空き家調査で得た所有者情報の扱い方|社内で決めておくこと

空き家調査で得た所有者情報の扱い方|社内で決めておくこと

登記情報は誰でも取得できます。利用目的を問われることもありません。ただし、取得したあとの扱いは別の話です

氏名と住所が並んだリストは、個人情報です。公開情報から作ったものであっても、それは変わりません。事業者として個人情報を取り扱う以上、法令にもとづく対応が求められます。

この記事では、所有者情報を扱ううえで社内で決めておくべきことを整理します。なお、具体的な判断については個人情報保護委員会や専門家への確認をご案内します。この記事は実務上の論点を示すもので、法的な判断を代わりに行うものではありません。

この記事の結論

  • 公開情報から作ったリストでも個人情報として扱う必要がある
  • 決めておくのは利用目的・管理方法・共有範囲・保管期間の4つ
  • 第三者への提供には原則として本人の同意が必要とされている
  • 本人から開示や利用停止の請求を受けることがある
  • 判断に迷う場合は個人情報保護委員会や専門家へ確認する

公開情報でも個人情報である

登記情報が公開されているのは、不動産取引の安全を確保するためです。誰でも権利関係を確認できる仕組みになっています。

しかし「誰でも取得できること」と「どう使ってよいか」は別です。取得した氏名と住所を事業に用いるなら、個人情報の取り扱いに関する法令が関わってきます。

誤解 実際
公開情報だから自由に使える 取得は自由だが、取り扱いには法令上の求めがある
自分で調べたものだから問題ない 取得方法にかかわらず個人情報にあたる
件数が少なければ対象外 取り扱う個人情報の数による除外は現在ない

「登記は公開だから」という理由だけで判断するのは危険です

決めておくべき4つのこと

①利用目的

個人情報保護法では、個人情報を取り扱うにあたって利用目的をできる限り特定することが求められています。そして、その目的を本人に通知するか、公表することとされています。

多くの企業は、プライバシーポリシーに利用目的を記載する形をとっています。空き家所有者への営業を行うなら、その旨が利用目的に含まれているかを確認してください

既存のプライバシーポリシーが顧客情報だけを想定している場合、見込み客の情報が含まれているかどうかを見直す必要があります

②管理方法

取得した個人情報については、安全管理のために必要な措置を講じることが求められています。

観点 決めておくこと
保管場所 紙かデータか。データならどこに置くか
アクセス権限 誰が見られるか
持ち出し 営業が現場に持ち出す場合の扱い
複製 コピーを作ってよいか、作った場合の管理
紛失時の対応 誰に報告し、どう対応するか

営業が紙のリストを持ち歩く場面は、実務でよくあります。車中に置いたまま、あるいは訪問先に置き忘れる。こうした事態を想定した取り決めが必要です。

営業リストは持ち出される前提で設計する

調査で納品されるリストは、現場で使うためのものです。事務所に保管しておくだけでは意味がありません

だからこそ、持ち出しの扱いを先に決めておく必要があります。1回に持ち出す件数を限る、担当エリア分だけを渡す、返却のルールを設ける。こうした運用で、紛失時の影響範囲を小さくできます。

全件が入ったリストを全員が持っている状態は、管理上のリスクが大きくなります。

③共有範囲

社内の誰が見られるか、社外に出すことがあるかを決めます。

個人情報保護法では、個人データを第三者に提供する場合、原則としてあらかじめ本人の同意を得ることとされています。

場面 考慮すべきこと
グループ会社との共有 別法人であれば第三者提供にあたりうる
提携先への紹介 同上
業務委託先への提供 委託であれば第三者提供にあたらないとされるが、委託先の監督が必要

「同じグループだから」「提携しているから」という理由だけでは判断できません。判断に迷う場合は専門家にご確認ください。

④保管期間

いつまで持っているか、不要になったらどうするかを決めます。

個人情報保護法では、利用する必要がなくなったときは、遅滞なく個人データを消去するよう努めることとされています。

空き家調査のリストは、時間が経てば実態と合わなくなります。取り壊された物件、売却された物件、状況が変わった物件。使わなくなったリストを持ち続ける理由はありません

保管期間を決めておけば、管理する対象そのものが減ります

本人から連絡が来ることがある

DMを受け取った所有者から、連絡が来ることがあります。

問い合わせの例 備えておくこと
どこで情報を知ったのか 取得経路を説明できるようにしておく
今後送らないでほしい 送付先から除外する仕組みを持つ
どんな情報を持っているのか 開示請求への対応手順を決めておく
削除してほしい 利用停止・消去の請求への対応手順を決めておく

個人情報保護法では、本人から保有個人データの開示、訂正、利用停止等を求められた場合の対応が定められています。

「今後送らないでほしい」という連絡は、最も現実的に起こりうる場面です。除外リストを作り、次回以降の発送で反映される仕組みにしておいてください。

取得経路は説明できるようにしておく

「どこで知ったのか」と聞かれたとき、説明できないと不信感を招きます

登記情報から取得したのであれば、そう伝えれば足ります。公開情報であり、誰でも取得できるものだからです。ごまかす必要はありません

発送まで一括で依頼すれば、社内で名簿を持つ量が減ります。

調査から登記情報の取得、DMの発送までお任せいただけます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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業務委託という選択肢

