相続土地国庫帰属制度は空き家に使えるか|建物があると申請できない

相続土地国庫帰属制度は空き家に使えるか|建物があると申請できない

相続した土地を国に引き渡せる制度があります。2023年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度です。

所有者から「国が引き取ってくれるらしい」という話が出ることがあります。使い道がなく、売れそうもない土地。手放せるなら手放したい。この制度は、その受け皿として設けられました

ただし空き家との関係では、決定的な条件があります。建物がある土地は申請できません。先に解体して更地にする必要があります。この記事では、制度の内容と実務上の意味を整理します。

この記事の結論

  • 建物がある土地は申請できない。空き家は先に解体が必要
  • 対象は相続・遺贈で取得した土地。購入した土地は対象外
  • 費用は審査手数料1万4,000円/筆+負担金(原則20万円)
  • 境界が不明な土地も申請できないとされている
  • 制度開始から申請5,140件・帰属2,542件(2026年2月末時点)

制度の概要

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律にもとづく制度です。所有者不明土地の発生を予防することを目的としています。

項目 内容
開始 2023年4月27日
対象 相続・遺贈により取得した土地
審査手数料 1万4,000円/筆
負担金 原則20万円(土地の種類・面積により算定方法が異なる)
申請先 土地を管轄する法務局

購入した土地は対象外です。相続または遺贈で取得したものに限られます。

実績

2026年2月末時点で、申請の累計は5,140件、国庫への帰属が認められたのは2,542件とされています。

審査には時間がかかります。申請してすぐ結果が出るものではありません。この点は所有者に伝えておく必要があります

建物があると申請できない

空き家との関係で、最も重要な条件です。土地の上に建物がある場合、この制度は使えません

申請するには、申請者が自費で建物を解体し、更地にしておく必要があります。解体費用は所有者の負担です。

つまり「空き家を国に引き取ってもらう」ことはできません。解体してから、土地だけを引き渡すという順序になります。

所有者が「国が引き取ってくれる」と期待している場合、この点を正確に伝えることが必要です

申請できない土地

建物以外にも、申請そのものができない条件があります。

条件 内容
建物がある土地 解体して更地にする必要がある
担保権等が設定されている土地 抵当権などが付いている場合
他人の利用が予定されている土地 通路、水路、ため池、墓地、境内地など
土壌汚染がある土地
境界が明らかでない土地 所有権の存否や範囲に争いがある場合を含む

境界が明らかでない土地も対象外とされています。山林や、長く放置された土地では、この条件が壁になることがあります。

境界確認には土地家屋調査士への依頼が必要で、費用も発生します。解体費用と合わせると、負担は小さくありません

審査で承認されない土地

申請はできても、審査の段階で承認されない場合があります。

条件
崖がある土地 管理に過分の費用・労力を要するもの
管理・処分を阻害する物がある 放置車両、廃棄物など
地下に除去が必要な物がある 産業廃棄物、既存建物の基礎、井戸など
争訟が必要な土地 公道に通じていない、不法占拠者がいるなど
その他、過分の費用・労力を要する土地 災害被害の防止工事が必要な場合など

既存建物の基礎が地下に残っている場合も、除去が必要とされています。解体の際に、この点まで含めて行う必要があるということです。

制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、法務局や司法書士などの専門家への確認をご案内ください

実務にどう関わるか

この制度は、空き家に関わる事業者にとって複数の意味を持ちます。

立場 関わり方
解体会社 申請の前提として解体が必要になる
不動産会社 売却との比較で所有者に選択肢を示せる
士業 申請の代理・書類作成の相談を受けうる
自治体 所有者からの相談に対する案内先のひとつ

解体の動機になりうる

解体費用を出すことへの抵抗は、所有者が動かない大きな理由のひとつです。ただしこの制度を使うなら、解体は避けられません

「解体すれば手放せる」という道筋が見えれば、判断が進むことがあります。解体だけを提案するより、その先の選択肢まで示すほうが話は動きます

なお解体には自治体の補助制度が使える場合があります。補助率は解体費の1/3〜1/2程度、上限50万〜100万円が中心ですが、制度の有無も要件も自治体によって異なります。多くは工事着手前の申請が必要です。

売却と比較して示す

不動産会社であれば、売却との比較を示せます

選択肢 費用 手元に入るもの
売却する 仲介手数料等 売却代金
国庫帰属を申請する 解体費+審査手数料+負担金 なし(負担がなくなる)

売れる土地であれば、売却のほうが所有者にとって有利です。国庫帰属は、売れない土地の最後の選択肢という位置づけになります。

この比較を正直に示すことは、信頼につながります。「うちで買い取ります」だけを言うより、選択肢を並べたうえで判断してもらう形が適切です。

建物の状態と接道まで記録できます。

解体を前提に話をする物件と、そのまま流通に乗せられる物件を分けて扱えます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

0120-107-209

受付 10:00〜20:00/年中無休

無料見積り相談はこちら

関連する制度の全体像

所有者不明土地の発生を防ぐという目的のもと、複数の制度が同時期に整備されています。

制度 時期 内容
相続土地国庫帰属制度 2023年4月27日 相続した土地を一定の要件のもとで国に引き渡せる
共有・財産管理制度の見直し 2023年4月1日 所在等不明共有者への対応など
改正空家法の施行 2023年12月13日 管理不全空家等の新設など
相続登記の義務化 2024年4月1日 3年以内の申請義務
住所等変更登記の義務化 2026年4月1日 2年以内の申請義務

