共有名義の空き家をどう扱うか|持分の確認と優先順位のつけ方

共有名義の空き家をどう扱うか|持分の確認と優先順位のつけ方

登記情報を取得したら、所有者が5人いた。あるいは10人。空き家の仕入れでは珍しくない状況です。

相続が発生すると、遺産分割が済むまで不動産は相続人の共有になります。分割せずに次の相続が起きれば、共有者はさらに増えます。世代を重ねるほど、権利関係は複雑になります。

そして共有物の扱いには、民法上のルールがあります。売却には原則として共有者全員の同意が必要とされています。この記事では、共有名義の物件をどう判断するかを整理します。

この記事の結論

  • 共有者は登記情報で確認できる。氏名と持分が記載される
  • 売却には原則として共有者全員の同意が必要とされている
  • 2023年の民法改正で所在不明の共有者がいる場合の仕組みが整備された
  • 実務では共有者の数で優先順位をつけるのが現実的
  • 相続登記の義務化により、今後は名義が整理されていくと見込まれる

なぜ共有になるのか

原因のほとんどは相続です。

段階 状態
相続が発生する 遺産分割が済むまで相続人の共有になる
遺産分割をしない 共有のまま残る
共有者に相続が発生する その持分がさらに分かれる
これが繰り返される 共有者が増え続ける

全国で世帯が所有する空き家の57.9%は相続によって取得したものです。そして空き家になった原因の58.3%は所有者の死亡でした。

相続と空き家は、ほぼ同じ現象を別の角度から見た関係にあります。共有が発生しやすい構造だということです。

相続登記に期限がなかった

従来、相続登記には期限がありませんでした。そのため名義を変えずに放置された不動産が全国に存在します

2024年4月から義務化されましたが、過去分が行き渡るには時間がかかります。施行前の相続については、原則2027年3月31日までの対応とされています。

登記情報で共有者と持分が分かる

共有かどうか、誰が何割持っているかは、登記情報を取得すれば確認できます。所有者事項であれば1件140円(登記情報提供サービス)です。

ただし登記されている名義が現在の権利者とは限りません。相続登記が済んでいなければ、故人の名義のまま残っています。

この場合、実際の権利者は相続人ですが、それが誰かは登記簿に書かれていません。戸籍をたどる必要がありますが、職務上請求ができるのは士業に限られます。

共有物のルール

民法では、共有物について行為の種類ごとに要件が定められています。

行為 要件
保存行為(修繕など) 各共有者が単独でできるとされている
管理行為(賃貸など) 持分の過半数で決めるとされている
変更行為(売却・解体など) 原則として全員の同意が必要とされている

売却や解体は変更行為にあたるとされ、全員の同意が求められます。1人でも反対すれば、話は進みません。

制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、弁護士や司法書士などの専門家への確認をご案内ください

2023年の民法改正

2023年4月から、共有に関する規定が見直されました。所在等が不明な共有者がいる場合の仕組みが整備されています

整備された仕組み 概要
所在等不明共有者の持分の取得 裁判所の関与により、他の共有者が持分を取得できる
所在等不明共有者の持分の譲渡 裁判所の関与により、第三者への譲渡が可能になる
共有物の管理に関する規律の整理 行為の種類ごとの要件が明確化された

あわせて所有者不明土地・建物の管理制度も創設されました。特定の土地・建物について管理人を選任できる仕組みです。

いずれも裁判所の手続きが必要です。時間も費用もかかるため、すべての物件で使える手段ではありません。

実務ではどう判断するか

共有者が多い物件は、合意形成に時間がかかります。全員と連絡を取り、条件をまとめる作業が必要になるためです。

そして共有者は各地に散らばっていることが多くなります。相続を経るごとに、居住地も分かれていきます

件数で優先順位をつける

共有者の数 実務上の扱い
単独名義 優先して進める
2〜3人 進められる場合が多い
4人以上 時間がかかる。優先度を下げる判断もある
名義が故人のまま 相続人の特定が必要。士業への依頼を検討する

追える物件が他にあるなら、そちらを優先するほうが結果につながります。全国の放置型は385万6,000戸あり、そのうち権利関係が整理されている物件のほうが多数です。

共有者が多い物件は記録に残し、条件が変わったときに戻ればよいという判断です。

相続登記の義務化で改善に向かう

2024年4月から相続登記が義務化され、2026年4月には住所等変更登記も義務化されました。どちらも施行日前の相続・転居が対象です

長期的には、名義と実態が一致するケースが増えていきます。共有者を追いやすくなる方向の変化です

ただし当面は猶予期間中です。現時点では、名義が古いまま残っている物件が相当数あると考えてください

調査でできること・できないこと

できること できないこと
使われていない住宅の特定 共有かどうかの判断
地番の割り出し 共有者の人数
建物の状態の記録 持分の割合
登記情報から所有者事項の取得 相続人の特定

