士業が相続の相談を増やす方法|義務化で増えた対象をどう探すか

士業が相続の相談を増やす方法|義務化で増えた対象をどう探すか

相続登記が2024年4月から義務化され、2026年4月には住所等変更登記も義務化されました。手続きが必要な人は確実に増えています

ただし、増えているのは「手続きが必要な人」であって、「相談に来る人」ではありません。義務化されたことを知らない、あるいは知っていても後回しにしている所有者は少なくないのが実情です。

この記事では、相続や登記に関わる士業の方が、相談につながりうる層をどう把握するかを整理します。あわせて、調査でできることとできないことも明確にしておきます。

この記事の結論

  • 世帯所有空き家の61.6%が相続・贈与による取得。手続き対象は多い
  • 相続登記は施行前の相続も対象。原則2027年3月31日までの対応が求められる
  • ただし所有者が遠方にいることが多く、情報が届いていない
  • 調査で分かるのは使われていない住宅がどこにあるかまで
  • 相続の有無は登記情報で確認する。外観からは判断できない

手続きが必要な層はどれくらいあるか

全国で世帯が所有する空き家のうち、61.6%は相続・贈与によって取得したものです。自分で買った家ではなく、引き継いだ家だということになります。

放置型(賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家)は全国で385万6,000戸。このうち相当数が、相続で取得されたまま扱いが決まっていない状態にあると考えられます

2つの義務化の期限

項目 相続登記 住所等変更登記
施行日 2024年4月1日 2026年4月1日
期限 取得を知った日から3年以内 変更日から2年以内
過料 10万円以下 5万円以下
施行前の分 原則2027年3月31日まで 2028年3月31日まで

どちらも施行前の分が対象です。何十年も前の相続でも、登記がされていなければ義務が及びます。

なお過料は自動的に科されるものではなく、登記官による催告を経る運用が示されています。正当な理由があれば免除されます。

「知らない人」に届けるのが難しい

相続登記の義務化を知っていて、放置している所有者は多くありません。問題は、知らない層です

空き家の所有者は、物件から離れて住んでいることが少なくありません。全国平均で、世帯が持つ敷地以外の土地のうち14.1%は他県にあります。神奈川県では33.8%にのぼります。

市区町村からの通知も、現地の状況も、届いていない可能性があります。地元での認知を高めても、遠方の所有者には届きません。

調査で分かること・分からないこと

先に、できないことを書いておきます。

分からないこと 理由
相続が発生したかどうか 外観からは判断できない
相続登記が済んでいるか 登記情報を見なければ分からない
相続人が誰か 登記簿には記載されない
遺産分割の状況 当事者にしか分からない

庭木が伸びている、郵便物が溜まっている。こうした状態は相続でも、転居でも、施設入居でも起こります。原因までは特定できません。

現地調査で得られるのは、「今、使われていない住宅がどこにあるか」までです。

そこから先は登記情報で

登記事項証明書には、所有権の移転登記が行われた時期と原因が記載されます。原因が「相続」であれば、その時期が分かります

また、名義が故人のままであれば相続登記が未了だと分かります。これは、義務化の対象になっている可能性が高い物件です

工程 やること 分かること
1 現地調査 使われていない住宅の所在、建物の状態
2 登記情報の取得 所有者、移転の時期と原因、名義が故人かどうか
3 接触 実際の状況、相談の意向

所有者事項のみであれば1件140円(登記情報提供サービス)で取得できますが、移転の経緯まで確認するなら全部事項が必要です。件数が多い場合は、まず現地調査で対象を絞ってから取得するほうが効率的です。

接触するときに気をつけること

相続に関わる案件は、他の営業とは前提が違います。相手にとって、その家は亡くなった家族の家です

避けたいこと 理由
過料を強調する 催告を経る運用で、正当な理由による免除もある
期限を煽る 急かされると相手は身構える
遺産分割の状況を詮索する 親族間の事情に踏み込むことになる
短期間に何度も送る 受け取る側には重なって見える
相続の発生を断定する 登記情報を確認していなければ推測にすぎない

伝えるべきは、制度がこう変わったという事実と、相談を受け付けているという案内です。

士業には広告規制がある

司法書士、税理士、弁護士などには、それぞれの法令や会規で業務広告に関するルールが定められています。表示できる内容や表現には制約があります

DMを送る場合も、これらのルールに沿う必要があります。判断に迷う場合は、所属する会や関係団体への確認をおすすめします。この記事は調査データの活用について書いたもので、広告の可否を判断するものではありません。

