空き家対策で自治体と民間はどう連携するか|制度と接点の作り方

空き家対策で自治体と民間はどう連携するか|制度と接点の作り方

空き家対策は、自治体だけでは進みません。所有者への働きかけ、物件の流通、改修や解体の実務。いずれも民間の関与が必要です

一方、民間から見ても自治体との接点には価値があります。相談窓口を通じた案件、空き家バンクの運営、実態調査の受託。そして何より、その地域で何が起きているかを把握できます

2023年12月に施行された改正空家法では、空家等管理活用支援法人という仕組みも創設されました。この記事では、自治体と民間の接点を整理します。

この記事の結論

  • 連携の形は協定・窓口・バンク・支援法人・業務委託に整理できる
  • 2023年の改正で空家等管理活用支援法人が創設された
  • 所有者情報を民間に提供している市町村は320とされている
  • 自治体側は対象物件の把握がなければ連携も機能しない
  • 民間側はその自治体の計画を読むところから始める

連携の形は5つに整理できる

内容 関わる主体
専門家団体との協定 相談対応や専門家の紹介について協定を結ぶ 宅建業界団体、士業団体、建築関係団体など
相談窓口の運営 自治体の相談窓口に専門家が関わる 士業、不動産会社
空き家バンクの運営 掲載物件の仲介や現地対応 不動産会社
支援法人の指定 管理・活用に取り組む法人を市区町村が指定 NPO法人、社団法人など
業務委託 実態調査、通知の発送など 調査会社、印刷会社など

それぞれ性格が違います。協定や窓口は継続的な関係、業務委託は個別の案件という違いがあります。

空家等管理活用支援法人

2023年の改正空家法で創設された制度です。空き家の管理や活用に取り組むNPO法人や社団法人等を、市区町村が支援法人として指定できます

指定を受けた法人は、市区町村と連携して空き家対策に関わることになります。行政と所有者の間に立つ主体として想定されています。

想定される役割 内容
所有者からの相談への対応 管理や活用についての相談を受ける
情報提供 制度や支援策について伝える
市区町村との連携 施策の実施に協力する

指定の要件や役割の範囲は自治体によって異なります。関心がある場合は、所管する市区町村の窓口にご確認ください。

連携の前提は、対象を把握していること

どの形の連携でも、「どこにどういう空き家があるか」が分かっていなければ機能しません

相談窓口を設けても、待っているだけでは相談は来ません。空き家バンクを作っても、登録されなければ物件は載りません。アットホーム版の全国版空き家バンクの掲載件数は1万1,117件。全国の放置型385万6,000戸と比べると、桁が3つ違います。

実態調査で所在と状態を把握しておけば、所有者に働きかける候補が抽出できます。連携の仕組みは、対象があって初めて動きます。

所有者情報の外部提供

自治体が把握した空き家所有者の情報を、民間事業者に提供する取り組みもあります。

国土交通省は2023年12月に「空き家所有者情報の外部提供等に関するガイドライン」を公表しています。同ガイドラインによれば、空き家所有者情報を民間事業者等に提供している市町村は320とされています。

項目 内容
実施している市町村 320(ガイドライン公表時点)
前提 所有者の同意など一定の手続き
提供先 民間事業者等

すべての自治体で受けられるものではありません。また提供には所有者の同意など手続きが必要です。

制度としての可能性はありますが、汎用的な手段ではないという位置づけです。

自治体側から見た連携

自治体にとって、民間との連携は人員と専門性の補完になります。

課題 連携で補えること
実態の把握が進まない 調査の外部委託
相談に専門的な対応ができない 士業・不動産会社との連携
バンクに物件が集まらない 所有者への働きかけ、現地対応
活用の担い手がいない 支援法人の指定

調査の委託は現地部分に価値がある

自治体には、民間にはない手段があります。課税情報の内部利用、電気・ガス等の供給事業者への情報提供の求め。所有者の特定という点では、自治体のほうが有利です。

したがって外部委託の価値は、現地を歩いて状態を記録する部分にあります。人員を割かずに実態を把握できることが利点になります。

計画と調査を連動させる

空家等対策計画には、法定の記載事項として「空家等の調査に関する事項」が含まれます。実態把握の方針を計画に書く必要があるということです。

そして計画で活用の促進を掲げるなら、状態の良い空き家も把握できる設計にしておく必要があります。老朽危険家屋の把握だけでは、活用の候補が拾えません。

民間側から見た連携

民間にとって、自治体との接点には複数の意味があります。

立場 接点の作り方
不動産会社 業界団体を通じた協定、空き家バンクへの関与
士業 相談窓口への参加、専門家紹介の枠組み
空き家管理会社 支援法人の指定、管理業務の受託
解体・改修会社 補助制度の登録業者、緊急時の対応

まず計画を読む

自治体との接点を作りたいなら、その自治体の空家等対策計画を読むところから始めてください

計画には対象地区、施策の方向、実施体制が書かれています。何をしようとしているかが分かれば、どこで関われるかも見えます

国土交通省の資料によれば、2022年度末までに全国1,741市区町村のうち1,450市区町村で空き家対策に関する計画が策定されています。法定協議会は992市区町村で設置されています。

