空き家の所有者からよく聞かれること|正確に答えるための整理

空き家の所有者からよく聞かれること|正確に答えるための整理

所有者に接触すると、いくつか決まった質問が返ってきます。税金のこと、解体のこと、制度のこと

ここで不正確に答えると、後で問題になります。詳しい所有者には見抜かれますし、事実と違えば信用を失います

そして断定できない領域が多くあります。制度の適用可否を判断するのは行政や専門家であって、営業する側ではありません。この記事では、よく聞かれる6つの質問について、答え方を整理します。

この記事の結論

  • 「税金が6倍」は不正確。勧告を受けた場合に限られ、最大約4.2倍
  • 「国が引き取る」制度は建物があると申請できない
  • 登記の義務化には過料の定めがあるが催告を経る運用とされている
  • 貸せるかどうかは地域の家賃水準で決まる
  • 断定を避け、窓口や専門家への確認を案内する

①「放置すると税金が6倍になるのか」

最もよく聞かれ、最も誤解されている質問です

正確にはこうなる

住宅が建つ土地には、固定資産税の課税標準を軽減する住宅用地特例があります。

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地(1戸あたり200㎡以下) 評価額の1/6 評価額の1/3
一般住宅用地(200㎡超) 評価額の1/3 評価額の2/3

この特例が外れるのは、市区町村から勧告を受けたときです。空き家であるだけでは外れません。

そして外れた土地は「商業地等」として扱われますが、負担調整措置により課税標準額の上限は評価額の70%とされています。100%ではありません。

小規模住宅用地との比較では、固定資産税で最大約4.2倍、都市計画税で最大約2.1倍という計算になります。

伝えるべきは「段階がある」こと

措置には段階があります。助言・指導の段階では、特例は継続します

段階 税への影響
助言・指導 住宅用地特例は継続
勧告 特例の対象から除外される

つまり指導を受けた段階で管理を改善すれば、税への影響は避けられます。所有者にとって、これは分かりやすい判断材料になります。

「放置すると税が上がる」ではなく、「指導の段階で対応すれば影響はない」と伝えるほうが正確であり、相手にとっても有益です。

該当するかどうかは断定しない

管理不全空家等や特定空家等に該当するかどうかを判断するのは市区町村です。営業する側が「勧告されます」と予告できる立場にはありません。

制度としてこういう仕組みがあるという事実を伝え、詳しくは市区町村の窓口へと案内してください

②「解体したほうがよいのか」

これは物件によって答えが変わります。一律には答えられません

建物の状態 現実的な選択肢
そのまま使える 売却、賃貸、空き家バンクへの登録
改修すれば使える 改修して流通させる、用途を変えて活用
使うのが難しい 解体して土地として扱う

解体すると税はどうなるか

あわせて聞かれる質問です。更地にすると住宅用地特例は外れます。ただし建物分の固定資産税はなくなります。

全体でどうなるかは、土地と建物の評価額によって変わります。「解体すると税が上がる」とも「下がる」とも断定できません。

補助制度は着手前申請が原則

多くの自治体が解体費用の補助制度を設けています。補助率は解体費の1/3〜1/2程度、上限は50万〜100万円が中心です。

ただしほとんどの制度で工事着手前の申請が必要です。解体してから申請しても対象外になります。

制度の有無も要件も自治体によって違います。「補助金が使えます」と断定せず、市区町村の窓口での確認を案内してください。

③「国が引き取ってくれると聞いた」

2023年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度のことです。ただし誤解されている点があります。

誤解 実際
空き家ごと引き取ってもらえる 建物がある土地は申請できない
無料で手放せる 審査手数料と負担金がかかる
申請すれば承認される 審査で承認されない場合がある

建物がある土地は申請の対象外です。所有者が自費で解体し、更地にする必要があります。

費用も発生します。審査手数料が1万4,000円/筆、承認された場合の負担金が原則20万円とされています。境界が明らかでない土地も申請できないとされており、確認が必要な場合は測量の費用も加わります。

売れる土地なら売却のほうが有利

選択肢 費用 手元に入るもの
売却する 仲介手数料等 売却代金
国庫帰属を申請する 解体費+審査手数料+負担金 なし

国庫帰属は、売れない土地の最後の選択肢という位置づけです。この比較を正直に示すことが、信頼につながります。

④「登記しないとどうなるのか」

2024年4月から相続登記が、2026年4月から住所等変更登記が義務化されました。

制度 期限 過料
相続登記 取得を知った日から3年以内 10万円以下
住所等変更登記 変更日から2年以内 5万円以下

どちらも施行前の相続・転居が対象です。相続登記は原則2027年3月31日まで、住所等変更登記は2028年3月31日までとされています。

「罰金」とは伝えない

過料の定めはありますが、登記官の催告を経る運用とされています。正当な理由があると認められる場合の取扱いも定められています。

「登記しないと罰金です」という説明は不正確です。制度として期限が定められたという事実を伝え、詳しくは法務局や司法書士への確認を案内してください。

なお相続登記がすぐにできない場合の暫定的な対応として、相続人申告登記という仕組みも設けられています。

建物の状態を記録したリストをお出しします。

そのまま使える物件と、解体前提の物件を分けて扱えます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

0120-107-209

受付 10:00〜20:00/年中無休

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⑤「貸すことはできるか」

売却に抵抗がある所有者から出る質問です。賃貸なら所有権が残ります

実際、直近1年間で空き家でなくなった理由を見ると、「貸した」が15.5%で2位です。1位の除却22.7%に次ぐ規模で、所有者や親族が居住した15.5%と並びます。