不動産会社との違い

同じ空き家所有者にアプローチするとしても、士業と不動産会社では立場が違います。

項目 不動産会社 士業
目的 売却・買取の提案 手続きの相談を受ける
所有者の状態 手放す判断をしている 判断の前段階でもよい
期限との関係 3,000万円控除の期限が動機になる 登記義務の期限そのものが動機
断られた後 次の機会を待つ 手続きだけでも受任できる場合がある

士業のほうが、判断の前段階で関われる余地があります。売るか持ち続けるかを決めていなくても、登記だけは必要になるためです。

目的によって、見る条件が変わる

立場 主な目的 優先して見る条件 調査で指定するとよい条件
司法書士 相続登記の相談 使われていない住宅の分布 戸建てに限定し、地番を含むリストを依頼する
税理士 相続税・譲渡所得の相談 築古住宅、敷地の規模 建物の状態も記録項目に含める
行政書士・土地家屋調査士 各種手続きの相談 空き地・境界が絡む物件 空き地も同時に指定する

地番が入っていることが重要

登記情報を請求するには地番が必要で、普段使っている住所(住居表示)では取得できません。地番の割り出しは1件ずつ変換する作業になるため、件数が増えるほど負担になります。

弊社の土地調査では、現地で対象を確認したうえで地番の割り出しまで行います。納品されるリストには地番が含まれるため、そのまま登記情報の確認に進めます。

地番付きのリストをお出しします。

現地調査で対象を確定し、そのまま登記情報の確認に進めます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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関連する制度も動いている

所有者不明土地の発生を防ぐという目的のもと、複数の制度が同時期に整備されています。

制度 時期 内容
相続土地国庫帰属制度 2023年4月27日 相続した土地を一定の要件のもとで国に引き渡せる
改正空家法の施行 2023年12月13日 管理不全空家等の新設など
相続登記の義務化 2024年4月1日 3年以内の申請義務
住所等変更登記の義務化 2026年4月1日 2年以内の申請義務

所有者にとっては、対応すべきことが増えている時期です。相続した不動産をどうするか、判断を先送りしにくくなっています。

あわせて、相続した空き家を売却する際の3,000万円特別控除もあります。期限は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。手続きと税制の両面で、時間的な区切りがあります

なお制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、法務局や所管の窓口への確認をご案内ください。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。事務所の商圏に合わせて町丁目単位で範囲を指定できます。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。登記情報の確認につなげるなら、地番リストが中心になります

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか、どの範囲を対象にするかを確認します。事務所の商圏に合わせた範囲設定をご提案します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。使われていない住宅を特定する工程です。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出します。必要に応じて登記情報から所有者事項を取得することもできます。
納品
地図・リスト・集計表の形で納品します。地番が含まれるため、そのまま登記情報の確認に進めます。

進めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 外観から相続の発生を判断する/転居や施設入居でも同じ状態になります。登記情報で確認してください
  • 過料を強調する/催告を経る運用で、正当な理由による免除もあります
  • 広告規制を確認せずに送る/士業には業務広告のルールがあります。所属する会にご確認ください
  • 地番のないリストを使う/登記情報の請求には地番が必要です
  • 登記簿の住所を現住所だと考える/登記した時点の住所です。返送が出ます

よくあるご質問

相続が発生した物件だけを調べられますか?

外観から相続の有無を判断することはできません。現地調査で使われていない住宅を確定し、そのうえで登記情報から所有権移転の経緯を確認する流れになります。調査で候補を絞り、登記で確認する順序をおすすめしています。

納品されるリストに地番は含まれますか?

住所・地番リストをご選択いただいた場合、地番が含まれます。登記情報の請求には地番が必要なため、そのまま確認に進めます。

事務所の周辺だけを対象にできますか?

できます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。商圏に合わせた範囲でご相談ください。

登記情報の取得まで依頼できますか?

できます。調査で特定した地番をもとに所有者事項を取得します。1件750円(税別)で、地番の割り出しから取得、リストへの反映までを含みます。

DMの発送まで頼めますか?

対応しています。ただし士業には業務広告に関するルールがあるため、内容については所属する会や関係団体にご確認のうえご依頼ください。

まとめ

相続登記と住所等変更登記が相次いで義務化され、手続きが必要な人は確実に増えています。世帯が所有する空き家の61.6%は相続・贈与による取得です。

ただし増えているのは「手続きが必要な人」であって、「相談に来る人」ではありません。所有者は物件から離れて住んでいることが多く、情報が届いていない可能性があります

調査で分かるのは、使われていない住宅がどこにあるかまで。相続が発生したかどうかは外観からは判断できず、登記情報で確認する工程が必要です

そして接触には配慮が要ります。相手にとって、その家は亡くなった家族の家です。過料を強調せず、制度がこう変わったという事実を正確に伝える。士業には業務広告のルールもあるため、内容は所属する会にご確認ください。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げてください。

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