空き家管理サービスの営業先をどう探すか|売らない所有者が対象

空き家に関わる事業者の多くは、手放す判断をした所有者を探しています。売却、買取、解体。いずれも所有者が「もう持たない」と決めていることが前提です。
空き家管理サービスは、その逆です。持ち続ける、あるいは判断がつかない所有者が顧客になります。すぐには売らない、売れない、決められない。この層が対象です。
放置型の空き家は全国で385万6,000戸。そのうち売却が決まっているのはごく一部です。この記事では、管理サービスの提案先をどう見つけるかを整理します。
この記事の結論
- 対象は売らない・売れない・決められない所有者。他業種とは正反対
- 見るのは建物の傷みではなく管理されているかどうか
- 手遅れの物件より、傷み始めた物件のほうが提案は通る
- 所有者は遠方にいることが多い。他県にある所有地は全国平均14.1%
- 2023年の改正空家法で空家等管理活用支援法人の制度も創設された
記事の目次
顧客になるのはどういう所有者か
売却を決めている所有者は、管理サービスの顧客にはなりません。数か月で手放すなら、管理を委託する必要がないためです。
顧客になるのは、次のような状態の所有者です。
| 状態 | 背景 |
|---|---|
| 売りたいが売れない | 立地や接道の条件で買い手がつかない |
| 売るか決めていない | 相続の整理中、親族との調整がついていない |
| いずれ使うつもり | 子どもが戻る可能性、自分が住む可能性を残している |
| 手放したくない | 実家であることの感情的な整理がついていない |
| 放置している自覚がある | 近隣への影響を気にしているが、遠方で手が出せない |
共通しているのは、当面は持ち続けるということです。この層は不動産会社の提案には応じませんが、管理の相談には応じる可能性があります。
相続で引き継いだ層が中心になる
全国で世帯が所有する空き家の61.6%は、相続・贈与によって取得したものです。自分で買った家ではなく、引き継いだ家だということです。
相続直後は、遺産分割の整理や親族との調整があり、すぐに売却の判断はできません。この期間が、管理サービスの需要が生じる時期にあたります。
遠方の所有者ほど需要がある
住宅・土地統計調査によると、世帯が持つ敷地以外の土地のうち、他県にあるものは全国平均で14.1%。神奈川県では33.8%にのぼります。
物件から離れて住んでいれば、月に1度見に行くことすら負担になります。交通費と時間を考えれば、委託したほうが安く済む場合もあります。
見るのは「傷み」ではなく「管理の有無」
解体業者や買取業者は、傷んだ建物を探します。管理サービスは違います。
すでに手遅れの物件では、管理を提案しても意味がありません。屋根が抜け、外壁が崩れている建物に月1回の巡回を提案しても、状況は変わらないためです。
提案が通るのは、傷み始めた物件です。庭木が伸び始めた、郵便物が溜まり始めた、雨樋が外れている。まだ間に合う段階の物件を見つけられるかどうかが、この事業の分かれ目になります。
外観のどこを見るか
管理されているかどうかは、外から見て判断できる部分があります。
| 見る場所 | 管理されている | されていない |
|---|---|---|
| 庭木・雑草 | 刈り込まれている | 伸び放題、越境している |
| 郵便受け | 整理されている、封鎖されている | 投函物が溢れている |
| 敷地 | 片付いている | 放置物、不法投棄がある |
| 建物の軽微な破損 | 補修されている | 雨樋が外れたまま、雨戸が破損 |
| 周辺との境界 | 柵や生垣が保たれている | 倒れかけている |
これらは統計には出てきません。住宅・土地統計調査には「腐朽・破損の有無」という項目がありますが、公表されるのは市区町村単位の集計だけです。個別の建物がどの状態かは分かりません。
「管理されている空き家」は対象外
逆に、手入れが行き届いている空き家もあります。所有者が自分で通っている、すでに他社が管理している、あるいは別荘として使われている。
これらは提案先になりません。とくに二次的住宅(別荘)は、統計上は空き家ですが管理されています。長野県では総住宅数の5.4%、山梨県では4.0%を占めます。別荘地を範囲に含めると、管理済みの物件を大量に拾うことになります。
所有者が動く材料
管理を委託する動機は、費用の節約ではありません。リスクの回避です。
①管理不全空家等の区分
2023年12月施行の改正空家法で、管理不全空家等という区分が新設されました。適切な管理が行われず、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態が対象です。
