型の割合が高い県南・天草 戸建てに限定し、集落単位で範囲を切る
不動産会社(用地) 開発用地の確保 住宅が不足している熊本市東部・菊池地域 「空き地(更地)」「駐車場」を調査項目に指定
リフォーム・外壁塗装会社 施工需要のある住宅の発掘 持ち家率の高い地域全般 「古家(居住中)」を調査項目に追加する
自治体 実態把握、防災・防犯の重点地区の選定 担当区域の全域 町丁目単位で全域を対象にし、状態別の分類を依頼する

リフォームは断熱に余地がある

省エネ設備の状況を見ると、太陽熱を利用した温水機器がある住宅は10.5%で、九州平均6.3%・全国3.0%を大きく上回ります。太陽光発電機器も9.3%で全国4.9%の約2倍。この2分野は普及が進んでいます。

一方、二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓がすべての窓にある住宅は13.7%で、全国16.8%を下回ります。太陽熱・太陽光は全国を大きく上回るのに、開口部の断熱は全国を下回るという偏りです。持ち家45万1,200戸に対して、この分野の未施工層はまとまって残っています。

高齢世帯の3分の1以上は、子が遠方にいる

県内で65歳以上の世帯員がいる世帯は34万世帯、主世帯の47.5%です。そのうち持ち家に住む世帯では69.0%に子がいますが、子が片道1時間以上の場所に住んでいる世帯が37.7%を占めます。

相続が発生したとき、その住宅を引き継ぐ人が遠方にいる可能性が高いということです。所有者情報を取得したうえで、DMなど確実に届く手段を用意しておく必要があります。

地域によって、調査項目を変えられます。

空き家が多い地域は戸建て調査、住宅が足りない地域は空き地調査。目的に合わせて組めます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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制度の変化が所有者に届いているか

空家等対策の推進に関する特別措置法は2023年に改正され、同年12月に施行されました。倒壊の危険がある「特定空家等」の手前の段階として「管理不全空家等」の区分が新設され、市区町村から勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます。

あわせて、2024年4月からは相続登記の申請が義務化されています。相続で不動産を取得したことを知った日から一定期間内に登記申請を行うことが求められ、過去に発生した相続についても対象となります。

熊本県では放置型が6万5,000戸で横ばいですが、高齢世帯の子の3分の1以上が片道1時間以上の場所に住んでいます。相続が発生したときに、遠方の相続人へ制度の変化が届いているかどうかが分かれ目になります。伝える役割はこちら側にあります。

なお制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、所管する市町村の窓口や司法書士などの専門家への確認をご案内ください。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。調査期間も対象面積と調査項目数によって変わるため、範囲をうかがったうえで費用とあわせてスケジュールをご提示します。

調査項目は、空き家(戸建て)のほか、空き地、古アパート、古家(居住中)、駐車場、倉庫・工場などから選べます。熊本県では地域によって指定する項目を変えると、面積あたりの成果が変わります。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。エリアによって調査の粒度が変わることはありません。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(仕入れ/用地確保/施工提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。集落単位での区切りにも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。WEB上のデータでは把握できない現況を押さえる工程です。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

熊本県で空き家調査を進めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 県平均14.9%でエリアを判断する/放置型の割合は市町で約24倍の差があります。県平均はどの地域の実態も表していません
  • 住宅が不足している地域で空き家調査を発注する/菊陽町の放置型は190戸です。空き地調査に切り替えたほうが成果が出ます
  • 空き家の増加分をそのまま対象と考える/1万5,000戸増えたうち放置型は600戸です。増えたのは賃貸用などです
  • 市全域をまとめて発注する/天草や県南は面積あたりの住宅数が少なくなります。集落単位で切ってください
  • リストを受け取った後の担当と件数を決めていない/誰がいつまでに何件処理するかを先に決めておかないと、リストが動かないまま古くなります

熊本県の対応エリア

県内は全14市を中心に対応しています。町村についても、隣接する市とあわせた範囲でご相談ください。天草地域も対応可能です。

熊本市/八代市/人吉市/荒尾市/水俣市/玉名市/山鹿市/菊池市/宇土市/上天草市/宇城市/阿蘇市/天草市/合志市

よくあるご質問

地域によって調査項目を変えられますか?

できます。空き家が多い地域では戸建ての空き家、住宅が不足している地域では空き地(更地)や駐車場など、エリアごとに調査項目を指定していただけます。目的を伺ったうえでご提案します。

熊本市の特定の区だけでも依頼できますか?

可能です。区単位はもちろん、町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。熊本市は区によって空き家率が11.3%から15.4%まで異なります。

天草地域や県南も対応していますか?

対応しています。市全域ではなく集落単位まで絞り込んだ範囲指定が可能です。移動を伴うエリアについては、範囲と件数を伺ったうえで実施方法をご提案します。

居住中の古い戸建ても調査対象にできますか?

できます。「古家(居住中)」を調査項目として指定いただければ、築年数相当の居住中戸建てを調査・報告します。リフォームや外壁塗装のご提案先を探す場合はこちらが中心になります。

所有者が県外に住んでいる場合も特定できますか?

調査で特定した地番をもとに所有者情報を取得するため、所有者の居住地が県外であっても対応します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくことも可能です。

まとめ

熊本県の空き家率14.9%、放置型6万5,000戸という数字は、県全体を平均した結果にすぎません。実際には、1世帯当たり住宅数1.35戸の上天草市と1.07戸の菊陽町が同じ県内にあり、放置型の割合では約24倍の差があります。

住宅が余っている地域では空き家調査、住宅が足りていない地域では空き地調査。同じ県内でも、調べるべき対象そのものが変わります。県平均で発注条件を決めず、市町村ごとの数字を見てから調査項目を選んでください。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げる進め方をおすすめします。

まず1地区から、熊本県の現地データをお出しします。

不動産の仕入れ、用地の確保、施工提案先の発掘、自治体の実態把握、それぞれに合わせた調査項目をご提案します。

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