自治体の空き家実態調査の進め方|仕様の決め方と委託先の選び方

自治体の空き家実態調査の進め方|仕様の決め方と委託先の選び方

空き家の実態調査は、これまで「危険な建物を見つけること」が中心でした。倒壊のおそれがある、著しく衛生上有害である。そうした状態の建物を特定し、特定空家等として措置につなげる。調査の目的はそこにありました。

2023年12月に施行された改正空家法で、この前提が変わりました。「管理不全空家等」という区分が新設されたためです。放置すれば特定空家等になるおそれがある段階で、指導・勧告ができるようになりました。

つまり自治体が把握すべき対象が、危険な建物から、その手前の段階まで広がったということです。この記事では、実態調査の仕様をどう決めるか、委託先をどう選ぶかを整理します。

この記事の結論

  • 2023年改正で管理不全空家等が新設され、把握すべき対象が手前の段階まで広がった
  • 仕様書で決めるのは範囲・対象・判定基準・記録項目・納品形式の5つ
  • 判定基準を先に決めないと、次回調査との比較ができなくなる
  • 所有者の把握には、自治体だけが使える情報がある。現地調査と役割が違う
  • 実態把握は国の補助事業の対象になる場合がある

法改正で、調査の役割が変わった

2023年12月13日に施行された改正空家法の主な内容は、次のとおりです。

改正項目 内容
管理不全空家等の新設 放置すれば特定空家等になるおそれがある空家等に対し、指導・勧告が可能に。勧告を受けると住宅用地特例が解除される
空家等活用促進区域 市区町村が区域と指針を定めることで、接道規制や用途規制の合理化が可能に
空家等管理活用支援法人 空き家の管理・活用に取り組むNPO法人や社団法人等を支援法人として指定できる
所有者把握の円滑化 電力会社やガス会社等に対する情報の請求ができる旨が明確化された
財産管理人の選任請求権 利害関係の有無にかかわらず、市区町村長が裁判所に請求できる
緊急代執行制度 事前手続きを経るいとまがないときの代執行が可能に

このうち実態調査に直接影響するのが、管理不全空家等の新設です。

「手前の段階」を把握する必要が生じた

従来の調査であれば、明らかに危険な建物を拾えば足りました。しかし管理不全空家等の判断には、その手前の状態を把握しておく必要があります

屋根や外壁がどの程度傷んでいるか、敷地の管理は行き届いているか、周辺への影響はどうか。段階的な記録がなければ、どの建物が「放置すればおそれがある」に該当するかを判断できません

調査の仕様を組むときは、この点を踏まえて記録項目を設計する必要があります。

仕様書で決める5つのこと

実態調査を委託する際、仕様書で明確にしておくべき項目は次の5つです。

①調査範囲

市域全体か、特定の地区か。全域を対象とする場合でも、住宅がほとんどない山林等を含めるかどうかで費用は変わります。

調査費用は面積に応じた従量制が一般的です。行政区分でそのまま切るのではなく、住宅の集まり方に合わせて範囲を設定するほうが、予算に対する精度は上がります。

②調査対象

何を空き家として拾うかを定義します。戸建てのみか、共同住宅を含めるか。共同住宅を含める場合、1棟すべてが空きの建物だけか、一部空室も対象とするかで件数が大きく変わります。

あわせて、空き地や倉庫・工場などを対象に含めるかも決めておきます。

③判定基準

最も重要な項目です。何をもって「空き家」と判定するかを、事前に文書化しておく必要があります。

判定材料 記録の例
郵便受け 投函物の滞留、テープ等での封鎖
窓・カーテン カーテンの有無、破損、雨戸の閉鎖
庭木・雑草 手入れの状況、繁茂の程度
電気・ガスメーター 設置状況、撤去の有無
建物の状態 屋根・外壁の破損、傾き、部材の落下
敷地の状況 放置物、不法投棄、動物の侵入痕跡

基準があいまいなまま委託すると、調査員によって判断がばらつきます。次回調査で件数が増減しても、実態が変わったのか基準が変わったのか区別できなくなります

④記録項目

状態をどの粒度で分類するかを決めます。単に「空き家である/ない」の2区分では、管理不全空家等の判断材料になりません。

状態を段階に分けて記録しておけば、優先度の高い建物から順に対応できます。分類の段階数は、その後の運用に合わせて設定してください。

⑤納品形式

形式 用途
地図への転記 分布の把握、現地対応の指示、庁内での共有
住所・地番リスト 所有者調査、通知の発送
件数集計 計画への反映、議会説明、次回調査との比較

実態調査の場合、3つすべてを受け取る形が一般的です。用途がそれぞれ違うためです。

継続性を仕様に組み込む

実態調査は1回で終わるものではありません。数年おきに実施し、変化を追うことになります。

そのとき効いてくるのが判定基準と記録項目の一貫性です。前回と同じ基準・同じ形式で調査していれば、件数の増減がそのまま実態の変化を表します。基準が変わっていれば、比較そのものが成立しません。

仕様書を作る段階で、「次回も同じ基準で実施できるか」を確認してください。委託先が変わっても再現できる仕様であることが望ましい形です。

所有者の把握は、調査とは別の工程

実態調査で建物を特定した後、所有者を調べる工程があります。ここは自治体と民間で使える手段が違います。

手段 自治体 民間事業者
登記情報 利用できる 利用できる
課税情報の内部利用 空家法に基づき利用できる 利用できない
電力・ガス会社等への情報請求 2023年改正で明確化された 利用できない
住民票・戸籍 事務の範囲で利用できる 利用できない

