空き家調査を継続する設計|2回目以降で変わることと前回比較

空き家調査を継続する設計|2回目以降で変わることと前回比較

空き家調査を1回だけ実施するのか、数年おきに続けるのか。この違いは、発注の段階で設計に反映しておく必要があります

1回きりであれば、その時点で使える形になっていれば足ります。しかし継続するなら、前回と比較できる形でなければ意味がありません。件数が増減しても、実態が変わったのか基準が変わったのか区別できなくなります。

この記事では、継続調査を前提とした設計と、2回目以降で何が変わるのかを整理します。

この記事の結論

  • 比較が成立する条件は範囲・基準・記録項目・時期の4つを揃えること
  • 基準を変えると比較そのものが壊れる。変える場合は記録に残す
  • 2回目以降は前回の記録をもとに条件を絞れる
  • 前回比較で分かるのは、増減だけでなくどの物件が動いたか
  • 自治体は対策の効果検証に、民間は次の調査範囲の判断に使える

1回目と2回目で何が違うか

項目 1回目 2回目以降
範囲の決め方 統計と地図から推測する 前回の実績から選べる
条件の設定 想定で決める 前回の結果を踏まえて調整できる
件数の見通し 正確には分からない おおよそ読める
分かること その時点の状況 状況の変化
判断材料 統計データ 自社の実績データ

最も大きい違いは、判断材料が統計から自社の実績に変わることです

統計は市区町村単位の推計値ですが、自社の調査結果は町丁目単位の実数です。2回目以降は、この情報をもとに範囲と条件を決められます。

1回目の結果で条件を見直せる

1回目を実施すると、想定とのずれが見えてきます。

気づくこと 2回目での調整
共同住宅を拾いすぎた 戸建てに限定する
想定した築年数と合わなかった 年代の想定を変える
状態の記録が粗すぎた 段階を増やす
件数が処理能力を超えた 範囲を狭める
逆に少なすぎた 範囲を広げる、条件を緩める

これらは1回目の結果を見て初めて分かります。だからこそ、初回は1〜2地区で実施することをおすすめしています。

比較が成立する4つの条件

前回と比較するには、次の4つを揃える必要があります。

揃えるもの 揃えないとどうなるか
調査範囲 範囲が違えば件数の増減に意味がない
判定基準 基準が違えば、実態の変化と区別できない
記録項目 項目が違えば集計の形が揃わない
調査時期 季節が違えば雑草や積雪の影響を受ける

基準を変えると比較が壊れる

4つのうち、最も影響が大きいのが判定基準です。

たとえば1回目は「郵便受けの滞留」を重視し、2回目は「カーテンの有無」を重視したとします。件数が10%増えたとして、それが実態の変化なのか基準の変化なのか分かりません

状態の段階数を変えた場合も同じです。3段階から5段階にすれば、集計の形が変わって前回と並べられなくなります。

基準は文書として残し、2回目もそのまま使う。変える必要があるなら、変更した内容と理由を記録に残してください。そうすれば後から解釈できます。

調査時期を揃える

季節の影響は想像以上に大きくなります。

時期 影響
夏場 雑草が伸び、放置に見えやすい
冬場(積雪地) 屋根も敷地も雪に覆われ、判断材料が減る
落葉期 樹木の状態が見えやすくなる

同じ時期に実施するほうが、比較しやすくなります。積雪のある地域では、雪のない時期に固定することをおすすめしています。

前回比較で何が分かるか

2回の調査結果を並べると、単純な増減以上のことが見えます。

分かること 使い道
件数の増減 エリア全体の傾向を把握する
新たに空き家になった物件 比較的新しい空き家として優先する
空き家でなくなった物件 売却・入居・取り壊しのいずれかが起きた
状態が悪化した物件 対応の優先順位を上げる
状態が変わらない物件 管理されている可能性がある

「どれだけ増えたか」より「どの物件が動いたか」のほうが実務的です

新しく空き家になった物件は狙い目

前回はなかったのに今回は空き家になっている。この物件は、比較的最近空き家になったと分かります

放置期間が短ければ、建物の状態も良く、相続登記が済んでいる可能性も高くなります。所有者にたどり着ける確率も上がります

神戸市の例では、兵庫区の空き家が5年で80.3%増えた一方、腐朽・破損があるのは4.3%だけでした。新しく空き家になった住宅が多い地区では、状態が良いままの物件が残っています

取り壊しは想定より速い

総住宅数が減少している地域では、取り壊しが新築の供給を上回って進んでいます。高知県は5年間で総住宅数が1.0%減、長崎県も0.7%減。

前回のリストに載っていた物件が、すでに更地になっていることがあります。「空き地(更地)」を同時に指定しておけば、この変化も地図上で追えます。

再調査のタイミング

何年おきに実施すべきか。目的によって変わります。

立場 目安 判断材料
不動産会社 1〜2年 前回の反応率、取り壊しの進み方
リフォーム・外壁塗装会社 3〜5年 塗り替え周期、施工実績の積み上がり
自治体 計画の改定に合わせる 空家等対策計画の期間

短ければよいというものではありません。前回のリストを使い切っていなければ、再調査より一巡が先です。

再調査を検討すべき状況

  • 前回から1年以上経過し、リストを一巡し終えた
  • 反応率の高かったエリアで、取りこぼしがないか確認したい
  • 前回とは違う調査項目を追加したい
  • 自治体で、対策の効果を前回と比較したい

