分譲マンションの空き住戸をどう把握するか|統計では見えない部分

分譲マンションの空き住戸をどう把握するか|統計では見えない部分

全国の空き家900万1,600戸のうち、共同住宅は55.9%を占めます。そしてこの層は、空き家調査では範囲から外すよう案内されることが多い部分です。

理由は、共同住宅の空き家の約8割が賃貸用だからです。募集中の物件であり、仕入れの対象になりません。

ただし、この55.9%には分譲マンションの空き住戸も含まれています。そして統計は、分譲と賃貸を区別しません。実務ではまったく別の問題なのに、同じ数字の中に入っているということです。この記事では、その内訳と把握の難しさを整理します。

この記事の結論

  • 統計は共同住宅の空き家を分譲と賃貸で区別しない
  • 分譲マンションの空き住戸は管理組合の問題につながる
  • 外観から分譲か賃貸かの判別は難しい
  • 住戸単位の空室状況は現地調査でも分からない
  • 記録できるのは棟単位の外観と管理の状態まで

共同住宅の空き家の内訳

まず全体を確認します。

区分 全国の戸数 構成比
賃貸用の住宅 443万5,800戸 49.3%
その他の住宅(放置型) 385万6,000戸 42.8%
二次的住宅 38万3,500戸 4.3%
売却用の住宅 32万6,300戸 3.6%

このうち共同住宅は55.9%を占めます。京都市の資料では、共同住宅の空き家7万400戸のうち73.2%が賃貸用でした。

残りの約4分の1は、賃貸用以外です。放置型、売却用、二次的住宅が含まれます

統計に「分譲」という区分はない

住宅・土地統計調査の空き家4区分に、分譲か賃貸かという軸はありません。建て方(一戸建・長屋建・共同住宅)と、空き家の種類でしか分けられていません

つまり分譲マンションの空き住戸が全国にどれだけあるかは、この統計からは分かりません

実務では別の問題になる

賃貸アパートの空室と、分譲マンションの空き住戸では、問題の性質がまったく違います

賃貸の空室は、オーナー1人の経営問題です。募集条件を見直す、改修する、売却する。判断も対応も、オーナーが単独でできます

一方、分譲マンションの空き住戸は管理組合に影響します。管理費や修繕積立金が納められなくなる、総会に出席しない区分所有者が増える、連絡が取れなくなる。建物全体の維持に関わる問題です。

統計上は同じ「共同住宅の空き家」ですが、実務上の意味は正反対に近いということです。

分譲マンションで起きること

空き住戸が増えると、次のような影響が生じうるとされています。

影響 内容
管理費・修繕積立金の未納 所有者と連絡が取れなければ徴収が難しくなる
総会の運営 議決に必要な出席・議決権の確保が難しくなる
大規模修繕の合意形成 決議に必要な要件を満たしにくくなる
管理の質の低下 資金不足により必要な工事が先送りされる

1戸の空き住戸が、建物全体の維持に影響します。戸建ての空き家とは、この点が大きく違います。

相続で所在が分からなくなる

区分所有者が亡くなり、相続登記がされないまま放置される。この状態では、管理組合が誰に連絡すればよいか分かりません

2024年4月から相続登記が義務化され、2026年4月には住所等変更登記も義務化されました。長期的には改善に向かう変化ですが、施行前の分については猶予期間があります。

外観から何が分かるか

正直に整理しておきます。

分かること 分からないこと
棟の存在と規模 分譲か賃貸か
建物の外観の状態 住戸ごとの空室状況
共用部の管理状態 管理組合の状況
管理会社の表示の有無 管理費の徴収状況
おおよその築年数の見当 区分所有者の所在

分譲か賃貸かの判別は難しい

外観だけで分譲マンションか賃貸マンションかを見分けるのは、容易ではありません

手がかりになる要素はあります。募集看板が出ていれば賃貸の可能性が高い、駐輪場や共用部の使われ方に違いが出ることもある。ただしいずれも確実ではありません

確実に確認するには、登記情報を取得する必要があります。分譲であれば、住戸ごとに区分所有の登記がされています。

住戸単位の空室は分からない

郵便受けの名札、カーテンの有無、駐車場の使用状況。これらから空室の多さを推測することはできます

ただし推測であって実数ではありません。とくに分譲マンションでは、所有者が住んでいるか賃貸に出しているかの区別もつきません

調査で提供できる範囲

弊社の土地調査では、共同住宅を棟単位で調査・報告できます。「古アパート」という調査項目です。

記録できること 内容
棟の位置と規模 階数、おおよその戸数
外壁・外階段の状態 劣化の程度
共用部の管理状態 清掃の状況、放置物の有無
管理表示の有無 掲示板や看板の状況
地番 登記情報の取得につなげるための特定

住戸単位の情報は提供できません。分譲マンションの空き住戸を個別に把握したい場合、この調査では対応できないとお考えください。

提供できるのは、棟としてどういう状態にあるかまでです。

共同住宅は棟単位で記録します。

外壁・外階段の状態、共用部の管理状況まで押さえたリストをお出しします。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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自治体はマンション管理も所管する

