登記の義務化で所有者の特定はどう変わるか|2つの制度の影響

登記の義務化で所有者の特定はどう変わるか|2つの制度の影響

空き家の所有者にDMを送っても、一定の割合で返送されてきます。登記簿に記載された住所が、登記の手続きをした時点のものだからです。転居していても、本人が変更登記をしなければ更新されません。

この構造が、いま変わり始めています。2024年4月に相続登記が、2026年4月に住所等変更登記が義務化されました。所有者不明土地の発生を防ぐことを目的とした、不動産登記制度の改正です。

登記名義と実際の所有者・現住所が一致するケースは、今後増えていくと見込まれます。ただしすぐに効果が出るわけではありません。この記事では、2つの義務化が所有者調査の実務に何をもたらすのかを整理します。

この記事の結論

  • 相続登記は2024年4月、住所等変更登記は2026年4月に義務化された
  • いずれも施行前の分も対象。過去の相続・転居も申請が必要になる
  • 住所変更登記には2028年3月末までの猶予期間がある
  • 登記簿の住所の精度は上がる方向だが、全件に行き渡るには時間がかかる
  • 当面は登記情報と現況を突き合わせる手順が確実

2つの義務化の内容

不動産登記法の改正により、2つの登記が義務化されました。

項目 相続登記 住所等変更登記
施行日 2024年4月1日 2026年4月1日
申請期限 相続を知った日から3年以内 変更があった日から2年以内
過料 正当な理由なく違反した場合、10万円以下 正当な理由なく違反した場合、5万円以下
施行前の分 対象。過去の相続も含む 対象。過去の転居も含む
猶予期間 2028年3月末まで
対象 相続による所有権の取得 個人の住所・氏名、法人の名称・所在地

いずれも施行前に発生した分が対象に含まれる点が重要です。10年前、20年前の相続や転居であっても、登記が未了であれば申請の対象になります。

正当な理由があれば過料は科されない

重病や長期入院、住所を公にすることで危害が及ぶおそれがある場合など、正当な理由があると認められれば過料の対象にはなりません。また、いきなり過料が科されるのではなく、法務局からの催告を経る段階が設けられています。

なぜ実務に効くのか

所有者を特定する作業でつまずくのは、多くの場合登記簿の情報が古いことに起因します。

これまでの問題 義務化による変化の方向
登記簿の住所が転居前のまま 変更登記が義務になり、更新される方向へ
名義人が故人のまま 相続登記が義務になり、名義が現在の権利者へ
相続人が誰か登記簿から分からない 相続登記が進めば登記簿で把握できる
DMを送っても返送される 到達率が上がる方向へ

登記情報の精度が上がれば、所有者調査の工程はそのぶん軽くなります。これは業界全体にとって良い変化です。

法務局が職権で登記する仕組みも始まっている

住所等変更登記の義務化とあわせて、法務局が職権で変更登記を行う制度も導入されました。住民基本台帳ネットワークなどから情報を取得し、登記名義人の了解を得たうえで変更登記を行うものです。

ただし対象には一定の条件があり、すべてのケースで自動的に登記されるわけではありません。所有者自身による申請が不要になるわけではない点に注意が必要です。

効果が出るまでには時間がかかる

制度としては前進ですが、明日から登記簿が正確になるわけではありません

  • 住所等変更登記には2028年3月末までの猶予期間がある
  • 過去分の相続登記が行き渡るには相応の時間がかかる
  • 制度そのものを知らない所有者も一定数いる
  • 正当な理由により申請していないケースもある

したがって当面は、登記情報を取得したうえで現況とあわせて確認する手順が確実です。義務化されたから大丈夫、とは考えないでください。

目的によって、受ける影響が変わる

立場 影響 当面の対応
不動産会社 所有者の特定精度が上がる方向。返送率の改善が期待できる 返送率を記録し、変化を追う
リフォーム・外壁塗装会社 対象が居住中の住宅のため、影響は限定的 従来どおり現地での居住確認を優先する
自治体 所有者不明土地の発生抑制。措置の相手方を特定しやすくなる 制度の周知とあわせて実態調査を進める

所有者にとっては動く理由になる

事業者側から見れば所有者調査の話ですが、所有者にとっては手続きが必要になったということです。

相続した空き家を登記もせずに放置している。転居したまま住所変更をしていない。こうした状態は、いずれも対応が求められる状況になりました。手続きを機に、不動産そのものの扱いを検討する所有者は今後増えると考えられます。