調査項目の追加だけであれば、範囲を絞って実施することもできます。前回の結果から反応率の高かった地区に限定する、といった形です。

前回と同じ基準で実施できます。

前回の仕様をお示しいただければ、比較できる形で設計します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

0120-107-209

受付 10:00〜20:00/年中無休

無料見積り相談はこちら

目的によって、継続の意味が変わる

立場 継続で得られること 残しておくべき記録
不動産会社 反応率の高いエリアが分かる エリア別の発送数・反応数・成約数
リフォーム・外壁塗装会社 未施工層の減り方が分かる 自社の施工実績を地図に落とす
自治体 対策の効果を検証できる 年度ごとの件数集計、判定基準

自治体は効果検証の材料になる

空家等対策計画の改定時には、前回からの変化を示す必要があります。同じ基準で調査していれば、件数の増減がそのまま実態の変化を表します

ただし基準が変わっていれば、この説明は成立しません。委託先が変わっても再現できる仕様であることが望ましい形です

実態把握は国の補助事業の対象となる場合があります。空き家対策総合支援事業では、空家等対策計画の策定等に必要な空き家の実態把握が補助対象に含まれています。補助率や要件は年度によって変わるため、国土交通省の資料および都道府県の担当部署でご確認ください

民間は自社の実績が最大の資産になる

エリア別の反応率、成約した物件の特徴、返送率。これらは統計からは出てこない、自社だけが持つ情報です

A地区の反応率がB地区より明らかに高ければ、次はA地区の周辺を調査する。この判断は他社にはできません。回数を重ねるほど、差は開いていきます。

記録の残し方

継続を前提とするなら、次のものを残しておいてください。

残すもの 理由
判定基準の文書 次回も同じ基準で実施するため
調査範囲の地図 どこを調査済みか分かるため
件数集計 前回比較の基礎になる
調査を実施した時期 季節の影響を考慮するため
自社の接触記録 次の範囲を決める材料になる

とくに調査範囲の記録は忘れられがちです。担当者が変われば、どこを調査済みか分からなくなります。重複や漏れの原因になります。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、2回目も1回目と同じ範囲であれば、費用の考え方は同じです。範囲を絞れば費用は下がります。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。前回比較を前提とするなら、件数集計を毎回同じ形式で残しておくことをおすすめします

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。複数のエリアを同じ基準で調査すれば、エリア間の比較も可能になります

依頼から納品までの流れ

目的と継続性のヒアリング
1回きりか継続かを確認したうえで、対象範囲・調査項目・判定基準を決めます。継続する場合は、次回も再現できる形で設計します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。前回の範囲がある場合はそれに合わせます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、指定された基準に沿って外観から状態を確認・記録します。
地番の特定と集計
調査結果をもとに地番を割り出し、地区別・状態別に集計します。前回の集計形式に合わせることもできます。
納品
地図・リスト・集計表の形で納品します。判定基準もあわせて記録として残します。

継続するときの注意点

よくあるつまずき

  • 判定基準を変えて実施する/件数が増減しても、実態の変化か基準の変化か区別できません
  • 調査時期を揃えない/雑草や積雪の影響で見え方が変わります
  • 調査範囲を記録しない/どこを調査済みか分からなくなり、重複や漏れが生じます
  • 前回のリストを使い切る前に再調査する/一巡が先です
  • 集計形式を毎回変える/並べて比較できなくなります

よくあるご質問

前回と同じ基準で実施できますか?

できます。前回の仕様や集計形式をお示しいただければ、それに合わせて設計します。他社が実施した調査であっても、基準が明確であれば対応可能です。

何年おきに実施するのがよいですか?

目的によります。不動産の仕入れであれば1〜2年、リフォームの提案であれば3〜5年、自治体であれば計画の改定に合わせる形が目安です。ただし前回のリストを使い切っていなければ、再調査より一巡が先です。

前回から変化した物件だけを抽出できますか?

前回の調査結果をお持ちであれば、今回の結果と突き合わせる形で整理できます。新たに空き家になった物件、空き家でなくなった物件を区別してご報告します。

範囲を絞って再調査できますか?

できます。前回の結果から反応率の高かった地区に限定する、といった形で範囲を設定できます。費用は面積に対する従量制のため、範囲が狭ければ費用も下がります。

調査時期は毎回同じにすべきですか?

そのほうが比較しやすくなります。雑草の状況は季節で大きく変わり、積雪期には判断材料が減ります。とくに積雪のある地域では、雪のない時期に固定することをおすすめしています。

まとめ

1回だけ実施するのか、続けるのか。この違いは発注の段階で設計に反映しておく必要があります

比較が成立する条件は4つ。範囲・基準・記録項目・時期を揃えることです。とくに判定基準が変われば、件数が増減しても実態の変化か基準の変化か区別できません。

そして2回目以降は、判断材料が変わります。統計の推計値ではなく、自社の調査結果という町丁目単位の実数から範囲と条件を決められます。

前回比較で分かるのは、単純な増減だけではありません。新たに空き家になった物件、空き家でなくなった物件、状態が悪化した物件。とくに新しく空き家になった物件は、状態が良く所有者にもたどり着きやすい層です。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げてください。

関連記事

まず1地区から、現地データをお出しします。

不動産の仕入れ、施工提案先の発掘、自治体の実態把握、それぞれに合わせた調査項目をご提案します。

0120-107-209

受付 10:00〜20:00/年中無休

無料見積り相談はこちら

反響を生む配布設計をプロがご提案します

反響を生む配布設計

プロがご提案します

お気軽にご相談ください

お気軽にどうぞ 無料見積もり相談