その他の住宅とは何か|空き家統計で最も重要な区分の意味と使い方

その他の住宅とは何か|空き家統計で最も重要な区分の意味と使い方

空き家に関する記事や資料を読んでいると、「その他の住宅」という言葉が出てきます。統計の区分名なので説明なく使われることが多く、読み流している方も多いかもしれません。

しかしこの区分は、実務でいちばん重要な数字です。全国の空き家900万1,600戸のうち、「その他の住宅」は385万6,000戸。残りの514万戸あまりは、募集中の賃貸物件や売り出し中の物件、別荘です。

つまり空き家の数字を見るとき、「その他の住宅」がいくつあるかを確認しなければ、対象の量は分かりません。この記事では、この区分が何を指すのかを整理し、実務でどう使うかを説明します。

この記事の結論

  • 空き家は4つに分類される。「その他の住宅」が営業対象になりうる区分
  • 全国900万1,600戸のうち、その他の住宅は385万6,000戸(42.8%)
  • 残りは募集中の賃貸・売り出し中・別荘。調査で拾っても対象にならない
  • 一戸建ての空き家は約8割、共同住宅の空き家は約2割が「その他の住宅」
  • 県の資料では「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」と書かれることもある

空き家は4つに分類される

住宅・土地統計調査では、空き家を次の4つに分けています。

区分 内容 全国の戸数
賃貸用の空き家 新築・中古を問わず、賃貸のために空いている住宅 443万5,800戸
売却用の空き家 新築・中古を問わず、売却のために空いている住宅 32万6,300戸
二次的住宅 別荘、ふだん住んでいる住宅とは別に泊まる住宅 38万3,500戸
その他の住宅 上記以外。転勤・入院などで長期不在、取り壊し予定など 385万6,000戸

合計すると900万1,600戸になります。4つのうち3つは、市場に出ているか、管理されているかのどちらかです。

「その他の住宅」だけが放置されている

賃貸用と売却用は、市場に出ています。不動産会社が仲介しており、募集情報も公開されています。二次的住宅は別荘なので、所有者が意図して保有し、管理もされています。

残る「その他の住宅」だけが、市場にも出ておらず、意図的に保有されているわけでもない住宅です。転勤や入院で長期間留守にしている、相続したまま手をつけていない、取り壊す予定で放置している。こうした状態が該当します。

この記事のシリーズでは、この区分を分かりやすく「放置型」と呼ぶことがあります。統計上の正式な区分名は「その他の住宅」です。

資料によって呼び方が違う

都道府県や市区町村の公表資料を読むと、同じものが違う名前で書かれていることがあります。

  • その他の住宅/総務省統計局の区分名。最も正式な呼び方
  • 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家/内容をそのまま説明した表記。県の資料に多い
  • その他空き家/短縮した表記

いずれも同じものを指しています。資料を横断して数字を比べるときは、この点を確認してください。

なぜこの区分が実務で重要なのか

空き家率が高い地域を選んで調査しても、その中身が賃貸用ばかりでは対象になりません。

調査で拾ったもの 実務での扱い
賃貸用の空き家 募集中。管理会社がついている。対象外
売却用の空き家 すでに市場に出ている。競合がいる
二次的住宅(別荘) 管理されている。所有者に手放す意思がない
その他の住宅 市場に出ていない。接触する価値がある

「空き家が何戸ある」という数字だけでは、対象の量は分かりません。内訳を確認して初めて判断できます。

建て方によって割合がまったく違う

一戸建てと共同住宅では、空き家の中身が正反対になります。

建て方 その他の住宅の割合 賃貸用の割合
一戸建て 約8割 少ない
共同住宅 約2割 約8割

共同住宅の空き家は、その大半が募集中の賃貸物件です。調査で共同住宅を範囲に含めると、対象にならない物件を大量に拾うことになります

逆に一戸建てに限定すれば、拾ったもののおよそ8割が「その他の住宅」になります。条件の指定だけで、リストの中身は大きく変わります

県ごとの差は大きい

空き家に占める「その他の住宅」の割合は、全国平均で42.8%です。ただし県によってかなり違います。

空き家に占めるその他の住宅 特徴
愛媛県 61.9% 拾ったもののほとんどが対象になる
徳島県 57.3% 空き家率も全国1位
全国平均 42.8%
宮城県 37.0% 賃貸市場が大きく、絞り込みが必要
大阪府 32.3% 共同住宅が空き家の73.0%を占める