計画は自治体のウェブサイトで公開されているのが一般的です。

登録業者の要件を確認する

解体や改修の補助制度では、市内の登録業者による施工を条件とする例があります

登録していなければ、補助を使う工事は受注できません。営業エリアに複数の自治体が含まれる場合、それぞれで要件を確認しておく必要があります

自治体の実態調査、承ります。

計画の対象地区や記録項目に合わせて、仕様の設計からご相談いただけます。
目的と対象範囲を伺ったうえで、費用とスケジュールをご提示します。

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広域での連携もある

単独の自治体では体制が組めない場合、近隣自治体との共同実施という選択肢があります。

利点
複数自治体での共同調査 同じ基準で実施でき、自治体間の比較ができる
県が主導する取り組み 県内の分布として整理できる
相談窓口の共同運営 専門家の確保がしやすくなる

同じ基準で調査すれば、自治体間の比較が可能になります。県内でどの市町村に対象が集中しているかが分かれば、施策の配分にも使えます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

補助制度の活用

実態把握は国の補助事業の対象となる場合があります。空き家対策総合支援事業では、空家等対策計画の策定等に必要な空き家の実態把握が補助対象に含まれています。

補助率や要件は年度によって変わり、事業ごとに条件も異なります。活用を検討される場合は、国土交通省の資料および都道府県の担当部署でご確認ください

複数年度に分ける方法

単年度で市域全体を調査するのが難しい場合、年度ごとに範囲を分ける方法があります。

1年目に優先度の高い地区、2年目に隣接地区、3年目に残りの範囲。予算を分散できるほか、1年目の結果を見て条件を調整できます

ただし判定基準を変えると年度間の比較ができなくなるため、変更する場合はその内容と理由を記録に残してください

調査でできること・できないこと

できること できないこと
空き家の所在と状態の記録 該当区分の判断
状態別の分類と集計 所有者の意向の確認
接道の状況の記録 耐震性の判定
地番の割り出し 戸籍をたどる相続人調査
登記情報からの所有者事項の取得 庁内情報を用いた調査

判断は行政が行うものです。調査で提供できるのは、その材料になる記録までです。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、予算額から逆算して調査範囲を設定できます。基本料金が10,000㎡あたり1,000円(税別)であれば、予算100万円で約10平方キロメートルが目安です。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。計画への反映や議会説明を想定するなら、件数集計もあわせてご用意します

所有者への通知が必要な場合、登記情報の取得から印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

依頼から納品までの流れ

目的と計画内容のヒアリング
計画の対象地区や対象とする空家等の種類を確認したうえで、調査範囲・調査項目・判定基準を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。町丁目・集落単位での区切りにも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、指定された基準に沿って外観から状態を確認・記録します。
地番の特定と集計
調査結果をもとに地番を割り出し、地区別・状態別に集計します。
納品
地図・リスト・集計表の形で納品します。次回調査との比較を前提とした形式でもご用意できます。

連携を進めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 対象を把握しないまま仕組みを作る/窓口もバンクも、対象があって初めて動きます
  • 他の自治体の事例をそのまま当てはめる/制度も体制も自治体ごとに違います
  • 所有者情報の提供を前提に計画する/実施している市町村は限られます
  • 登録業者の要件を確認しない/補助を使う工事が受注できないことがあります
  • 判定基準を年度ごとに変える/比較ができなくなります

よくあるご質問

自治体の計画はどこで読めますか?

各自治体のウェブサイトで公開されているのが一般的です。「〇〇市 空家等対策計画」で検索するか、所管部署にお問い合わせください。策定していない自治体もあります。

所有者情報を自治体から提供してもらえますか?

国土交通省がガイドラインを公表しており、民間事業者等へ情報提供を行っている市町村もあります。ただし所有者の同意など手続きが必要で、すべての自治体で受けられるものではありません。所管の窓口にご確認ください。

複数の自治体で共同実施できますか?

対応しています。47都道府県に自社ネットワークがあるため、県境をまたぐ範囲でも同一の基準・フォーマットで実施できます。同じ基準で調査すれば、自治体間の比較も可能になります。

仕様書の作成段階から相談できますか?

できます。目的をお伺いしたうえで、判定基準や記録項目、納品形式についてご提案します。次回調査との比較を前提とした仕様設計にも対応します。

複数年度に分けて実施できますか?

できます。年度ごとに範囲を分け、段階的に全域を押さえる進め方に対応します。ただし基準を変更すると年度間の比較ができなくなる点にご注意ください。

まとめ

自治体と民間の連携は、協定・窓口・バンク・支援法人・業務委託の5つに整理できます。2023年の改正空家法では、空家等管理活用支援法人という仕組みも創設されました。

ただしどの形でも、前提は同じです。「どこにどういう空き家があるか」が分かっていなければ機能しません。窓口を設けても待っているだけでは相談は来ず、バンクを作っても登録されなければ物件は載りません。

自治体側にとって、外部委託の価値は現地を歩いて状態を記録する部分にあります。所有者の特定については、課税情報の内部利用など民間にない手段があるためです。

民間側は、まずその自治体の計画を読むところから始めてください。1,741市区町村のうち1,450市区町村で計画が策定されているとされ、内容は公開されています。何をしようとしているかが分かれば、どこで関われるかも見えてきます。

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