地方と都市部で空き家調査はどう変わるか|設計が逆になる点

空き家調査の設計は、その地域が都市部か地方かで大きく変わります。
住宅の密度、建て方の構成、家賃の水準、所有者の居住地。いずれも正反対に近い差があります。同じ条件を当てはめれば、どちらかで成果が出ません。
この記事では、5つの観点から違いを整理します。自社の営業エリアがどちらの性格を持つかを確認したうえで、設計してください。
この記事の結論
- 住宅の密度は香川263戸/㎢、鳥取75戸/㎢と3.5倍の差
- 建て方は東京は共同住宅71.6%、秋田は一戸建79.4%
- 家賃水準が賃貸活用の成否を分ける
- 所有者の居住地も違う。福井87.1%、神奈川51.8%が同一市区町村内
- 範囲の切り方は町丁目か集落かで変える
記事の目次
①住宅の密度
費用は面積に対する従量制です。同じ予算でも、確認できる建物の数が地域によって変わります。
| 県 | 1㎢あたりの住宅数(単純計算) |
|---|---|
| 香川県 | 約263戸 |
| 全国平均 | 約172戸 |
| 徳島県 | 約94戸 |
| 鳥取県 | 約75戸 |
総住宅数を面積で割った単純計算です。香川県と鳥取県で3.5倍の差があります。
率が高くても密度が低いことがある
空き家率が全国1位の徳島県でも、密度は全国平均を下回ります。率の高さと、面積あたりの効率は別の話です。
率が高い県では歩留まりが上がりますが、1件見つけるまでに歩く距離は長くなります。この2つは同時に成立しないことがあります。
面積の大きさそのものが違う
市の面積は自治体によって大きく異なります。
| 比較対象 | 面積 |
|---|---|
| 高山市(岐阜県) | 約2,178㎢ |
| 香川県(全体) | 約1,877㎢ |
1つの市が1つの県より広いという状況があります。地方では、市全域を指定すると山林を含む面積がそのまま費用に乗ります。
一方、都市部では市域が狭くても建物の数が多いため、区や町丁目まで下げる必要があります。
絞り込む理由が、地方と都市部で逆になります。地方は面積を減らすため、都市部は件数を絞るためです。
②建て方の構成
拾えるものが変わります。
| 県 | 特徴 |
|---|---|
| 東京都 | 共同住宅が71.6% |
| 沖縄県 | 共同住宅が60.9% |
| 大阪府 | 共同住宅が57.4% |
| 秋田県 | 一戸建が79.4% |
| 山形県 | 一戸建が76.1% |
| 青森県 | 一戸建が75.3% |
「戸建てに限定してください」という指定の意味が変わります。
| 地域 | 戸建てに限定した場合 |
|---|---|
| 一戸建が中心(東北など) | ほとんど減らない。条件指定の意味は小さい |
| 共同住宅が中心(都市部) | 母数が大きく減る。範囲を広げる必要がある |
都市部は区でも粗すぎる
大阪市では、一戸建の割合が生野区45.0%から浪速区3.7%まで12倍以上の差があります。浪速区96.1%、中央区95.3%、西区95.1%、北区94.3%では共同住宅が9割を超えます。
こうした区では、戸建ての調査はほぼ成立しません。区を選び、さらに町丁目まで下げる必要があります。
③空き家の中身
同じ「空き家」でも、種類の構成が違います。
神戸市の例では、区によって大きく異なります。
| 区 | 賃貸用 | 放置型 |
|---|---|---|
| 西区 | 71.9% | 20.6% |
| 北区 | 40.4% | 50.8% |
西区では7割が募集中の賃貸物件ですが、北区では放置型が半分を占めます。
地方は別荘に注意する
一方、地方では二次的住宅(別荘)が混ざります。全国では総住宅数の0.6%にすぎませんが、長野県では5.4%、山梨県では4.0%を占めます。
長野県では空き家の26.9%が二次的住宅です。これらは管理されているため、調査対象になりません。
都市部では共同住宅、地方では別荘。除外すべきものが違います。
④家賃水準
賃貸活用が成立するかを分けます。
| 地域 | 家賃水準 | 影響 |
|---|---|---|
| 大阪市 | 1か月6万1,704円 | 賃貸として成立しやすい |
| 奈良県 | 1か月5万1,996円で全国9位 | 賃貸市場が空き家を吸収する |