世帯が所有する空き家の61.6%は相続・贈与によって取得したものです。相続登記の義務化は、この層に直接関わります。

登記情報の取得から、DM発送まで一括で対応します。

現地調査で地番を確定し、所有者を特定してお届けします。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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誤解しやすい点

「所有不動産記録証明書」は他人の不動産を調べる制度ではない

2026年2月から、自分が名義人となっている不動産の一覧を取得できる所有不動産記録証明書の制度が始まりました。相続人が被相続人の不動産を把握する場面などで使われます。

ただしこれは本人や相続人が自分に関わる不動産を確認するための制度です。事業者が第三者の所有不動産を調べる用途では使えません。

義務化と情報の公開範囲は別

登記情報が公開されている点は従来と変わりません。地番が分かれば誰でも取得でき、利用目的も問われません。義務化によって取得できる情報が増えたわけではないということです。

変わるのは、記載されている情報の精度です。取得の手続き自体は従来と同じです。

いま確実な手順

制度が浸透するまでの間、所有者を特定する手順は次のとおりです。

工程 内容
1. 現地で物件を確定 空き家かどうか、まだ建っているかを外観から確認する
2. 地番を割り出す 住居表示では登記情報を請求できない
3. 登記情報を取得 所有者事項で氏名・住所を確認する
4. 現況とあわせて判断 名義が古い可能性を前提に、返送も想定して発送する

1の工程を省くと、居住中の住宅にDMを送ってしまうことがあります。登記情報がどれだけ正確になっても、その建物が今どういう状態かは登記簿には書かれていません。

郵便受けの状態、カーテンの有無、庭木の伸び方。これらは現地で近づいて初めて分かる情報です

なお制度の詳細や個別の手続きについては、司法書士などの専門家への確認をご案内ください。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

登記情報の取得は、調査で特定した地番をもとに行います。地番の割り出しから取得、リストへの反映までを含む金額です。所有者の居住地が県外であっても対応します。

そのままDMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただけます。納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(仕入れ/施工提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。居住中の住宅にDMを送ってしまう事態を防ぐ工程です。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

制度を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 義務化されたから登記簿は正確だと考える/猶予期間があり、過去分が行き渡るには時間がかかります
  • 返送がなくなると期待する/一定の返送は当面続きます。記録して変化を追ってください
  • 所有不動産記録証明書で他人の不動産を調べようとする/本人や相続人が自分に関わる不動産を確認する制度です
  • 現地確認を省く/登記簿がどれだけ正確でも、建物の現況は書かれていません
  • 所有者に制度を断定的に説明する/個別の手続きは状況によります。専門家への確認を案内してください

よくあるご質問

義務化で登記簿の住所は正確になりますか?

精度は上がる方向ですが、時間がかかります。住所等変更登記には2028年3月末までの猶予期間があり、過去分が行き渡るにはさらに時間を要します。当面は返送が出ることを前提に計画してください。

所有者の特定方法は変わりますか?

手続き自体は変わりません。地番を特定し、登記情報から所有者事項を取得する流れは従来どおりです。変わるのは記載されている情報の精度です。

名義人が故人のままの物件はどうなりますか?

相続登記が義務化されたため、名義が現在の権利者に移る方向にあります。ただし過去分の登記が行き渡るには時間がかかるため、現時点では故人名義のケースが残っています。

登記情報の取得を代行してもらえますか?

できます。調査で特定した地番をもとに登記情報を取得し、リストに反映します。地番の割り出しから含めて1件750円(税別)です。

DMが返送された場合はどうすればよいですか?

登記簿の住所にはもう住んでいないという情報が得られたことになります。対象から外すのか別の手段を検討するのか、判断のために記録として残しておくことをおすすめします。

まとめ

2024年4月に相続登記、2026年4月に住所等変更登記が義務化されました。いずれも施行前に発生した分が対象で、過去の相続や転居も申請が必要になります。

所有者調査という観点では、良い方向の変化です。登記簿の住所が古い、名義が故人のまま。こうした問題は構造的に緩和されていきます。

ただしすぐに効果が出るわけではありません。住所等変更登記には2028年3月末までの猶予期間があり、過去分が行き渡るにはさらに時間がかかります。制度を知らない所有者も一定数います。

当面は、登記情報を取得したうえで現況とあわせて確認する手順が確実です。そして登記簿がどれだけ正確になっても、その建物が今どういう状態かは書かれていません。現地で確かめる工程は、制度が変わっても残ります。

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