自治体には、民間にはない手段があります。所有者の特定という点では、外部委託の必要性は民間ほど高くありません。

逆にいえば、外部に委託する価値があるのは現地調査の部分です。職員が全域を歩いて記録するには相当な人員と時間が必要になります。ここを外部に出し、所有者の特定と措置は庁内で行う。この分担が現実的です。

目的によって、仕様は変わる

目的 重視する項目 仕様で指定すること
空家等対策計画の策定・改定 全域の網羅性、件数の正確性 市域全体を対象とし、集計形式での納品を求める
管理不全空家等の把握 建物の状態の段階的な分類 状態別の記録項目を細かく設定する
活用の促進・移住定住施策 活用可能な物件の抽出 状態の良い空き家を区別できる基準を設ける
防災・防犯の重点地区の選定 分布と周辺への影響 地図への転記と、地区別の集計を求める

目的が複数ある場合、1回の調査で複数の記録項目を指定すれば対応できます。調査項目を追加する形になるため、別々に発注するより費用は抑えられます。

仕様書の作成段階からご相談いただけます。

判定基準や記録項目の設計、次回調査との比較を前提とした仕様についてもご提案します。
目的と対象範囲を伺ったうえで、費用とスケジュールをご提示します。

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予算の確保について

空き家の実態把握は、国の補助事業の対象となる場合があります。空き家対策総合支援事業では、空家等対策計画の策定等に必要な空き家の実態把握が補助対象に含まれています。

補助率や要件は年度によって変わり、事業ごとに条件も異なります。活用を検討される場合は、国土交通省の資料および都道府県の担当部署でご確認ください

また、調査費用は面積に応じた従量制のため、予算額から逆算して調査範囲を設定することもできます。「今年度はこの地区、次年度は隣接地区」という形で、複数年度に分けて全域を押さえる進め方も可能です。

委託先を選ぶときの確認事項

確認すること なぜ必要か
調査員が現地を歩くか 地図やデータのみの机上調査では、実態は把握できない
判定基準を共有できるか 基準が不明確だと、次回との比較ができない
状態別の記録に対応できるか 管理不全空家等の判断に段階的な記録が必要
納品形式を選べるか 計画・現地対応・議会説明で必要な形が異なる
範囲を細かく指定できるか 予算に合わせた範囲設定ができる
継続実施に対応できるか 次回も同じ基準で実施できるか

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。広域連携や、複数自治体での共同実施にも対応します。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査項目は、空き家(戸建て)のほか、空き地、古アパート、古家(居住中)、駐車場、倉庫・工場などから選べます。目的に合わせて組み合わせてください。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。所有者への通知が必要な場合、印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
計画の策定・改定、管理不全空家等の把握、活用施策など、目的を確認したうえで対象範囲・調査項目・判定基準を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。町丁目・集落単位での区切りにも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。指定された判定基準に沿って、状態別に分類します。
地番の特定と集計
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、地区別・状態別に集計します。
納品
地図・リスト・集計表の形で納品します。次回調査との比較を前提とした形式でもご用意できます。

仕様を決めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 判定基準を仕様に書かない/調査員によって判断がばらつき、次回との比較ができなくなります
  • 「空き家である/ない」の2区分にする/管理不全空家等の判断には、段階的な記録が必要です
  • 市域全体を一律に指定する/住宅のない範囲も費用に乗ります。住宅の集まり方で範囲を切ってください
  • 納品形式を1つに絞る/計画・現地対応・議会説明では必要な形が違います
  • 次回調査を想定しない仕様にする/基準が変われば、経年比較が成立しません

よくあるご質問

仕様書の作成段階から相談できますか?

できます。目的をお伺いしたうえで、判定基準や記録項目、納品形式についてご提案します。次回調査との比較を前提とした仕様設計にも対応します。

状態別の分類はどこまで細かくできますか?

外観から確認できる範囲で、ご指定の区分に沿って記録します。何段階に分けるか、どの要素を判断材料とするかは、その後の運用に合わせて設定してください。

予算に合わせて範囲を決められますか?

できます。費用は面積に応じた従量制のため、予算額から逆算して調査範囲を設定できます。複数年度に分けて全域を押さえる進め方にも対応します。

前回の調査結果と比較できますか?

前回と同じ判定基準・記録項目で実施すれば、比較できる形で納品します。前回の仕様や集計形式をお示しいただければ、それに合わせて設計します。

複数の自治体で共同実施することはできますか?

対応しています。47都道府県に自社ネットワークがあるため、県境をまたぐ範囲でも同一の基準・フォーマットで実施できます。広域連携での調査にもご相談ください。

まとめ

2023年の法改正で管理不全空家等の区分が新設され、自治体が把握すべき対象は危険な建物から、その手前の段階まで広がりました。単に「空き家である/ない」を数えるだけでは、この判断はできません。

仕様書で決めるのは5つです。範囲・対象・判定基準・記録項目・納品形式。このうち判定基準が最も重要で、ここがあいまいだと次回調査との比較が成立しません。

所有者の把握については、自治体には民間にない手段があります。外部に委託する価値が高いのは、現地を歩いて記録する部分です。ここを外部に出し、所有者の特定と措置は庁内で行う。この分担が現実的です。

実態把握は国の補助事業の対象となる場合があります。予算額から範囲を逆算することもできますので、まずは目的と対象範囲をお聞かせください。

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