所有者にとっては、対応すべきことが増えている時期です。相続した不動産をどうするか、判断を先送りしにくくなっています。

共有の場合は全員で申請する

土地が共有名義の場合、共有者全員での申請が必要とされています。1人でも反対すれば申請できません。

共有者が多い物件では、この点も壁になります。相続を経るごとに共有者が増えるという構造は、ここでも影響します。

所有者に伝えるときの注意

避けたいこと 理由
「国が引き取ってくれます」と伝える 建物があると申請できません
「無料で手放せます」と伝える 審査手数料と負担金がかかります
「必ず承認されます」と伝える 審査で承認されない場合があります
解体費用に触れない 申請の前提として発生します
「税金が6倍になる」と伝える 不正確です。勧告を受けた場合に限られます

制度としてこういう仕組みがあるという事実と、法務局や専門家への確認を案内する。この形が適切です。

「6倍」の説明は使わない

解体を勧める文脈で「放置すると固定資産税が6倍になる」という説明を見かけますが、これは不正確です

特例が外れるのは勧告を受けた場合に限られ、しかも負担調整措置により課税標準額の上限は評価額の70%。固定資産税で最大約4.2倍という計算になります

不正確な説明は、詳しい所有者には見抜かれます。正確に伝えるほうが、結果的に信頼されます

調査でできること

弊社の土地調査では、調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ確認・記録します。

できること できないこと
使われていない住宅の特定 相続によるものかの判断
建物の状態の記録 境界の位置
接道の状況の記録 担保権の有無
地番の割り出し 制度の対象になるかの判断
登記情報からの所有者事項の取得 土壌の状態

制度の対象になるかどうかは、法務局が判断します。調査で提供できるのは、接触の候補を絞るための記録までです。

ただし建物の状態が分かっていれば、解体を含む話から入るべき物件かどうかは判断できます

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物の状態を記録項目に含めることができます。屋根や外壁の劣化、破損の程度といった項目に分けることも、段階に分けて分類することも可能です。

「空き地(更地)」を同時に指定すれば、解体後の区画も把握できます。その地域で解体がどれだけ進んでいるかの手がかりになります

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(解体提案/仕入れ/相続の相談)を確認したうえで、対象範囲と調査項目、記録する状態の区分を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。接道の状況もこの工程で確認します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

制度を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 「空き家ごと引き取ってもらえる」と考える/建物がある土地は申請できません
  • 費用がかからないと考える/審査手数料1万4,000円/筆と負担金(原則20万円)がかかります
  • 申請すれば承認されると考える/審査で承認されない場合があります
  • 境界の問題を見落とす/境界が明らかでない土地は申請できないとされています
  • 売却と比較せずに勧める/売れる土地であれば、売却のほうが所有者に有利です

よくあるご質問

空き家が建ったままでも申請できますか?

できません。建物がある土地は申請の対象外とされています。申請するには、所有者が自費で解体して更地にする必要があります。

購入した土地でも使えますか?

使えません。対象は相続または遺贈により取得した土地に限られます。

費用はどれくらいかかりますか?

審査手数料が1万4,000円/筆、承認された場合の負担金が原則20万円とされています。土地の種類や面積によって負担金の算定方法が異なります。これに加えて、建物がある場合は解体費用が必要です。

共有名義でも申請できますか?

共有者全員での申請が必要とされています。1人でも反対すれば申請できません。詳細は法務局にご確認ください。

建物の状態を記録してもらえますか?

できます。外観から確認できる範囲で、劣化や破損の程度を記録します。解体を前提に話をする物件と、そのまま流通に乗せられる物件を分けて扱えるようになります。

まとめ

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き渡せる仕組みです。2023年4月27日に始まり、2026年2月末時点で申請5,140件、帰属2,542件とされています。

ただし空き家との関係では、決定的な条件があります。建物がある土地は申請できません。所有者が自費で解体し、更地にする必要があります。

費用もかかります。審査手数料1万4,000円/筆と、承認された場合の負担金が原則20万円。これに解体費用が加わります。境界が明らかでない土地も申請できないとされており、確認が必要な場合は測量の費用も発生します。

したがって「国が引き取ってくれる」という説明は不正確です。そして売れる土地であれば、売却のほうが所有者にとって有利です。国庫帰属は、売れない土地の最後の選択肢という位置づけになります。

選択肢を正直に並べたうえで、判断は所有者に委ねる。詳しくは法務局や専門家へ。この形が最も信頼されます。

関連記事

まず1地区から、現地データをお出しします。

解体の提案、不動産の仕入れ、相続手続きの相談、それぞれに合わせた調査項目をご提案します。

0120-107-209

受付 10:00〜20:00/年中無休

無料見積り相談はこちら

反響を生む配布設計をプロがご提案します

反響を生む配布設計

プロがご提案します

お気軽にご相談ください

お気軽にどうぞ 無料見積もり相談