住宅・土地統計調査の読み方|標本調査であることの意味と使い方

空き家の話をするとき、必ず出てくるのが住宅・土地統計調査です。全国の空き家が900万戸を超えた、空き家率が13.8%になった。こうした数字は、すべてこの調査によるものです。
ただし、この調査には知っておくべき性質があります。全数調査ではなく、標本調査だということです。国内すべての住宅を数えたわけではなく、抽出された約340万の住戸・世帯を調べて全体を推計しています。
つまり公表されている数字は、すべて推計値です。この記事では、調査の仕組みと、実務で使うときに押さえておくべき点を整理します。
この記事の結論
- 住宅・土地統計調査は標本調査。約340万の住戸・世帯を抽出して全体を推計している
- 公表される数字はすべて推計値。実数を数えたものではない
- 結果が表章されるのは市区と人口1万5千人以上の町村まで
- 5年ごとの調査で、基準日以降の変化は反映されない
- 速報と確報で数字が変わる。引用するなら確報を使う
記事の目次
どういう調査なのか
総務省統計法により「基幹統計調査」と位置づけられている調査です。1948年から5年ごとに実施され、令和5年調査で16回目にあたります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施周期 | 5年ごと |
| 直近の基準日 | 2023年(令和5年)10月1日午前零時 |
| 調査対象 | 抽出された約340万の住戸・世帯 |
| 調査票 | 建物に関する調査票(約20万枚)と世帯に配布する調査票(約340万枚) |
| 結果の表章 | 市区および人口1万5千人以上の町村 |
調査結果は、住生活基本法に基づく住生活基本計画や土地利用計画などの基礎資料として使われます。行政の計画づくりのための調査であって、個々の建物を特定するための調査ではありません。
標本調査であることの意味
ここが最も重要な点です。全国に住宅は6,500万戸以上ありますが、調査したのは約340万の住戸・世帯です。そこから全体を推計しています。
数字はすべて推計値
「A市の空き家は1万2,300戸」と公表されていても、実際に1万2,300戸を数えたわけではありません。抽出調査の結果から推計した値です。
実務上の意味は明確です。統計の数字は傾向をつかむためのものであって、実数の保証ではありません。「この市に1万2,300戸あるから、そのうち何%にアプローチすれば」という計算は、前提が崩れています。
規模が小さいほど誤差は大きくなる
標本調査では、対象の規模が小さいほど誤差の影響を受けやすくなります。全国や都道府県の数字は比較的安定しますが、小さな市区町村の数字はぶれやすいということです。
実際、都道府県の資料では非公表となる項目があります。たとえば人口の少ない町村について「推計値の精度が確保できない」として数値を公表しない例があります。統計を作る側も、小さな単位の数字には慎重だということです。
人口1万5千人未満の町村は表章されない
結果が公表されるのは、市区および人口1万5千人以上の町村です。それ未満の町村については、市区町村別の結果が出てきません。
県によっては、複数の町村がまるごと表章の対象外になります。県内の市町村を比較する際、そもそもデータがない自治体があることを前提に読む必要があります。
統計は「どこを調べるか」を決めるための道具
標本調査であることは、統計が使えないという意味ではありません。役割を間違えなければ十分に有効です。
- 向いている使い方/県や市の傾向をつかむ、エリアの優先順位をつける、他の地域と比較する
- 向いていない使い方/件数の見積り、個別の物件の特定、小さな自治体の精密な比較
統計でエリアを絞り、現地で実数を確かめる。この順序であれば、それぞれの強みが活きます。
速報と確報で数字が変わる
令和5年調査では、2024年4月30日に速報集計(住宅数概数集計)が公表され、その後に確報集計が出ています。
| 集計 | 内容 | 公表時期 |
|---|---|---|
| 住宅数概数集計(速報) | 全国・都道府県の総住宅数、空き家数など | 2024年4月30日 |
| 住宅及び世帯に関する基本集計(確報) | 市区町村別を含む基本的な項目 | 2024年9月25日 |
| 住宅の構造等に関する集計(確報) | 建築時期、改修、省エネ設備など | 2025年1月29日 |
| 土地集計(確報) | 世帯の土地所有状況など | 2025年3月26日 |
| 共同住宅の空き家の分析 | 共同住宅の空き家に関する推計 | 2025年5月30日 |
総務省の資料によれば、全国では確報集計のほうが総住宅数で2万6千戸、空き家数で6千戸多くなりました。全国の空き家率13.8%は変わりませんでしたが、数字そのものは動いています。
なぜ差が出るのか
速報集計は、主に調査員が外観等から把握した建物に関する調査票(約20万枚)を基に集計したものです。確報集計では、これに世帯へ配布した調査票(約340万枚)を加えて集計します。
記事や資料で引用するなら、確報を使ってください。速報の数字がそのまま流通していることがあるため、出典と公表時期の確認が必要です。
4つの集計は内容が違う
「住宅・土地統計調査によると」と書かれていても、どの集計を指しているかで内容が変わります。
| 集計 | 分かること | 実務での使いどころ |
|---|---|---|
| 基本集計 | 総住宅数、空き家数、空き家の種類、建て方、持ち家率など | エリアの優先順位づけ |
| 構造等に関する集計 | 建築時期、改修工事、耐震、省エネ設備、腐朽・破損 | 施工提案先の傾向をつかむ |
| 土地集計 | 世帯の土地所有状況、所有地の所在、利用現況 | 空き地調査の判断材料 |
たとえば「改修工事を行った持ち家の割合」は構造等に関する集計、「敷地以外に土地を持つ世帯の割合」は土地集計にあります。基本集計だけを見ていると、これらの数字にはたどり着きません。
目的によって、見るべき集計が変わる
| 立場 | 主に見る集計 | 押さえたい指標 |
|---|---|---|
| 不動産会社 | 基本集計 | 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家の実数と割合 |
| リフォーム・外壁塗装会社 | 構造等に関する集計 | 建築時期別の住宅数、改修工事の実施率 |
