所有者がわからない空き家にどう当たるか|調べられる範囲と限界

所有者がわからない空き家にどう当たるか|調べられる範囲と限界

登記情報を取得したのに、所有者にたどり着けないことがあります。名義が明らかに故人、住所が数十年前のまま、共有者が10人以上いる。実務では珍しくない事態です

従来、相続登記に期限がありませんでした。そのため数世代前の名義で止まっている不動産が全国に存在します。2024年4月から義務化されましたが、過去分が行き渡るには時間がかかります。

この記事では、所有者が分からない場合に何ができて、何ができないのかを整理します。民間企業にできることには限界があります。そこを踏まえたうえで、どう判断するかをお伝えします。

この記事の結論

  • 登記簿の名義が故人のままのことがある。相続登記に期限がなかったため
  • 民間企業が戸籍をたどることはできない。職務上請求は士業に限られる
  • 自治体には課税情報の内部利用など、民間にない手段がある
  • 2023年の制度改正で財産管理人の選任請求の要件が緩和された
  • 実務では追える物件を数で処理するほうが結果につながる

なぜ所有者が分からなくなるのか

原因はいくつかに分かれます。

状態 背景
名義が故人のまま 相続登記がされていない。数世代前の名義のこともある
登記簿の住所が古い 転居しても変更登記をしなければ更新されない
共有者が多数いる 相続を経るごとに相続人が増え、権利関係が複雑になる
相続人が誰も引き継いでいない 相続放棄、あるいは相続人が存在しない

いずれも登記簿を見ただけでは解決しません。名義人が故人であれば、実際の権利者は相続人ですが、それが誰かは登記簿に書かれていないためです。

相続登記の義務化で改善に向かう

2024年4月から、相続登記の申請が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が求められ、過去に発生した相続についても対象となります。施行前の分は原則2027年3月31日までとされています。

2026年4月からは住所等変更登記も義務化されました。長期的には、名義と実態が一致するケースが増えていきます

ただし過去分が行き渡るには時間がかかります。当面は、追えない物件が一定数残る前提で計画を立ててください

民間ができるのは登記情報まで

不動産の登記情報は誰でも取得できます。所有者事項なら1件140円(登記情報提供サービス)、権利関係まで含む全部事項なら330円です。

しかしその先はありません。名義人が故人だった場合、相続人を特定するには戸籍をたどる必要がありますが、戸籍の職務上請求ができるのは弁護士・司法書士などの士業に限られます

営業目的で戸籍や住民票の除票を取得することはできません。この点は制度上の制約であり、工夫で乗り越えられるものではありません

自治体には民間にない手段がある

市区町村は、空家法に基づいて次のような手段を使えます。

手段 内容
課税情報の内部利用 固定資産税の課税情報などを、法の施行に必要な限度で内部利用できる
事業者への情報提供の求め 電気・ガス等の供給事業者に、所有者等の把握に必要な情報の提供を求められる
住民票・戸籍の利用 事務の範囲で利用できる
財産管理人の選任請求 裁判所に対して選任を請求できる

民間企業はこれらを使えません。空家法に基づく仕組みは、市区町村長に認められたものです。

財産管理人の制度が使いやすくなった

2023年12月施行の改正空家法により、市区町村長は利害関係の有無にかかわらず、裁判所に財産管理人の選任を請求できるようになりました。

従来は利害関係人であることが必要とされていましたが、この要件が外れたことで、所有者不明の空き家への対応がしやすくなっています

また2023年4月には民法が改正され、所有者不明土地・建物の管理制度が創設されました。特定の土地・建物について管理人を選任できる仕組みです。

制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、法務局や司法書士などの専門家への確認をご案内ください

民間はどう判断するか

戸籍をたどれない以上、民間企業にできることは限られます。現実的な選択肢は3つです。

選択肢 内容 向いている場面
士業に依頼する 司法書士等に相続人の調査を依頼する その物件に確実に価値がある場合
いったん保留する 記録に残し、対象から外しておく 他に追える物件がある場合
自治体の窓口に情報提供する 管理不全の状態であれば相談する 近隣への影響がある場合

費用対効果で考える

相続人の調査を士業に依頼すれば費用が発生します。相続人が多数いれば、全員との合意形成も必要になります。時間も費用もかかる作業です

一方、追える物件は他にもあります。全国の放置型の空き家は385万6,000戸。そのうち登記が整理されていて所有者にたどり着ける物件のほうが多数です

1件に時間をかけるより、追える物件を数で処理するほうが結果につながります。追えない物件は記録に残し、条件が変わったときに戻ればよいという判断です。

返送も情報として残す

DMを送って返送されたということは、「登記簿の住所にはもういない」という情報が得られたということです。

この記録があれば、次回の判断ができます。同じ物件に再度送るのか、対象から外すのか、士業に依頼するのか。返送されたものを捨てずに残しておいてください

そもそも追える物件を増やす

所有者が分からない物件への対処より、追える物件をどれだけ確保できるかのほうが実務では効きます。

調査の段階で条件を絞る

条件 効果
戸建てに限定する 共有者が多数になりにくい
建物の状態を記録する 放置期間が長い物件を事前に把握できる
別荘地を範囲から外す 管理された二次的住宅を拾わない
造成年代のそろった地区を選ぶ 権利関係が整理されている可能性が高い