大阪府では、空き家を条件なしで調査すると3分の2以上が対象外になります。一方、愛媛県であれば6割以上が対象です。同じ「空き家調査」でも、地域によって歩留まりはまったく違います。

目的によって、見るべき数字が変わる

立場 主な目的 見るべき数字
不動産会社 売却・買取につながる物件の発掘 その他の住宅の実数と、一戸建ての比率
リフォーム・外壁塗装会社 施工の提案先を探す 空き家ではなく、持ち家住宅率と築年数
自治体 実態把握、管理不全空家等の把握 その他の住宅の分布と、腐朽・破損の状況

リフォームや外壁塗装が目的の場合、そもそも空き家は対象ではありません。提案先は人が住んでいる築古の住宅です。この場合、「その他の住宅」の数字はエリア選定の根拠になりません。

率ではなく実数で見る

もうひとつ注意したいのが、率と実数の違いです。

たとえば埼玉県は空き家率9.3%で全国最低ですが、その他の住宅は13万5,800戸あり、実数では全国8位です。母数が大きい都府県では、率が低くても量は残ります

逆に、率が高くても総住宅数が少なければ実数は限られます。調査エリアを検討するときは、率と実数の両方を見てください

対象になる物件だけを、地図に落とせます。

戸建てに限定、別荘地を除外など、条件を指定して調査できます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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統計と現地調査の役割は違う

「その他の住宅」の戸数は統計で分かります。ただし公表される粒度は市区町村単位です。

知りたいこと 統計で分かるか
A市にその他の住宅が何戸あるか 分かる
市内のどの地区に集まっているか 分からない
どの建物がそれに該当するか 分からない
建物がどの程度傷んでいるか 分からない

加えて、住宅・土地統計調査は5年に1度です。直近の調査の基準日は2023年10月1日で、それ以降の変化は反映されていません。

統計はエリアの優先順位づけに使い、個別の物件は現地で確定する。この分担が現実的です。前半をしっかり絞り込むほど、調査費用は下がります。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査項目を戸建てに限定する、別荘地を範囲から外すといった条件指定に対応しています。統計上の「その他の住宅」に近い対象を、現地で確定した形でリスト化できます

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(仕入れ/施工提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。WEB上のデータでは把握できない現況を押さえる工程です。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

統計を読むときの注意点

よくあるつまずき

  • 空き家の総数だけで判断する/内訳を見なければ対象の量は分かりません
  • 「その他の住宅」と別の表記を別物だと思う/「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」も同じ区分です
  • 率だけで比較する/母数が大きい都府県では、率が低くても実数は多くなります
  • 共同住宅を含めて調査する/共同住宅の空き家は約8割が賃貸用です
  • 統計の数字を現況として扱う/調査は5年に1度で、基準日以降の変化は反映されていません

よくあるご質問

「その他の住宅」と「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は違うものですか?

同じものです。総務省統計局の区分名が「その他の住宅」で、内容を説明した表記が「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」です。県の公表資料では後者が使われることが多くなっています。

統計だけで調査エリアを決められますか?

市区町村単位までであれば、統計で優先順位をつけられます。ただしどの建物が該当するか、市内のどこに集まっているかは分かりません。個別の物件を特定するには現地での確認が必要です。

共同住宅を除いて調査できますか?

できます。共同住宅の空き家は約8割が募集中の賃貸物件です。仕入れが目的であれば、戸建てに限定したほうが歩留まりが上がります。

別荘を除いて調査することはできますか?

可能です。調査範囲の設定段階で別荘地を外す、あるいは調査項目を戸建ての空き家に限定するといった形で調整します。二次的住宅の多い地域では特におすすめしています。

次回の住宅・土地統計調査はいつですか?

5年ごとに実施されており、直近は2023年10月1日を基準日として行われました。次回の実施時期については、総務省統計局の公表情報をご確認ください。

まとめ

空き家は4つに分類されます。賃貸用、売却用、二次的住宅、そしてその他の住宅。このうち前の3つは、市場に出ているか管理されているかのどちらかです。

営業対象になりうるのは「その他の住宅」だけです。全国900万1,600戸のうち385万6,000戸、42.8%にあたります。空き家の総数だけを見ていると、対象の量を実際の2倍以上に見積もることになります

そして建て方によって割合が正反対です。一戸建ての空き家は約8割がこの区分、共同住宅は約8割が賃貸用。調査の条件を戸建てに限定するだけで、リストの中身は変わります

統計で分かるのは市区町村単位までです。どの建物が該当するかは、現地を歩いて確かめるしかありません。統計で絞り、現地で確定する。この順番が最も費用対効果に優れます。

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