自治体にとって、分譲マンションの問題は空き家対策とは別の枠組みで扱われます。

マンションの管理の適正化の推進に関する法律にもとづき、管理計画認定制度が2022年4月から始まっています。管理組合が作成した管理計画を、自治体が認定する仕組みです。

枠組み 対象
空家法 建物全体が空き家である場合
マンション管理適正化法 分譲マンションの管理

1棟すべてが空き家であれば空家法の対象になりえますが、一部の住戸が空いている状態は別の枠組みです

制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、所管する市区町村の窓口への確認をご案内ください

実態調査での扱いを決めておく

実態調査を発注する際、共同住宅をどう数えるかを仕様で決めておく必要があります

決めること 影響
1棟すべてが空きの場合のみ数えるか 件数が大きく変わる
一部の住戸が空いている棟も含めるか 外観からの判断になる
棟数で数えるか、戸数で数えるか 集計の意味が変わる

全国の空き家のうち55.9%は共同住宅です。含めるかどうかで、集計結果の意味が大きく変わります。

目的によって、扱いが変わる

立場 分譲マンションの扱い 調査で指定するとよい条件
不動産会社(戸建て) 範囲から外す 戸建てに限定する
不動産会社(区分所有) 対象になるが、調査では特定できない 他の情報源との組み合わせが必要
賃貸管理会社 賃貸物件が対象 「古アパート」+管理表示の記録
建設・リフォーム会社 大規模修繕の提案先 外壁・外階段の状態を記録
自治体 別の枠組みで扱う 実態調査での数え方を仕様で決める

区分所有の仕入れには向かない

正直に書きますが、分譲マンションの1住戸を仕入れる目的であれば、現地調査は向きません

住戸単位の空室が分からず、分譲か賃貸かの判別も難しいためです。他の情報源を使うほうが現実的です

現地調査が有効なのは、戸建ての空き家、棟単位での提案、そして統計にない対象(空き地、駐車場、倉庫・工場)です。

大規模修繕の提案には使える

一方、外壁や外階段の状態は外観から記録できます。築年数の経過した共同住宅を棟単位で拾い、状態の程度で分類する。

大規模修繕の提案先を探す場合、この形であれば調査が機能します。判断の主体は管理組合やオーナーになりますが、候補の抽出には使えます。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

「古アパート」を調査項目として指定いただければ、築年数の経過した共同住宅を棟単位で調査・報告します。外壁や外階段の状態、共用部の管理状況も記録項目に含められます。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象範囲・調査項目・共同住宅の数え方を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一棟ずつ状態を確認・記録します。共用部の管理状況もこの工程で記録します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

共同住宅を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 統計の共同住宅の空き家をすべて賃貸と考える/分譲マンションの空き住戸も含まれます
  • 外観から分譲か賃貸か判別できると考える/確実には見分けられません
  • 住戸単位の空室が分かると期待する/現地調査でも推測までです
  • 実態調査で数え方を決めない/棟数か戸数かで集計の意味が変わります
  • 空家法の枠組みだけで考える/分譲マンションの管理は別の法律で扱われます

よくあるご質問

分譲マンションの空き住戸を調べられますか?

調べられません。現地調査は公道から外観を確認する形のため、住戸単位の空室状況は分かりません。また分譲か賃貸かの判別も外観からは困難です。

棟単位での調査はできますか?

できます。「古アパート」を調査項目として指定いただければ、築年数の経過した共同住宅を棟単位で調査・報告します。外壁や外階段の状態、共用部の管理状況も記録できます。

大規模修繕の提案先を探せますか?

できます。外壁や外階段の劣化を記録項目に含めていただければ、状態の程度で分類したリストを納品します。判断の主体は管理組合やオーナーになりますが、候補の抽出には使えます。

実態調査で共同住宅をどう扱えばよいですか?

数え方を仕様で決めておくことをおすすめします。1棟すべてが空きの場合のみ数えるか、一部の住戸が空いている棟も含めるか。また棟数で数えるか戸数で数えるかによっても、集計の意味が変わります。

1棟すべてが空き家の建物は分かりますか?

外観から確認できる範囲で判断します。郵便受けやカーテン、共用部の状態などから総合的に見ますが、確実な判定ではありません。記録の粒度についてはご相談ください。

まとめ

全国の空き家の55.9%は共同住宅ですが、統計は分譲と賃貸を区別しません。実務ではまったく別の問題なのに、同じ数字の中に入っています。

賃貸の空室はオーナー1人の経営問題ですが、分譲マンションの空き住戸は管理組合に影響します。管理費や修繕積立金の未納、総会の運営、大規模修繕の合意形成。1戸の空き住戸が、建物全体の維持に関わります

そして現地調査には限界があります。外観から分譲か賃貸かの判別は難しく、住戸単位の空室状況も分かりません。記録できるのは、棟としてどういう状態にあるかまでです。

したがって分譲マンションの1住戸を仕入れる目的であれば、現地調査は向きません。現地調査が有効なのは、戸建ての空き家、棟単位での提案、そして統計にない対象です。用途を見極めたうえでご検討ください。

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