空き家率が下がった地域で何が起きているか|3つのパターン

空き家率が下がった地域で何が起きているか|3つのパターン

全国の空き家率は13.8%で過去最高を更新しました。ただしすべての地域で上がっているわけではありません。下がった県も市もあります。

空き家率が下がったと聞けば、状況が改善したように見えます。しかし調査対象が減ったとは限りません。率が下がる理由は複数あり、そのうち実際に空き家が減っているのは一部です。

この記事では、空き家率が下がる3つのパターンを整理します。どれに当たるかで、その地域をどう扱うべきかが変わります

この記事の結論

  • 率が下がる理由は3つ。分母の増加・取り壊し・実際の減少
  • 大阪市は率が1.0ポイント低下したが、空き家は8,500戸増えている
  • 栃木県は率が0.4ポイント低下したが、空き家は3,000戸増
  • 埼玉県は率が全国最低かつ減少率も最大だが、放置型は増えている
  • 率ではなく放置型の実数を見れば、判断を誤らない

空き家率は割り算である

基本を確認しておきます。空き家率は次の計算で出ます。

空き家率 = 空き家数 ÷ 総住宅数

この式から、率が下がるパターンは3つに分かれます。

パターン 分子(空き家数) 分母(総住宅数)
①分母の増加 増えている それ以上に増えている
②取り壊し 減っている 減っている
③実際の減少 減っている 横ばいか増加

①では空き家が増えているのに率が下がります。ここが最も誤解を招く形です。

①分母の増加

新しい住宅が大量に供給されると、分母が膨らんで率が下がります。空き家が増えていても、それ以上に住宅が増えていれば率は下がるという仕組みです。

大阪市の例

項目 平成30年 令和5年 増減
住宅総数 167万5,900戸 182万7,900戸 +9.1%
空き家数 28万6,100戸 29万4,600戸 +3.0%
空き家率 17.1% 16.1% ▲1.0pt

空き家は8,500戸増えています。それでも率が1.0ポイント下がったのは、住宅総数が15万2,000戸増えたためです。

供給の中心は共同住宅でした。11階建以上の共同住宅は7万9,400戸(20.8%)増えています。高層の住宅が大量に供給された結果、率が薄まったという構図です。

栃木県の例

栃木県では空き家率が0.4ポイント下がりましたが、空き家数は3,000戸増えて過去最多となりました。総住宅数が4.78%増えたためです。

しかも増加分の内訳を見ると、3,000戸のうち2,600戸は二次的住宅でした。別荘を除けば400戸増で、実質的にはほぼ横ばいです。

率の低下を「改善」と読まない

このパターンでは、調査対象はむしろ増えています。率が下がったからといって、その地域を候補から外すのは誤りです。

確認すべきは、空き家の実数がどう動いたか。そして総住宅数がどれだけ増えたか。この2つを並べれば、どちらのパターンか判断できます。

住宅・土地統計調査では、空き家数も総住宅数も公表されています。率だけを見ずに、実数を確認してください

②取り壊し

総住宅数そのものが減っている地域があります。取り壊しが新築の供給を上回っているということです。

総住宅数の増減
高知県 ▲1.0%
長崎県 ▲0.7%

このパターンでは、空き家が取り壊されて減ることがあります。数としては減少ですが、地域の住宅ストックそのものが縮小している状態です。

調査への影響

取り壊しが進んでいる地域では、古いリストに現存しない物件が混ざります。前回の調査から時間が経つほど、この割合は増えます。

令和5年調査の基準日は2023年10月1日です。それ以降に取り壊された物件は、統計に反映されていません

逆にいえば、更地が増えている地域だということでもあります。「空き地(更地)」を調査項目に加えれば、取り壊し後の区画も把握できます。用地を探す目的であれば、こちらが対象になります。

③実際の減少

3つ目が、住宅ストックは維持されたまま空き家が減っているパターンです。

京都市の例

京都市の空き家は10万5,300戸で、前回から700戸減りました。空き家率も12.5%へ0.4ポイント低下しています。

市の資料には、その背景として平成26年の条例制定と総合的な空き家対策が挙げられています。全国も京都府も過去最高を更新するなかでの減少です

沖縄県の例

沖縄県では、空き家が20年ぶりに減少しました。住宅の供給が続くなかで空き家が減っている状態です。

このパターンでは、調査対象は実際に減っています。ただしゼロになったわけではありません。

率が下がっても対象が増えることがある

最も注意が必要なのが、率と放置型の動きが逆になる場合です。

埼玉県の例

項目 状況
空き家率 9.3%で全国最低
率の減少幅 全国最大
放置型(その他の住宅) 増加
放置型の実数 13万5,800戸

率は下がっているのに、放置型は増えています。減ったのは賃貸用や売却用の空き家で、調査対象になる層はむしろ増えているということです。

率が全国最低だからといって候補から外せば、13万5,800戸を見逃すことになります。

群馬県の例

群馬県では、空き家率16.7%が5年間まったく変わりませんでした。ただし放置型は1万500戸・16.8%増えています

賃貸用・売却用が7,500戸減って相殺された結果、率が動かなかった。率が動かないことと、実態が動いていないことは別です

率ではなく、実数で判断できます。

現地調査で確認した実際の件数をお出しします。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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どう見分けるか