市区町村から勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地特例から外れます。ただし助言・指導の段階では特例は継続します。
つまり指導を受けた段階で管理を改善すれば、税への影響は避けられるということです。これは管理サービスにとって、最も明確な提案材料になります。
なお「空き家を持っていると税が上がる」という説明は不正確です。勧告を受けた場合に限られます。制度の仕組みを正確に伝え、詳しくは市区町村の窓口へと案内してください。
②近隣とのトラブル
雑草の繁茂、樹木の越境、放置物。これらは建物が傷む前に表面化します。近隣から苦情が入って初めて、所有者が事態を知るケースもあります。
遠方に住んでいれば、苦情が届くまで気づけません。定期的に見てくれる人がいることの価値は、この点にあります。
③将来の選択肢を残す
管理されていれば、売却や賃貸に転じたときの選択肢が残ります。逆に傷みが進めば、解体を前提とした話しかできなくなります。
「いずれ考える」という所有者にとって、管理は判断を先送りするための費用です。この位置づけが受け入れられるかどうかが、成約を左右します。
空家等管理活用支援法人という制度
2023年の改正空家法では、空家等管理活用支援法人の制度も創設されました。空き家の管理や活用に取り組むNPO法人や社団法人等を、市区町村が支援法人として指定できる仕組みです。
指定を受けた法人は、市区町村と連携して空き家対策に関わることになります。自治体との協働という形での事業展開もありうるということです。
制度の詳細や指定の要件は自治体によって異なります。関心がある場合は、所管する市区町村の窓口にご確認ください。
管理されていない空き家を、現地で見つけます。
敷地の状態まで記録するため、まだ間に合う段階の物件を拾えます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。
0120-107-209
受付 10:00〜20:00/年中無休
エリアの選び方
管理サービスは、巡回を前提とした事業です。移動距離がそのままコストになります。
| 条件 | 影響 |
|---|---|
| 物件が密集している | 1日で回れる件数が増える |
| 物件が散らばっている | 移動時間が増え、1件あたりの採算が悪化する |
空き家率の高さより、密度で選ぶほうが実務に合います。参考として、住宅の密度は香川県が約263戸/㎢、鳥取県が約75戸/㎢と3.5倍の差があります。
空き家率が全国1位の徳島県でさえ、密度は約94戸/㎢で全国平均172戸を下回ります。率の高さと巡回の効率は別の話です。
町丁目単位で押さえる
調査費用は面積に対する従量制です。巡回ルートに合わせて町丁目単位で範囲を切れば、費用も抑えられます。
まず1〜2地区で実施し、その範囲内に何件あるかを確認する。採算が合う密度かどうかは、実数を見なければ判断できません。
目的によって、見る条件が変わる
| 立場 | 主な目的 | 優先して見る条件 | 調査で指定するとよい条件 |
|---|---|---|---|
| 空き家管理会社 | 管理の受託 | 管理されていない、かつ傷みが軽微な物件 | 敷地の状態を記録項目に含める |
| 不動産会社 | 管理から売却へつなげる | 同上に加えて、立地と敷地の規模 | 建物の状態もあわせて記録 |
| 自治体 | 管理不全空家等の把握、支援法人との連携 | 敷地の管理状況、周辺への影響 | 町丁目単位で全域を対象にし、状態別の分類を依頼する |
管理から売却につながることもある
管理を受託していれば、所有者との接点が続きます。数年後に売却を検討する段階で、最初に相談される立場になります。
不動産業を兼ねている場合、管理は将来の仕入れにつながる導線でもあります。すぐに売らない層と関係を作れるという点が、この事業の副次的な価値です。
所有者への接触
空き家の所有者は、その建物に住んでいません。訪問しても会えないのが前提です。
登記情報から取得できるのは氏名と住所で、電話番号は含まれません。公開情報だけで接触するなら、郵送が実質的な手段になります。
| 工程 | やること |
|---|---|
| 1 | 現地調査で管理されていない物件を確定し、地番を割り出す |
| 2 | 登記情報から所有者事項を取得する |
| 3 | DMを送る |
弊社では、調査で特定した地番をもとに登記情報を1件750円(税別)で取得し、そのままDMの印刷・封入・発送まで1通180円(税別)で代行できます。
なお登記簿の住所は登記した時点のものです。一定の返送は構造的に避けられません。2026年4月から住所等変更登記が義務化されましたが、施行前の変更は2028年3月31日までの対応とされているため、当面は古い住所が残っている前提で発送数を決めてください。