放置期間が長い物件ほど、相続登記が未了である可能性は高くなります。外観の傷みが著しい物件は、所有者の特定も難しいことが多いという傾向があります。

逆にいえば、比較的最近空き家になった物件のほうが、所有者にたどり着ける可能性は高いということです。

状態で優先順位をつける

神戸市の資料では、区によって腐朽・破損の割合が大きく異なることが示されています。兵庫区4.3%、西区2.9%に対し、長田区23.4%、北区20.0%。同じ市内でも8倍の開きがあります

兵庫区は空き家が5年間で80.3%増えましたが、傷んでいるのは4.3%だけ。新しく空き家になった住宅が多いということです。こうした地区では、所有者の特定も比較的進めやすくなります。

地番の割り出しから所有者の特定まで、一括で対応します。

現地調査で対象を確定し、登記情報の取得、DMの発送までお任せいただけます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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目的によって、対処が変わる

立場 できること 現実的な進め方
不動産会社 登記情報の取得まで 追える物件を優先し、追えないものは記録に残す
リフォーム・外壁塗装会社 居住実態の確認 そもそも空き家ではなく居住中の住宅が対象
士業 職務上請求による戸籍の取得 相続人調査そのものが受任内容になる
自治体 課税情報の内部利用、財産管理人の選任請求 制度に基づく手段を段階的に使う

リフォーム目的なら影響は小さい

リフォームや外壁塗装の提案先は、空き家ではなく居住中の築古住宅です。居住者がいるため、所有者不明の問題はほとんど生じません。

「古家(居住中)」を調査項目として指定すれば、この層を対象にできます。所有者の特定に苦労する場面自体が少なくなります

自治体は段階的に進める

自治体の場合、まず庁内の情報で所有者を追い、それでも判明しなければ事業者への照会、さらに財産管理人の選任請求という順序になります。

いずれの段階でも、対象物件がどこにあるかを把握していることが前提です。実態調査で所在と状態を記録しておけば、優先度の高い物件から順に手続きを進められます。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

登記情報の取得は、調査で特定した地番をもとに行います。地番の割り出しから取得、リストへの反映までを含む金額です。所有者の居住地が県外であっても対応します。

なお戸籍をたどる相続人調査には対応していません。職務上請求が必要な領域のため、司法書士等の専門家へのご依頼となります。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(仕入れ/施工提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。放置期間の長さを推測する材料にもなります。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、登記情報から所有者事項を取得します。名義人が故人であるかどうかも確認できます。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

進めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 民間でも戸籍が取れると考える/職務上請求は士業に限られます。営業目的での取得はできません
  • 1件の所有者調査に時間をかけすぎる/追える物件が他にあるなら、そちらを優先してください
  • 返送されたDMを捨てる/「その住所にはいない」という情報です。記録として残してください
  • 名義人=現在の所有者だと考える/相続登記がされていなければ故人の名義のままです
  • 傷みが激しい物件ばかり狙う/放置期間が長いほど、所有者の特定も難しくなる傾向があります

よくあるご質問

相続人の調査まで依頼できますか?

対応していません。戸籍をたどる作業は職務上請求が必要な領域のため、司法書士等の専門家へのご依頼となります。弊社では登記情報から取得できる所有者事項までを提供しています。

名義人が故人かどうかは分かりますか?

登記情報を確認すれば、所有権移転の時期と原因が分かります。長期間移転がなく、かつ相続登記の形跡がなければ、名義が故人のままである可能性があります。ただし確定するには別途調査が必要です。

所有者が分からない物件はどう扱えばよいですか?

記録に残したうえで、いったん対象から外す判断が現実的です。追える物件が他にあるなら、そちらを優先するほうが結果につながります。近隣への影響がある場合は、市区町村の窓口に相談する選択肢もあります。

共有者が多数いる物件も分かりますか?

登記情報を取得すれば、共有者の氏名と持分が確認できます。ただし全員との合意形成が必要になるため、時間と手間がかかる点は考慮してください。

自治体でも利用できますか?

ご利用いただいています。所有者の特定には庁内の情報や制度に基づく手段がありますが、対象物件がどこにあるかの把握が前提になります。町丁目単位で調査し、状態別に分類した納品に対応しています。

まとめ

登記情報を取得しても、所有者にたどり着けない物件があります。名義が故人のまま、住所が古い、共有者が多数。相続登記に期限がなかったことが原因です。

そして民間企業ができるのは登記情報までです。相続人を特定するには戸籍をたどる必要がありますが、職務上請求ができるのは士業に限られます。営業目的での取得はできません。制度上の制約であり、工夫で乗り越えられるものではありません。

自治体には課税情報の内部利用や財産管理人の選任請求といった手段があります。2023年の改正で、利害関係の有無にかかわらず選任を請求できるようになりました。

民間の現実的な判断は、追える物件を数で処理することです。放置型は全国で385万6,000戸あり、そのうち所有者にたどり着ける物件のほうが多数です。1件に時間をかけるより、追える物件を確保するほうが結果につながります。追えない物件は記録に残し、条件が変わったときに戻ればよいのです。

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