空家等活用促進区域とは|接道規制の合理化で実務は何が変わるか

空家等活用促進区域とは|接道規制の合理化で実務は何が変わるか

空き家を活用しようとして、接道義務で止まることがあります。前面道路が幅員4メートル未満で、建替えができない。改修して使おうにも、用途を変えられない。

これは相当数の空き家が抱える問題です。神戸市では、賃貸・売却用や別荘を除く空き家の36%が幅員4メートル未満の道路にしか接していません。京都市の資料も、接道が狭いほど空き家率が高い傾向を指摘しています。

2023年12月に施行された改正空家法では、この状況に対する仕組みが設けられました。空家等活用促進区域です。区域を定めることで、接道規制や用途規制を合理化できます。この記事では、制度の内容と実務への影響を整理します。

この記事の結論

  • 市区町村が区域と指針を定めることで、接道規制と用途規制を合理化できる
  • 対象は中心市街地や地域再生拠点など、空き家が集積する区域
  • 建替えができなかった物件が、安全確保を前提に可能になる場合がある
  • 用途変更もしやすくなる。指針で定めた誘導用途が対象
  • 区域の指定には空き家の分布と状態の把握が前提になる

制度の位置づけ

2023年の改正空家法は、大きく3つの方向で構成されています。

方向 主な内容
活用の拡大 空家等活用促進区域、空家等管理活用支援法人
管理の確保 管理不全空家等の新設、指導・勧告
特定空家等の除却等 報告徴収権、緊急代執行、財産管理人の選任請求権

空家等活用促進区域は、このうち「活用の拡大」に位置づけられます。管理不全空家等が問題の発生を防ぐ制度だとすれば、こちらは使える空き家を実際に使えるようにする制度です。

なぜ必要だったか

国土交通省のガイドラインによれば、空き家を活用しようとする際に建築基準法の接道規制や用途規制が支障となるケースがありました。

接道義務を満たさない敷地で建替えを行うには、建築基準法上の特例許可を受ける必要があります。ただし許可の対象になるかどうかが事前に分かりにくいという問題がありました。

市区町村が空き家の活用を進めたいと考えても、建築基準法にそうした対応を可能にする明文の規定がなかった。この制度は、その障害を取り除くためのものです

区域内で何が変わるか

区域を定めた市区町村は、指針とあわせて次の措置を講じることができます。

措置 内容
接道規制の合理化 安全確保等を前提に、前面道路の幅員に関する規制を合理化できる
用途規制の合理化 指針に定めた誘導用途への用途変更をしやすくする
所有者への要請 市区町村長が、区域内の所有者等に指針に沿った活用を要請できる
市街化調整区域での配慮 都道府県知事との事前協議を前提に、区域に含めることができる

接道規制については、市区町村が特定行政庁と協議したうえで基準を設定します。燃えにくい構造にする、避難時の安全を確保するといった条件を満たせば、建替えが可能になる場合があります

「建築不可」だった物件が動く可能性がある

接道義務を満たさない敷地は、実務上「建替え不可」として扱われてきました。売却の際に大きく不利になり、価格にも直結します

区域内であれば、この前提が変わる可能性があります。安全確保を前提とした要件を満たせば、建替えや改築ができる。これまで動かせなかった物件が、選択肢を持つことになります

ただし区域に指定されているかどうかは自治体次第です。指定されていない地域では、従来どおりの扱いになります。

どういう区域が対象になるか

ガイドラインによれば、対象となるのは中心市街地や住宅団地など、地域の拠点的なエリアです。

想定される区域 理由
中心市街地 空き家の集積が地域の機能を損なう
地域再生拠点 拠点としての機能回復が求められる
幹線道路の沿道 沿道サービスの維持
住宅団地 居住環境の維持

市区町村が、空き家の分布や活用の状況からみて活用が必要と認める区域を指定します。空家等対策計画に定める形になります。

誘導用途を定める

あわせて、その区域で推奨したい用途を指針に定めます。これを誘導用途といいます。

店舗、事務所、地域の交流施設、宿泊施設など、区域の性格によって設定されます。この用途への変更が、規制の合理化の対象になります

なお国の行政機関や都道府県知事は、誘導用途に供するために農地法その他の法律による許可等を求められた場合、活用の促進が図られるよう適切な配慮をするものとされています。

実務にどう影響するか

立場 影響 確認すべきこと
不動産会社 接道が悪い物件の扱いが変わる可能性 対象エリアが区域に含まれるか
買取再販・改修会社 用途変更を伴う活用がしやすくなる 誘導用途に該当するか
建設・リフォーム会社 建替え・改築の相談が生じうる 特例の要件と手続き
自治体 区域指定の検討 空き家の分布と状態の把握

まず区域の指定状況を確認する

制度が創設されても、実際に区域を指定しているかどうかは自治体によって異なります

営業エリアの自治体が指定しているか、指定を検討しているか。これは所管の窓口で確認できます。指定されていれば、接道が悪い物件の扱いを見直す余地があります。

なお制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、所管する市区町村の窓口や専門家への確認をご案内ください

自治体が区域を指定するには

区域を定めるには、どこに空き家がどれだけあるかを把握している必要があります

把握すべきこと なぜ必要か
空き家の分布 集積している範囲を特定する
建物の状態 活用できる物件がどれだけあるかを見る
接道の状況 規制の合理化が効く物件がどれだけあるか
建て方の構成 戸建てか共同住宅かで用途変更の可否が変わる