外観から共有かどうかは分かりません。表札に複数の姓があっても、それが共有を意味するとは限りません。

共有の有無は、登記情報を取得して初めて分かります。調査で地番を特定し、そこから確認する流れになります。

相続人の調査は範囲外

名義が故人のままの場合、実際の権利者を特定するには戸籍をたどる必要があります。これは職務上請求が必要な領域で、弊社では対応していません

司法書士等の専門家へのご依頼となります。その物件に確実に価値がある場合の選択肢だとお考えください。

地番の割り出しから登記情報の取得まで対応します。

共有かどうか、誰が持っているかは、そこから確認できます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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接触するときの注意

共有名義の物件では、接触の仕方にも配慮が必要です。

避けたいこと 理由
共有者全員に同時に送る 親族間で話が錯綜することがある
持分の買取だけを提案する 他の共有者との関係を悪化させうる
親族間の事情を詮索する 踏み込みすぎになる
「全員の同意が必要です」と説明を先行させる 手続きの話から入ると身構えられる

まずは1人に連絡し、状況を聞く。そのうえで、他の共有者にどう伝えるかを本人と相談する。この順序が現実的です。

持分だけの取引には注意

共有持分だけを取得することは制度上可能とされていますが、他の共有者との関係が難しくなります。取得後も単独では売却も解体もできません。

この手法を採るかどうかは事業判断ですが、地域での評判に関わる可能性があります。慎重にご検討ください。

目的によって、影響が変わる

立場 共有の影響 対応
不動産会社(仕入れ) 大きい。全員の同意が必要 共有者数で優先順位をつける
解体会社 大きい。解体も変更行為とされる 同上
空き家管理会社 小さい。管理は保存行為にあたりうる 1人からでも相談を受けられる場合がある
リフォーム・外壁塗装会社 ほぼない 対象は居住中の住宅
士業 受任内容そのもの 相続人調査から対応できる

管理サービスには追い風になりうる

共有者が多く、売却も解体も進まない物件。この状態では、当面持ち続けるしかありません

管理は保存行為にあたるとされ、要件が売却より緩やかです。合意形成が難しい物件ほど、管理の需要が生じるという構図になります。

ただし個別の判断は状況によって分かれます。専門家への確認をご案内ください。

士業には受任機会になる

相続人の調査、遺産分割の手続き、相続登記。共有が複雑な物件ほど、専門家の関与が必要になります

2024年4月から相続登記が義務化され、施行前の相続も対象です。手続きが必要な層は確実に増えています

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

登記情報の取得は、調査で特定した地番をもとに行います。地番の割り出しから取得、リストへの反映までを含む金額です。共有名義の場合、共有者の氏名と持分を確認できます。

なお戸籍をたどる相続人調査には対応していません。職務上請求が必要な領域のため、司法書士等の専門家へのご依頼となります。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、登記情報から所有者事項を取得します。共有名義の場合、共有者と持分も確認できます。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

共有物件を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 外観から共有かどうか判断しようとする/登記情報を取得しなければ分かりません
  • 共有者全員に同時にDMを送る/親族間で話が錯綜することがあります
  • 登記名義を現在の権利者と考える/相続登記が済んでいなければ故人の名義のままです
  • 共有者が多い物件に時間をかけすぎる/追える物件が他にあるなら、そちらを優先してください
  • 「全員の同意が必要です」から話を始める/手続きの説明が先行すると身構えられます

よくあるご質問

共有かどうか調査で分かりますか?

外観からは分かりません。調査で地番を特定し、登記情報を取得することで確認できます。共有名義であれば、共有者の氏名と持分が記載されます。

共有者の人数まで確認できますか?

登記情報を取得すれば確認できます。ただし相続登記が済んでいない場合、登記されている名義は故人のままです。この場合、実際の権利者は相続人となり、特定には別途調査が必要です。

相続人の調査までお願いできますか?

対応していません。戸籍をたどる作業は職務上請求が必要な領域のため、司法書士等の専門家へのご依頼となります。弊社では登記情報から取得できる所有者事項までを提供しています。

共有者が多い物件はどう扱えばよいですか?

記録に残したうえで、優先度を下げる判断が現実的です。合意形成に時間がかかるためです。追える物件が他にあるなら、そちらを優先するほうが結果につながります。

共有者全員分の住所を取得できますか?

登記情報に記載されている範囲で取得できます。ただし登記簿の住所は登記した時点のものです。転居していれば古い住所のままとなり、一定の返送は避けられません。

まとめ

共有名義の空き家は、相続を経るごとに増えていきます。空き家の57.9%は相続による取得で、空き家になった原因の58.3%は所有者の死亡。共有が発生しやすい構造です。

そして民法では、売却や解体は変更行為にあたるとされ、原則として全員の同意が必要とされています。1人でも反対すれば話は進みません。

2023年の民法改正で、所在等が不明な共有者がいる場合の仕組みが整備されました。ただし裁判所の手続きが必要で、時間も費用もかかります。すべての物件で使える手段ではありません。

実務では、共有者の数で優先順位をつけるのが現実的です。追える物件が他にあるなら、そちらを優先する。共有が複雑な物件は記録に残し、条件が変わったときに戻ればよい。放置型は全国で385万6,000戸あり、権利関係が整理されている物件のほうが多数です。

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