| 和歌山県 | 1畳当たり2,152円で全国44位 | 貸す動機が働きにくい |
改修に数百万円かかっても、家賃が低ければ回収に何年もかかります。合理的に判断すれば、貸さないという結論になります。
同じ近畿でも、奈良県と和歌山県では構造が正反対です。「貸せない地域」があるのは、所有者の意欲の問題ではありません。
提案の内容が変わる
| 地域 | 現実的な提案 |
|---|---|
| 家賃が取れる | 賃貸活用、改修して流通 |
| 家賃が低い | 売却、解体、当面の管理 |
地域の家賃水準を確認してから提案してください。
地域の性格に合わせて設計します。
範囲の切り方も除外するものも、都市部と地方で変えてご提案します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。
0120-107-209
受付 10:00〜20:00/年中無休
⑤所有者の居住地
接触の設計に関わります。住宅・土地統計調査では、世帯が持つ敷地以外の土地がどこにあるかが集計されています。
| 県 | 同一市区町村内 | 他県 |
|---|---|---|
| 福井県 | 87.1% | — |
| 鳥取県 | 86.4% | — |
| 全国平均 | 70.9% | 14.1% |
| 神奈川県 | 51.8%(全国46位) | 33.8%(全国2位) |
福井県では9割近くが同じ市区町村内ですが、神奈川県では半分程度です。
訪問が成立するかが変わる
所有者が近くにいれば、接触の手段も増えます。逆に他県にいれば、郵送を前提とした設計が必要です。
ただし空き家そのものには人が住んでいないため、物件を訪ねても所有者には会えません。この点はどの地域でも共通です。
登記情報に電話番号は記載されないため、公開情報だけで接触するならDMが実質的な手段になります。
範囲の切り方を変える
5つの違いを踏まえると、切る単位が変わります。
| 地域の性格 | 切る単位 | 理由 |
|---|---|---|
| 市街地 | 町丁目 | 建物が密集しており、細かく切れる |
| 政令市 | 区+町丁目 | 区でも粗すぎる |
| 地方都市 | 町丁目または地区 | 市街地と郊外で性格が違う |
| 中山間地区 | 集落 | 住宅がまとまって存在する |
地方では、住宅が集まっている集落単位で切るほうが効率的です。行政区画にこだわると、住宅のない範囲が含まれます。
除外するものが違う
| 地域 | 外すもの |
|---|---|
| 都市部 | 共同住宅が集積する区画 |
| 地方 | 山林、農地、河川敷、別荘地 |
費用は面積に対する従量制なので、除外する作業のほうが金額に効きます。
共通する部分もある
一方、地域によらず共通することもあります。
| 共通すること | 内容 |
|---|---|
| 統計は市区町村単位まで | 町丁目単位の空き家数は公表されない |
| 接道は現地でしか分からない | 統計にも登記にも記載されない |
| 建物の状態も現地でしか分からない | 統計は集計値のみ |
| 登記情報に電話番号はない | DMが実質的な手段になる |
| 判定基準を決めておく | 継続するなら次回との比較のため |
調査で埋める部分は、どの地域でも同じです。変わるのは範囲の設計と、除外するものです。
目的によって、影響の大きさが変わる
| 立場 | 都市部 | 地方 |
|---|---|---|
| 不動産会社(戸建て) | 母数が減る。区・町丁目を厳選する | 母数は多い。範囲の広さが課題 |
| 不動産会社(一棟) | 対象が多い | 対象が限られる |
| リフォーム・外壁塗装会社 | 持ち家の戸建てが集まる地区を選ぶ | 対象は多い。移動距離が課題 |
| 賃貸管理会社 | 共同住宅が多く成立しやすい | 家賃水準を確認する |
| 自治体 | 区単位での差が大きい | 集落単位で押さえる |
移動距離が費用に響く
地方では、対象が散らばっているため移動に時間がかかります。営業に回る際も同じです。
密度の低い地域では、1日に回れる件数が都市部より少なくなります。処理能力から逆算する際、この点も考慮してください。