費用・期間・納品物
弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。
| 項目 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金 | 10,000㎡あたり 1,000円 |
| 追加調査(1項目) | 200円 |
| 登記情報取得(所有者事項) | 750円/件 |
| DM印刷・封入・発送代行 | 180円/通 |
面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。巡回ルートに合わせた範囲設定にも対応します。
納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。巡回を前提とするなら、地図が中心になります。
弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。
依頼から納品までの流れ
巡回できる範囲を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する状態の区分を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
指定条件に該当する建物を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。別荘地を範囲から外す設定にも対応します。
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。敷地の管理状況もこの工程で記録します。
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。
提案を進めるときの注意点
よくあるつまずき
- 傷みが激しい物件を狙う/手遅れの物件に月1回の巡回を提案しても状況は変わりません
- 建物の状態だけを見る/管理の有無は、敷地や郵便受けのほうが先に表れます
- 別荘地を範囲に含める/管理済みの二次的住宅を大量に拾うことになります
- 空き家率の高さでエリアを選ぶ/巡回事業では密度のほうが採算に効きます
- 「税金が上がります」と伝える/勧告を受けた場合に限られます。指導の段階では特例は継続します
よくあるご質問
管理されていない物件だけを抽出できますか?
外観から確認できる範囲で、敷地の管理状況を記録します。庭木や雑草の状況、郵便受けの状態、放置物の有無といった項目を含めることができます。手入れが行き届いている物件と区別したリストをお出しできます。
傷みの程度で分けられますか?
できます。外観から確認できる範囲で、劣化の程度を段階に分けて記録します。まだ間に合う段階の物件と、解体前提の物件を分けて扱えるようになります。
別荘を除いて調査することはできますか?
可能です。調査範囲の設定段階で別荘地を外す形で調整します。長野県・山梨県・静岡県など二次的住宅の多い地域では特におすすめしています。
巡回ルートに合わせた範囲で依頼できますか?
できます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。1日で回れる範囲がお決まりであれば、それに合わせて設計します。
所有者が県外に住んでいる場合も特定できますか?
できます。調査で特定した地番をもとに登記情報を取得するため、居住地が県外であっても対応します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくことも可能です。
まとめ
空き家管理サービスの顧客は、手放す判断をしていない所有者です。売りたいが売れない、決められない、いずれ使うかもしれない。他の業種とは正反対の層になります。
だから見るべきものも違います。建物の傷みではなく、管理されているかどうか。すでに手遅れの物件に月1回の巡回を提案しても、状況は変わりません。庭木が伸び始めた、郵便物が溜まり始めた、雨樋が外れている。まだ間に合う段階の物件を見つけられるかが分かれ目です。
そしてこれらは統計に出てきません。公表されるのは市区町村単位の集計だけで、個別の建物の管理状況は分かりません。現地で外観を見て記録するしかない情報です。
巡回を前提とする事業なので、エリアは密度で選んでください。空き家率が高くても散らばっていれば採算は合いません。まずは1〜2地区で実施し、その範囲に何件あるかを確認してから広げてください。
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