共同住宅の割合は地域で正反対|戸建て戦略が成立する県としない県

共同住宅の割合は地域で正反対|戸建て戦略が成立する県としない県

空き家調査を発注するとき、多くの場合「戸建てに限定してください」とお伝えしています。共同住宅の空き家は約8割が募集中の賃貸物件で、仕入れの対象にならないためです。

ただしこの指定が効く度合いは、地域によってまったく違います。東京都では住宅の71.6%が共同住宅。一方、秋田県では79.4%が一戸建です。

同じ「戸建てに限定」という条件でも、残る母数が地域によって正反対になります。この記事では、建て方の分布と、それが調査設計にどう影響するかを整理します。

この記事の結論

  • 住宅に占める共同住宅の割合は44.9%で過去最高。30年で約1.8倍に増えた
  • 共同住宅の割合は東京71.6%、一戸建の割合は秋田79.4%と正反対
  • 共同住宅の空き家は約8割が賃貸用。仕入れの対象になりにくい
  • 長屋建は7.6%減。減り続けている建て方
  • 同じ「戸建てに限定」でも、残る母数が地域で大きく変わる

全国の建て方の内訳

居住世帯のある住宅を建て方別に見ると、次のようになります。

建て方 戸数 前回からの増減
一戸建 2,931万9,000戸 +2.0%
共同住宅 2,496万8,000戸 +6.9%
長屋建 126万5,000戸 ▲7.6%

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」。

共同住宅は1993年から2023年までの30年間で約1.8倍に増えました。住宅全体に占める割合は44.9%で過去最高です。

一方、長屋建は7.6%減。増えている建て方と減っている建て方が、はっきり分かれています

地域差は正反対の水準

都道府県別に見ると、構造がまったく違います。

共同住宅の割合が高い県 割合
東京都 71.6%
沖縄県 60.9%
大阪府 57.4%
一戸建の割合が高い県 割合
秋田県 79.4%
山形県 76.1%
青森県 75.3%

東京都では7割が共同住宅、秋田県では8割が一戸建。同じ国のなかで、住宅の構成が正反対になっています。

同じ条件でも、残る母数が違う

「戸建てに限定してください」という指定は、どの地域でも有効です。ただしその結果として残る件数が、地域によって大きく変わります

  • 一戸建が中心の県/限定してもほとんど減らない。条件指定の意味は小さい
  • 共同住宅が中心の都市部/限定すると母数が大きく減る。範囲を広げる必要がある

東京都版の記事でも書きましたが、共同住宅が7割を占める地域では戸建てを前提とした戦略そのものが成立しにくくなります。範囲を広げるか、対象を古アパートに変えるかの判断が必要です。

共同住宅の空き家は約8割が賃貸用

総務省の資料は、共同住宅の空き家の約8割が賃貸用の空き家だとしています。

賃貸用の空き家とは、新築・中古を問わず賃貸のために空き家になっている住宅です。募集中の部屋も、入居前の新築も含まれます

目的 共同住宅の空き家は対象になるか
戸建ての仕入れ・買取 ならない。範囲から外す
一棟買取・建替えの提案 なる。ただし棟単位で見る
賃貸管理の受託 なる。自主管理の棟を探す
大規模修繕の提案 なる。外壁・外階段の状態を見る
リフォーム(個人向け) ならない。判断の主体が管理組合等になる

「共同住宅は対象外」と一律に決めるのは早計です。目的によっては、共同住宅こそが対象になります。

統計の単位に注意する

ただし共同住宅を対象にする場合、統計の単位が実務と合いません

統計は空き家を戸(室)単位で数えます。1棟のアパートに空室が3つあれば3戸です。一方、一棟買取や管理受託の提案相手は建物のオーナーで、話は棟単位で進みます。

統計をどれだけ読み込んでも、棟単位のリストにはなりません。この情報は現地を歩いて記録するしかありません。

長屋建は減り続けている

3つの建て方のうち、長屋建だけが減少しています。前回から7.6%減、126万5,000戸です。

大阪市では特に顕著で、5年間で1万4,600戸(31.9%)減って3万1,200戸になりました。残っているのは生野区6.5%、西成区5.8%と特定の区に集中しています。

残った長屋建は傷んでいる

京都市の資料では、放置型の空き家について建て方別の腐朽・破損率が示されています。

建て方 腐朽・破損あり
一戸建 28%
長屋建 52%
共同住宅 11%

長屋建は半数以上に腐朽・破損があります。数が減り続けているうえ、残っているものは状態が悪い。解体や建替えの対象として扱われることが多い建て方です。

調査設計にどう反映するか

建て方の分布を踏まえると、地域によって設計が変わります。

地域の性格 戸建てを探す場合 共同住宅を探す場合
一戸建が中心(東北など) 条件指定の効果は小さい。範囲を絞るほうが効く 母数が限られる。範囲を広げる
共同住宅が中心(都市部) 限定すると母数が減る。範囲を広げるか区を選ぶ 条件指定の効果が大きい