とくに接道の状況は、この制度の効果を左右します。接道義務を満たさない物件が多い区域ほど、規制の合理化による効果は大きくなります。

そして接道の状況は、統計にも登記情報にも記載されません。現地で確認するしかない情報です

「活用できる空き家」を把握する

実態調査を措置のためだけに設計すると、状態の良い空き家が拾えません。区域指定の検討には、この層の把握が欠かせません。

神戸市の資料では、区によって腐朽・破損の割合が大きく異なることが示されています。長田区23.4%、北区20.0%に対し、兵庫区4.3%、西区2.9%。同じ市内でも8倍の開きがあります

兵庫区は空き家が5年間で80.3%増えましたが、傷んでいるのは4.3%だけ。こうした地区は、活用促進の対象として有望です

接道と状態を、あわせて記録できます。

区域指定の検討にも、物件の選別にも使える形で納品します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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あわせて創設された支援法人制度

2023年の改正では、空家等管理活用支援法人の制度も創設されました。空き家の管理や活用に取り組むNPO法人や社団法人等を、市区町村が支援法人として指定できる仕組みです。

区域内での活用を進めるうえで、行政と所有者の間に立つ主体として想定されています。所有者にとっては、相談先が増えることになります。

指定の要件は自治体によって異なります。関心がある場合は、所管の窓口にご確認ください。

調査でできること・できないこと

できること できないこと
空き家の分布の記録 区域に該当するかの判断
外観から見た状態の記録 建築基準法上の適合性の判定
接道の状況の記録 正確な幅員の測定
建て方の記録 用途変更の可否の判断

制度の適用可否を判断するのは行政です。調査で提供できるのは、その検討の材料になる記録までです。

接道についても、外観から確認できる範囲での記録になります。正確な幅員は測量が必要です。ただし「明らかに狭い」「車が入れない」といった状況は記録できるため、優先順位づけには使えます。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。中心市街地や住宅団地など、区域の候補となる範囲に絞って調査することもできます。

調査項目は、空き家(戸建て)のほか、空き地、古アパート、古家(居住中)、駐車場、倉庫・工場などから選べます。接道の状況や建物の状態は、記録項目としてご指定いただけます

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。区域の検討には、地図と集計の両方が有効です

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(区域の検討/物件の選別/実態把握)を確認したうえで、対象の範囲と調査項目、記録する条件を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。中心市街地や住宅団地に絞った範囲設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。接道の状況もこの工程で確認します。
地番の特定と集計
調査結果をもとに地番を割り出し、地区別・状態別に集計します。
納品
地図・リスト・集計表の形で納品します。所有者情報の取得や通知の発送までご依頼いただくこともできます。

制度を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 全国どこでも規制が緩和されると考える/区域を指定した市区町村内に限られます
  • 「建替えできます」と断定する/要件を満たす必要があり、判断は特定行政庁が行います
  • 用途変更が自由になると考える/指針に定めた誘導用途が対象です
  • 接道の幅を外観で確定する/正確な幅員は測量が必要です
  • 傷んだ物件だけを調べる/活用促進の検討には、状態の良い空き家の把握が必要です

よくあるご質問

自分の営業エリアが区域に指定されているか、どこで分かりますか?

所管する市区町村の窓口でご確認ください。空家等対策計画に定められるため、計画の内容とあわせて確認できます。指定していない自治体も多くあります。

区域内なら必ず建替えできますか?

できるとは限りません。安全確保等の要件を満たす必要があり、判断は特定行政庁が行います。市区町村が特定行政庁と協議して基準を設定する仕組みのため、内容は自治体によって異なります。

接道の状況も記録してもらえますか?

ご相談ください。外観から確認できる範囲で、前面道路の状況を記録項目に組み込めます。正確な幅員は測量が必要ですが、優先順位づけの材料としてご活用いただけます。

区域の検討に使えるデータを作れますか?

空き家の分布、建物の状態、接道の状況、建て方の構成を記録し、地区別に集計した形で納品できます。区域に該当するかの判断は行政が行うものですが、その検討材料としてご活用いただけます。

状態の良い空き家だけを抽出できますか?

できます。建物の状態を記録項目に含めていただければ、劣化の程度で分類したリストを納品します。活用の候補と、除却の対象を分けて扱えるようになります。

まとめ

接道義務を満たさない空き家は、実務上「建替え不可」として扱われてきました。神戸市では放置型の36%が幅員4メートル未満の道路にしか接していません

2023年12月施行の改正空家法で創設された空家等活用促進区域は、この状況に対する仕組みです。市区町村が区域と指針を定めれば、安全確保を前提に接道規制を合理化でき、指針に定めた誘導用途への変更もしやすくなります

ただし区域を指定しているかどうかは自治体次第です。指定されていない地域では従来どおりの扱いになります。営業エリアの自治体がどうなっているか、まず確認してみてください。

そして区域を指定するには、空き家の分布・状態・接道の状況を把握している必要があります。とくに接道は統計にも登記にも出てこず、現地で確認するしかない情報です。傷んだ物件だけでなく、活用できる状態の空き家も把握しておく必要があります。

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