登記情報の取得やDMの発送を外部に委託する場合、委託にあたるとされています。この場合、第三者提供とは扱いが異なりますが、委託先を監督する責任が生じます

弊社では、調査で特定した地番をもとに登記情報を取得し、そのままDMの印刷・封入・発送まで一括でご依頼いただけます。

依頼の形 社内で持つ情報
リストのみ受け取る 全件の氏名・住所を社内で管理する
発送まで依頼する 反応があった相手の情報のみ扱う

発送まで委託すれば、社内で保有する名簿の量は減ります。反応があった相手だけを社内で管理する形になるためです。

ただし委託先の選定と監督は依頼側の責任です。どう管理されるかを確認したうえでご判断ください

士業には別のルールがある

司法書士、税理士、弁護士などには、それぞれの法令や会規で業務広告に関するルールが定められています。表示できる内容や表現に制約があります。

個人情報の扱いとは別に、DMの内容そのものについて所属する会の規定を確認する必要があります。判断に迷う場合は、所属する会や関係団体にご確認ください。

目的によって、扱う情報が変わる

立場 扱う情報 とくに注意すること
不動産会社 所有者の氏名・住所 利用目的の記載、送付停止への対応
リフォーム・外壁塗装会社 住所のみのことが多い 居住中の住宅への配布としての配慮
解体・建設会社 所有者の氏名・住所 不動産会社と同様
自治体 庁内情報を含む 目的外利用の制限、条例上の扱い

リフォーム目的なら扱う情報が少ない

リフォームや外壁塗装の提案先は、人が住んでいる築古住宅です。居住者に届けばよいため、所有者の氏名を取得する必要がない場合があります。

住所へのポスティングであれば、氏名を扱わずに済みます。管理すべき個人情報が減るという点で、運用上の負担は軽くなります。

自治体は目的外利用に注意する

自治体の場合、空家法にもとづいて課税情報などを内部利用できます。ただし目的の範囲を超えた利用はできません

また、個人情報の取り扱いについては条例が定められている場合があります。庁内の規定にもとづいて運用してください

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

登記情報の取得は、調査で特定した地番をもとに行います。地番の割り出しから取得、リストへの反映までを含む金額です。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

所有者の氏名が不要であれば、住所・地番までの納品にとどめることもできます。ポスティングを前提とする場合は、この形で足りることがあります。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、納品形式を決めます。所有者情報が必要かどうかもこの段階で決めます。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、ご要望に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。DMの印刷・封入・発送まで一括でご依頼いただくこともできます。

取り扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 「公開情報だから自由」と考える/取得は自由でも、取り扱いには法令上の求めがあります
  • 利用目的を確認しない/既存のプライバシーポリシーが顧客情報だけを想定していることがあります
  • 全件リストを全員が持つ/紛失時の影響範囲が大きくなります
  • 送付停止の連絡に対応する仕組みがない/最も現実的に起こりうる場面です
  • 保管期間を決めていない/古いリストを持ち続ける理由はありません

よくあるご質問

登記情報から取得した情報も個人情報ですか?

氏名と住所は個人情報にあたります。公開情報から取得したものであっても変わりません。事業として取り扱う場合は、利用目的の特定や安全管理措置といった対応が求められます。具体的な判断は専門家にご確認ください。

所有者の氏名を含まない納品もできますか?

できます。住所・地番までの納品にとどめることが可能です。ポスティングを前提とする場合、氏名を扱わずに運用できます。

DMの発送まで委託すると、社内での管理はどうなりますか?

反応があった相手の情報のみを社内で扱う形になるため、保有する名簿の量は減ります。ただし委託先の選定と監督は依頼側の責任となりますので、管理方法をご確認のうえご判断ください。

「もう送らないでほしい」と連絡が来たらどうすればよいですか?

送付先から除外する仕組みを事前に用意しておくことをおすすめします。次回以降の発送に反映されるよう、除外リストの管理方法を決めておいてください。

士業が使う場合の注意はありますか?

個人情報の扱いとは別に、業務広告に関するルールが各法令や会規で定められています。DMの内容については、所属する会や関係団体にご確認のうえご利用ください。

まとめ

登記情報は誰でも取得でき、利用目的も問われません。ただし取得したあとの扱いは別の話です。氏名と住所が並んだリストは個人情報であり、公開情報から作ったものでも変わりません。

決めておくのは4つ。利用目的・管理方法・共有範囲・保管期間です。とくに営業リストは現場に持ち出される前提なので、1回に持ち出す件数を限る、担当エリア分だけを渡すといった運用で影響範囲を小さくできます。

そして「もう送らないでほしい」という連絡は、最も現実的に起こりうる場面です。除外の仕組みを先に用意しておいてください。

なお、この記事は実務上の論点を整理したものです。具体的な判断については、個人情報保護委員会や専門家へご確認ください

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