成否は家賃水準で決まる

家賃水準 影響
和歌山県 1畳当たり2,152円で全国44位 改修費を回収しにくい
奈良県 1か月5万1,996円で全国9位 賃貸市場が吸収しやすい

改修に数百万円かかっても、家賃が低ければ回収に何年もかかります。同じ近畿でも構造が正反対です。

地域の家賃水準を確認したうえで、成立する見込みがあるかを正直に伝えてください

⑥「誰に相談すればよいか」

自社で扱えない相談を受けることがあります。この場合、適切な相談先を案内することが信頼につながります

相談内容 相談先
制度・補助金 市区町村の窓口
相続登記、相続人の調査 司法書士、法務局
税の取扱い 税理士、税務署
境界、測量 土地家屋調査士
権利関係の争い 弁護士

また多くの自治体が空き家の相談窓口を設けています。2023年の改正空家法では、空家等管理活用支援法人という仕組みも創設されました

「うちでは扱えません」で終わらせず、次の相談先を示す。これだけで印象は変わります。

共通する原則

6つの質問に共通する答え方の原則があります。

原則 内容
断定しない 制度の適用可否を判断するのは行政や専門家
煽らない 不安を与えても判断の材料にはならない
選択肢を並べる 売却だけが答えではない
確認先を案内する 窓口や専門家への確認を伝える
正確に伝える 詳しい所有者には見抜かれる

不正確な説明は逆効果になる

「税金が6倍」「登記しないと罰金」「国が引き取ってくれる」。いずれも実際とは違います

制度を調べている所有者には、この違いが分かります。不正確な説明をした時点で、その後の話は聞いてもらえません

選択肢を並べる

使用目的のない空き家について、所有者の意向は所有継続40.6%、除却19.2%、売却18.3%です。売却だけが答えではありません。

売却、賃貸、解体、管理、当面の保有。選択肢を並べたうえで、判断は所有者に委ねる。この形が最も信頼されます。

目的によって、答えられる範囲が変わる

立場 答えられる範囲 案内する先
不動産会社 売却・賃貸の見通し 税は税理士、登記は司法書士
解体会社 解体の費用と工程 補助制度は市区町村
リフォーム・改修会社 改修の内容と費用 補助制度は市区町村
空き家管理会社 管理の内容と費用 売却等は不動産会社
士業 専門分野の手続き 他分野は他の士業

士業には広告のルールがある

司法書士、税理士、弁護士などには、それぞれの法令や会規で業務広告に関するルールが定められています。

DMや案内の内容についても、これらのルールに沿う必要があります。所属する会や関係団体にご確認ください

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物の状態を記録項目に含めることができます。状態が分かっていれば、どの選択肢から話をすべきかを訪問前に判断できます。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

なおDMの原稿はご用意いただいたものを使用する形が基本です。文面の作成は業務範囲に含まれません。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する状態の区分を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

答えるときの注意点

よくあるつまずき

  • 「税金が6倍になります」と伝える/勧告を受けた場合に限られ、最大約4.2倍です
  • 「登記しないと罰金です」と伝える/過料は催告を経る運用とされています
  • 「国が引き取ってくれます」と伝える/建物がある土地は申請できません
  • 「補助金が使えます」と断定する/制度の有無も要件も自治体によって違います
  • 売却だけを勧める/賃貸も管理も選択肢です

よくあるご質問

制度について正確に伝えるにはどうすればよいですか?

制度としてこういう仕組みがあるという事実を伝え、詳しくは市区町村の窓口や専門家への確認を案内する形をおすすめしています。適用の可否を判断するのは行政や専門家であり、営業する側が断定できるものではありません。

建物の状態が分かると話がしやすくなりますか?

なります。状態が分かっていれば、そのまま流通に乗せられる物件と、解体を前提に話をする物件を訪問前に分けられます。どの選択肢から話をすべきかの判断ができます。

DMの文面も作成してもらえますか?

原稿はご用意いただいたものを使用する形が基本です。印刷・封入・発送は1通180円(税別)で代行します。内容については、断定を避けた表現をおすすめしています。

自社で扱えない相談はどうすればよいですか?

適切な相談先を案内する形が信頼につながります。制度は市区町村の窓口、登記は司法書士、税は税理士、境界は土地家屋調査士といった形で整理しておくとよいでしょう。

賃貸が成立するか事前に分かりますか?

地域の家賃水準が判断材料になります。住宅・土地統計調査で都道府県別・市区町村別の家賃が公表されています。改修費を回収できる水準かどうかを確認したうえでご提案ください。

まとめ

所有者からよく聞かれる質問には、共通する誤解があります。

「税金が6倍」は不正確です。特例が外れるのは勧告を受けた場合に限られ、負担調整措置により固定資産税で最大約4.2倍。しかも助言・指導の段階では特例は継続します。

「国が引き取ってくれる」も正確ではありません。相続土地国庫帰属制度は建物がある土地では申請できず、審査手数料と負担金もかかります。

「登記しないと罰金」も違います。過料の定めはありますが、登記官の催告を経る運用とされています。

共通する原則は5つ。断定しない、煽らない、選択肢を並べる、確認先を案内する、正確に伝える。制度を調べている所有者には、不正確な説明は見抜かれます。正確に伝えるほうが、結果的に信頼されます。

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