政令市では区で判断する

都市部では、市単位でも粗すぎます。大阪市の例では、一戸建の割合が生野区45.0%から浪速区3.7%まで12倍以上の差があります。

浪速区96.1%、中央区95.3%、西区95.1%、北区94.3%では共同住宅が9割を超えており、戸建ての調査はほぼ成立しません

逆に生野区・東住吉区・旭区・大正区であれば、戸建てを条件にしても十分な母数があります。区、できれば町丁目まで下げて指定してください

建て方を指定して調査できます。

戸建てに限定するか、古アパートを対象にするか。目的に合わせてご提案します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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目的によって、選ぶ建て方が変わる

立場 主な対象 調査で指定するとよい条件
不動産会社(仕入れ) 一戸建 戸建てに限定し、共同住宅を範囲から外す
不動産会社(一棟) 共同住宅 「古アパート」を指定し、棟単位で記録
賃貸管理会社 共同住宅 「古アパート」+管理表示の記録
リフォーム・外壁塗装会社 一戸建(居住中) 「古家(居住中)」を指定
解体・建設会社 一戸建、長屋建 状態の記録を依頼する
自治体 すべて 建て方も記録項目に含める

自治体は建て方を記録しておく

実態調査では、建て方を記録項目に含めておくと集計の幅が広がります。建て方によって腐朽・破損の割合が大きく違うためです

京都市の例のように、長屋建52%・一戸建28%・共同住宅11%という差があれば、建て方別の集計そのものが対策の優先順位を示します

調査でできること

弊社の土地調査では、調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ確認・記録します。

できること できないこと
建て方の判別(一戸建/長屋建/共同住宅) 建物内部の状態
外観から見た状態の記録 正確な築年数の特定
共同住宅の棟単位での記録 正確な入居率
接道の状況の記録 正確な幅員の測定

建て方は外観から判別できます。統計では市区町村単位の集計までですが、現地調査であれば個別の建物ごとに記録できます。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。共同住宅が中心の地域で戸建てを探す場合、範囲を広げるぶん費用も増える点は考慮してください。

調査項目は、空き家(戸建て)のほか、空き地、古アパート、古家(居住中)、駐車場、倉庫・工場などから選べます。戸建てと古アパートを同時に指定すれば、両方を色分けした地図で納品します。追加は1項目につき200円(税別)です。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の建て方、市区町村・町丁目、調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ建て方と状態を確認・記録します。共同住宅は棟単位で記録します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

建て方を条件にするときの注意点

よくあるつまずき

  • どの地域でも同じ条件で発注する/共同住宅の割合は東京71.6%、秋田は一戸建79.4%と正反対です
  • 「共同住宅は対象外」と一律に決める/一棟買取・管理受託・大規模修繕では対象になります
  • 統計の戸数を棟数と考える/統計は室単位です。提案の単位は棟なので意味が違います
  • 都市部で市単位の発注をする/大阪市では一戸建の割合が区で12倍以上違います
  • 長屋建を一戸建と同じに扱う/腐朽・破損の割合が大きく異なります

よくあるご質問

戸建てだけに限定できますか?

できます。調査項目を戸建てに限定していただければ、共同住宅を拾う量を大きく減らせます。ただし共同住宅が中心の地域では母数が減るため、範囲の設定とあわせてご相談ください。

共同住宅も対象にできますか?

できます。「古アパート」を調査項目として指定いただければ、築年数の経過した共同住宅を棟単位で調査・報告します。一棟買取や管理受託、大規模修繕の提案先を探す場合はこちらになります。

長屋建も調査対象にできますか?

ご相談ください。長屋建は全国で7.6%減と減少していますが、地域によっては一定数が残っています。対象範囲と条件を伺ったうえでご提案します。

建て方は外観から分かりますか?

判別できます。一戸建、長屋建、共同住宅の区別は外観から確認できるため、記録項目に含めることが可能です。

戸建てと古アパートを同時に調べられますか?

できます。調査項目として両方を指定していただければ、同じ範囲を1回歩いて両方を記録し、地図上で色分けして納品します。追加は1項目につき200円(税別)です。

まとめ

住宅に占める共同住宅の割合は44.9%で過去最高。30年で約1.8倍に増えました。一方、長屋建は7.6%減と減り続けています。

そして地域差が大きい。共同住宅は東京都71.6%、一戸建は秋田県79.4%。同じ国のなかで、住宅の構成が正反対になっています。

「戸建てに限定してください」という指定は、どの地域でも有効です。ただし残る母数が地域によって大きく変わります。一戸建が中心の県では条件指定の意味は小さく、共同住宅が中心の都市部では母数が大きく減ります。

そして「共同住宅は対象外」と一律に決めるのも早計です。一棟買取、管理受託、大規模修繕。目的によっては共同住宅こそが対象になります。その場合、統計の室単位ではなく棟単位の情報が必要になり、これは現地でしか取れません。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げてください。

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