| 自治体 | 基本集計+構造等 | 空き家の種類別内訳、腐朽・破損の有無 |
| 用地を探す場合 | 土地集計 | 敷地以外の土地所有率、所有地の所在、利用現況 |
県の公表資料も確認する
総務省が公表するのは全国共通の集計ですが、都道府県や市区町村が独自に資料をまとめている場合があります。県内の市町村別ランキングや、地域区分ごとの集計が載っていることも少なくありません。
市区町村単位の細かい数字が必要なら、まず自治体の統計担当部署の公表資料を確認するほうが早い場合があります。
統計で絞った範囲を、現地で確かめます。
推計値ではなく、実際に歩いて確認した件数と状態をお出しします。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。
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受付 10:00〜20:00/年中無休
統計で分からないこと
標本調査であることに加えて、そもそも調査の設計上わからないことがあります。
| 分からないこと | 理由 |
|---|---|
| 個別の建物がどこにあるか | 市区町村単位の集計までしか公表されない |
| 基準日以降の変化 | 5年ごとの調査。取り壊しや売却は反映されない |
| 接道の状況 | 調査項目に含まれない |
| 倉庫・工場などの遊休化 | 住宅を対象とした調査のため対象外 |
| 空き地の所在 | 世帯の所有状況は分かるが、地図上の位置は分からない |
とくに基準日以降の変化は、時間が経つほど影響が大きくなります。令和5年調査の基準日は2023年10月1日です。総住宅数が減少している地域では取り壊しが進んでおり、統計の数字と現況にはずれが生じます。
費用・期間・納品物
弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。
| 項目 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金 | 10,000㎡あたり 1,000円 |
| 追加調査(1項目) | 200円 |
| 登記情報取得(所有者事項) | 750円/件 |
| DM印刷・封入・発送代行 | 180円/通 |
面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。統計でエリアを絞り込んでおけば、そのぶん費用は抑えられます。
調査項目は、空き家(戸建て)のほか、空き地、古アパート、古家(居住中)、駐車場、倉庫・工場などから選べます。統計の対象外である倉庫・工場や、所在の分からない空き地も、現地調査であれば地図に落とせます。
納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。
弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。
依頼から納品までの流れ
何のためのリストか(仕入れ/施工提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。推計ではなく実際に確認した件数を報告します。
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。
統計を使うときの注意点
よくあるつまずき
- 公表値を実数として扱う/標本調査による推計値です。件数の見積りには使えません
- 速報と確報を区別しない/数字が異なります。引用するなら確報を使ってください
- 小さな自治体の数字を精密に比較する/規模が小さいほど誤差の影響を受けます
- すべての町村のデータがあると考える/人口1万5千人未満の町村は結果が表章されません
- 基準日以降の変化を織り込まない/2023年10月1日時点の調査です。現況とはずれます
よくあるご質問
統計の数字と実際の件数はどれくらい違いますか?
一律にお示しすることはできません。標本調査による推計値であること、基準日から時間が経過していることの2つの要因があるためです。実数が必要な場合は現地調査で確認する形になります。
次回の調査はいつですか?
5年ごとに実施されており、直近は2023年10月1日が基準日でした。次回の実施時期については総務省統計局の公表をご確認ください。
市区町村より細かい数字はありますか?
総務省が公表するのは市区および人口1万5千人以上の町村までです。町丁目単位の数字は公表されていません。ただし自治体が独自に地域区分ごとの集計を公表している場合があります。
統計でエリアを絞ってから依頼したほうが安くなりますか?
そのとおりです。費用は面積に対する従量制のため、範囲が狭いほど費用は下がります。ただし絞り込み方のご相談も承っていますので、目的をお伺いしたうえで一緒に範囲を決めることもできます。
統計に載っていない対象も調査できますか?
できます。倉庫・工場は住宅を対象とした調査の対象外ですが、現地調査であれば記録できます。空き地についても、統計では所在が分からないため現地調査が必要です。
まとめ
住宅・土地統計調査は、抽出された約340万の住戸・世帯を調べて全体を推計する標本調査です。公表されている数字はすべて推計値であり、実際に数えた件数ではありません。
結果が表章されるのは市区と人口1万5千人以上の町村まで。規模が小さいほど誤差の影響を受け、速報と確報でも数字が動きます。そして基準日は2023年10月1日で、それ以降の変化は反映されていません。
ただしこれは、統計が使えないという意味ではありません。県や市の傾向をつかむ、エリアの優先順位をつける、他の地域と比較する。こうした用途には十分に有効です。
向いていないのは、件数の見積りと個別の物件の特定です。統計でエリアを絞り、現地で実数と状態を確かめる。この順序であれば、それぞれの強みが活きます。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げてください。
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まず1地区から、現地データをお出しします。
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