複数エリアで空き家調査を行う設計|同じ基準で比べられる形に

複数エリアで空き家調査を行う設計|同じ基準で比べられる形に

複数の県で営業している、支店が各地にある、フランチャイズを展開している。こうした場合、調査の発注をどう組むかで得られる情報が変わります

支店ごとに別々の会社へ発注すれば、それぞれのエリアのリストは手に入ります。ただしエリア同士を比べることはできません。判定基準も記録項目も納品形式も揃っていないためです。

同じ基準で調べれば、「A県のこの地区とB県のこの地区、どちらが厚いか」が数字で判断できます。この記事では、複数エリアを扱う場合の設計を整理します。

この記事の結論

  • 基準が揃っていなければ、エリア同士を比べられない
  • 揃えるのは判定基準・記録項目・納品形式・調査時期
  • 条件は揃えるが、範囲の切り方は地域ごとに変える
  • 住宅の密度は香川263戸/㎢、鳥取75戸/㎢と3.5倍の差がある
  • 建て方の構成も東京は共同住宅71.6%、秋田は一戸建79.4%と正反対

別々に発注すると比べられない

支店ごとに調査を発注した場合、次のような状態になります。

項目 バラバラだとどうなるか
判定基準 何をもって空き家としたかが違う。件数の意味が揃わない
記録項目 状態の分類が違えば、並べて見られない
納品形式 集計の形が違い、合算も比較もできない
調査時期 季節が違えば雑草や積雪の影響を受ける

件数だけを並べても、意味のある比較にはなりません。A県で500件、B県で300件と出ても、基準が違えば「A県のほうが多い」とは言えないためです。

本部が判断できなくなる

複数の拠点を持つ企業では、どこに資源を配分するかを本部が判断します。人員、広告費、在庫。

その判断材料が拠点ごとにバラバラだと、比較ができません。結果として、報告してきた拠点の主張の強さで決まることになります。

揃えるものと、変えるものを分ける

複数エリアで調査するとき、すべてを揃えるわけではありません

  • 揃えるもの/判定基準、記録項目、納品形式、調査時期
  • 変えるもの/調査範囲の切り方、範囲の広さ

基準を揃えるのは比較のためです。一方、範囲の切り方まで統一すると、かえって精度が落ちます。地域によって住宅の集まり方がまったく違うためです。

市街地なら町丁目、中山間地区なら集落、政令市なら区からさらに町丁目へ。切る単位は地域の性格に合わせてください

地域差はこれだけある

範囲の切り方を変える理由は、地域差の大きさにあります。

住宅の密度

1㎢あたりの住宅数(単純計算)
香川県 約263戸
全国平均 約172戸
徳島県 約94戸
鳥取県 約75戸

総住宅数を面積で割った単純計算です。香川県と鳥取県で3.5倍の差があります

費用は面積に対する従量制なので、同じ予算でも確認できる建物の数が地域によって変わります。同じ範囲設定を全エリアに当てはめると、拾える件数が大きくばらつきます。

建て方の構成

特徴
東京都 共同住宅が71.6%
秋田県 一戸建が79.4%

「戸建てに限定」という同じ条件でも、残る母数が正反対になります。一戸建が中心の県では条件指定の意味は小さく、共同住宅が中心の都市部では母数が大きく減ります。

空き家の中身

放置型の割合も県によって違います。空き家率が高くても、内訳を見ると別荘が多い県もあります。長野県では空き家の26.9%が二次的住宅です。

同じ「空き家調査」を発注しても、拾えるものが地域によって変わります

同じ基準で調べると何が分かるか

基準を揃えて複数エリアを調査すると、次のことが分かります。

分かること 使い道
エリア別の対象件数 どこに資源を配分するかの判断
面積あたりの密度 営業効率の比較
状態の分布 提案内容をエリアごとに変えるか判断する
建て方の構成 戸建て戦略が成立するかの判断

これは統計からは出てきません。統計は市区町村単位の推計値ですが、調査結果は町丁目単位の実数です。

拠点の立ち上げにも使える

新しいエリアに出るとき、既存エリアと比べてどうかが分かれば判断しやすくなります

既存エリアで実績が出ている条件と、新エリアの調査結果を突き合わせる。同じ基準で調べていれば、この比較が成立します

県境をまたいでも、同じ基準で調査します。

47都道府県に自社ネットワークがあるため、エリア間で比較できる形で納品できます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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発注を一本化する意味

拠点ごとに発注するか、本部で一本化するか。それぞれに事情があります。

方式 利点 課題
拠点ごとに発注 現場の判断で動ける 基準が揃わず比較できない
本部で一本化 基準が揃い、比較できる 現場の事情を反映しにくい

現実的なのは、基準は本部で決め、範囲は現場が指定するという形です。

決める主体 決めること
本部 判定基準、記録項目、納品形式、調査時期
各拠点 調査範囲、範囲の広さ、優先する地区

これなら比較可能性を保ちつつ、現場の判断も活かせます

処理能力は拠点ごとに違う

範囲を決めるとき、その拠点が週に何件処理できるかから逆算してください

週20件で3か月かけて一巡させるなら、およそ240件が目安です。人員が違えば、適切なリストの規模も変わります。全拠点に同じ件数を配るのは実務的ではありません

目的によって、設計が変わる

立場 複数エリアで調べる目的 揃えるべき項目
買取再販 どのエリアに仕入れ余地があるか 建物の状態、接道
リフォーム・外壁塗装 未施工層が厚いエリアの判断 外壁・屋根の状態、築古の判定基準
太陽光・蓄電池 設置に適した屋根がどれだけあるか 屋根の状況、設置の有無
フランチャイズ本部 加盟店ごとの商圏評価 すべての項目
自治体(広域連携) 自治体間の比較 判定基準、状態の分類