手順は単純です。次の3つの数字を並べてください。

確認する数字 分かること
総住宅数の増減 分母が動いたかどうか
空き家数の増減 分子が動いたかどうか
放置型の増減 調査対象が動いたかどうか

3つ目が最も重要です。空き家全体が減っていても、放置型が増えていることがあります。

二次的住宅も確認する

もうひとつ、二次的住宅(別荘等)の動きも見てください。栃木県のように、増加分の大半が別荘というケースがあります。

二次的住宅は全国では総住宅数の0.6%にすぎませんが、長野県では5.4%、山梨県では4.0%を占めます。この層は管理されているため、調査対象になりません

目的によって、見る数字が変わる

立場 優先して見る数字 理由
不動産会社 放置型の実数と増減 仕入れの対象になる層
解体会社 放置型の実数と腐朽・破損の割合 状態が判断材料になる
リフォーム・外壁塗装会社 居住世帯のある住宅、建築時期別の構成 対象は空き家ではない
自治体 空き家全体と種類別の内訳 施策の対象が広い

リフォームは別の指標を見る

リフォームや外壁塗装の提案先は、人が住んでいる築古住宅です。空き家率の増減は、この用途では判断材料になりません

見るべきは居住世帯のある住宅数と、建築時期別の構成です。福島県では総住宅数がほぼ横ばいのなか、居住世帯のある住宅が4,300戸減って空き家が7,500戸増えました。居住中から空き家へ、中身が移動しているという構図です。

自治体は種類別の内訳を見る

自治体の場合、施策の対象は空き家全体に及びます。ただし種類によって取るべき対応が違います

賃貸用の空き家は市場の在庫であり、放置型とは扱いが異なります。種類別の内訳を見なければ、施策の設計を誤ります

統計の限界も踏まえる

ここまでの数字は、すべて住宅・土地統計調査によるものです。この調査は標本調査であり、公表されている数字は推計値です

制約 内容
標本調査 抽出した約340万の住戸・世帯から推計している
基準日 2023年10月1日時点。それ以降の変化は反映されない
表章の単位 市区および人口1万5千人以上の町村まで

率の増減を細かく比較しすぎないでください。0.1ポイントの差に意味を求めるより、実数の桁と動きの方向を見るほうが実務に合います。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。統計でエリアを絞り込んでおけば、そのぶん費用は抑えられます。

調査項目は、空き家(戸建て)のほか、空き地、古アパート、古家(居住中)、駐車場、倉庫・工場などから選べます。取り壊しが進んでいる地域では、空き地を同時に指定すると変化が追えます

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。統計をもとにおおよその水準もお伝えします。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。推計ではなく実際に確認した件数を報告します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

数字を読むときの注意点

よくあるつまずき

  • 率の低下を「改善」と読む/大阪市は率が1.0pt下がりましたが空き家は8,500戸増えています
  • 率が低い地域を候補から外す/埼玉県は全国最低ですが放置型は13万5,800戸あります
  • 率が動かない=実態も動いていないと考える/群馬県は率が不変でも放置型は16.8%増です
  • 二次的住宅を確認しない/栃木県では増加3,000戸のうち2,600戸が別荘でした
  • 0.1ポイントの差にこだわる/標本調査による推計値です。桁と方向を見てください

よくあるご質問

空き家率が下がっている地域は避けるべきですか?

一概には言えません。率が下がっていても空き家の実数が増えている地域があります。総住宅数の増減、空き家数の増減、放置型の増減の3つを確認してください。

放置型の実数はどこで確認できますか?

住宅・土地統計調査で「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」または「その他の住宅」として公表されています。都道府県別と市区町村別のデータがあります。自治体が独自に資料をまとめている場合もあります。

取り壊しが進んでいる地域はどう扱えばよいですか?

古いリストには現存しない物件が混ざる可能性があります。一方で更地が増えている地域でもあるため、「空き地(更地)」を調査項目に加えると変化を追えます。用地を探す目的であれば、こちらが対象になります。

統計の数字と実際の件数はどれくらい違いますか?

一律にお示しすることはできません。標本調査による推計値であること、基準日から時間が経過していることの2つの要因があります。実数が必要な場合は現地調査で確認する形になります。

市区町村別のデータも確認できますか?

市区および人口1万5千人以上の町村については公表されています。それ未満の町村は表章の対象外です。範囲の絞り込みからご相談いただくことも可能です。

まとめ

空き家率が下がる理由は3つあります。分母の増加、取り壊し、実際の減少です。

とくに注意が必要なのが1つ目。大阪市は率が1.0ポイント下がりましたが、空き家は8,500戸増えています。住宅総数が9.1%増えて分母が膨らんだためです。栃木県も同じ構図で、率は下がったのに空き家は3,000戸増えました。

さらに、率と放置型の動きが逆になることもあります。埼玉県は空き家率が全国最低で減少率も最大ですが、放置型は増えており実数は13万5,800戸。群馬県は率が5年間まったく変わらないのに、放置型は16.8%増えています。

見るべきは率ではなく放置型の実数と増減です。総住宅数、空き家数、放置型。この3つを並べれば、どのパターンか判断できます。

そのうえで、実数は現地で確かめてください。統計は標本調査による推計値であり、基準日は2023年10月1日です。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げてください。

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