自治体は全域が対象になる
実態調査では、市域全体を対象とすることが求められる場合があります。この場合、面積の大きい自治体ほど費用がかかります。
単年度で難しければ、年度ごとに範囲を分ける方法があります。ただし判定基準を変えると年度間の比較ができなくなるため、変更する場合は内容と理由を記録に残してください。
費用・期間・納品物
弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。
| 項目 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金 | 10,000㎡あたり 1,000円 |
| 追加調査(1項目) | 200円 |
| 登記情報取得(所有者事項) | 750円/件 |
| DM印刷・封入・発送代行 | 180円/通 |
面積に対する従量制のため、地域によらず料金の考え方は同じです。ただし同じ費用で拾える件数は、密度によって変わります。
納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。
弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。都市部と地方の両方を含む範囲でも、同じ基準で記録します。
依頼から納品までの流れ
何のためのリストかを確認したうえで、地域の性格に合わせた範囲の切り方をご提案します。面積に応じた見積りをご提示します。
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。地域によって粒度が変わることはありません。
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。
設計するときの注意点
よくあるつまずき
- 都市部と地方で同じ範囲設定をする/密度が3.5倍違うことがあります
- 空き家率だけでエリアを選ぶ/率が高くても密度が低い地域があります
- 都市部で市単位の発注をする/区でも粗すぎることがあります
- 地方で行政区画にこだわる/集落単位で切るほうが効率的です
- 除外するものを固定する/都市部は共同住宅、地方は山林・別荘です
よくあるご質問
地方でも都市部でも同じ料金ですか?
同じです。調査面積に応じた従量制のため、地域によって単価が変わることはありません。ただし住宅の密度によって、同じ費用で拾える件数は変わります。
集落単位での範囲指定はできますか?
できます。町丁目や字の単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。中山間地区では、住宅が集まっている範囲で切るほうが費用対効果が上がります。
都市部と地方を含む範囲でも同じ基準で調査できますか?
できます。47都道府県に自社ネットワークがあるため、同一の基準・フォーマットで実施できます。エリアによって調査の粒度が変わることはありません。
別荘地を除いて調査できますか?
できます。調査範囲の設定段階で別荘地を外す形で調整します。長野県・山梨県・静岡県など二次的住宅の多い地域では特におすすめしています。
範囲の切り方から相談できますか?
できます。目的と対象エリアをお伺いしたうえで、その地域の性格に合わせた切り方をご提案します。処理できる件数をお聞かせいただければ、それに見合う規模で設計します。
まとめ
空き家調査の設計は、都市部か地方かで変わります。
密度は香川263戸/㎢に対し鳥取75戸/㎢で3.5倍の差。建て方は東京が共同住宅71.6%、秋田が一戸建79.4%。家賃水準は賃貸活用の成否を分け、所有者の居住地も福井87.1%に対し神奈川51.8%と違います。
そして絞り込む理由が逆になります。地方は面積を減らすため、都市部は件数を絞るため。除外するものも、都市部は共同住宅、地方は山林・農地・別荘地と異なります。
一方、共通する部分もあります。町丁目単位の空き家数は公表されず、接道も建物の状態も現地でしか分からない。登記情報に電話番号はなく、DMが実質的な手段になる。調査で埋める部分は、どの地域でも同じです。
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