自治体は広域連携で使える

隣接する自治体で同じ基準の調査を行えば、自治体間の比較が可能になります

県が主導して複数市町村をまとめる、あるいは近隣自治体で共同実施する。同じ基準であれば、県内の分布として整理できます

実態把握は国の補助事業の対象となる場合があります。空き家対策総合支援事業では、空家等対策計画の策定等に必要な空き家の実態把握が補助対象に含まれています。補助率や要件は年度によって変わるため、国土交通省の資料および都道府県の担当部署でご確認ください

調査の実施体制

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持っています。県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます

できること 内容
複数県の同時調査 同じ基準で実施し、比較できる形で納品
時期を揃えた実施 季節の影響を排除できる
拠点ごとの納品 各拠点向けに地図とリストを分けて納品
全体の集計 エリア横断の件数集計も作成

エリアによって調査の粒度が変わることはありません。同じ判定基準で記録します。

積雪地は時期に注意する

全エリアで時期を揃えたい場合、積雪のある地域が制約になります。雪に覆われると、屋根も敷地も状態が確認できません。

積雪地を含む場合は、雪のない時期に全エリアをまとめて実施するのが現実的です。年間のどの時期に実施するかを、あらかじめ決めておいてください。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、複数エリアでも料金の考え方は同じです。エリアごとに範囲を指定していただければ、それぞれの費用を算出します。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。拠点ごとの納品と、全体を集計した形の両方をご用意できます

所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

依頼から納品までの流れ

目的と対象エリアのヒアリング
何のためのリストか、どのエリアを対象にするかを確認します。複数エリアの場合、比較を前提とした判定基準と記録項目を設計します。
エリアごとの範囲設定
地域の性格に合わせて、町丁目・集落・区といった単位で範囲を決めます。拠点ごとの処理能力もうかがいます。
現地での実地調査
各エリアで、同一の基準に沿って外観から状態を確認・記録します。時期を揃えた実施にも対応します。
地番の特定と集計
調査結果をもとに地番を割り出し、エリア別・地区別に集計します。
納品
拠点ごとの地図・リストと、全体を集計した表の両方をご用意できます。

複数エリアを扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 拠点ごとにバラバラに発注する/基準が揃わず、エリア同士を比べられません
  • 範囲の切り方まで統一する/地域によって住宅の集まり方が違います。かえって精度が落ちます
  • 全拠点に同じ件数を配る/処理能力は拠点ごとに違います
  • 調査時期を揃えない/季節が違えば見え方が変わり、比較の前提が崩れます
  • 件数だけで優劣を判断する/密度も建て方の構成も地域で違います

よくあるご質問

複数の県をまたいで調査できますか?

できます。47都道府県に自社ネットワークがあるため、県境をまたぐ範囲でも同一の基準・フォーマットで実施できます。エリアによって調査の粒度が変わることはありません。

拠点ごとに分けて納品してもらえますか?

できます。各拠点向けに地図とリストを分けて納品し、あわせて全体を集計した表もご用意できます。本部と現場でそれぞれ必要な形が違う場合にご相談ください。

エリアごとに条件を変えられますか?

調査範囲の切り方はエリアごとに変えることをおすすめしています。ただし判定基準と記録項目は揃えたほうが、後から比較できる形になります。どこを揃えてどこを変えるか、ご相談のうえ設計します。

時期を揃えて実施できますか?

できます。ただし積雪のある地域を含む場合は、雪のない時期にまとめて実施することをおすすめしています。年間のどの時期に行うかをあらかじめ決めておくと、継続もしやすくなります。

自治体の広域連携でも使えますか?

対応しています。隣接する自治体で同じ基準の調査を行えば、自治体間の比較が可能になります。県内の分布として整理することもできます。

まとめ

複数エリアで調査するとき、拠点ごとに別々に発注すると比較ができません。判定基準も記録項目も納品形式も揃っていないためです。件数だけを並べても、意味のある判断にはなりません。

揃えるのは判定基準・記録項目・納品形式・調査時期の4つ。一方、範囲の切り方は地域ごとに変えてください。市街地なら町丁目、中山間地区なら集落、政令市なら区からさらに町丁目へ。

地域差は大きいものです。住宅の密度は香川263戸/㎢に対し鳥取75戸/㎢で3.5倍。建て方も東京は共同住宅71.6%、秋田は一戸建79.4%と正反対。同じ範囲設定を全エリアに当てはめると、拾える件数が大きくばらつきます

現実的なのは、基準は本部で決め、範囲は現場が指定する形です。これなら比較可能性を保ちつつ、現場の判断も活かせます。まずは1〜2エリアで実施し、中身を確認してから広げてください。

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