空き家が近隣に及ぼす影響|苦情が来る前に把握しておく方法

空き家が近隣に及ぼす影響|苦情が来る前に把握しておく方法

空き家の問題というと、建物の倒壊を思い浮かべる方が多いと思います。ただ実際に自治体へ寄せられる相談は、もっと手前の段階で発生します。

雑草が伸びて隣家に入り込む、樹木が道路にはみ出す、ごみが投げ込まれる。これらは建物が傷む前に表面化します

そして国土交通省のガイドラインは、管理不全空家等・特定空家等の判断について「空家等の物的状態」と「周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度等」を踏まえて総合的に判断するとしています。建物の状態だけでは決まらないということです。この記事では、周辺への影響をどう把握するかを整理します。

この記事の結論

  • 近隣への影響は建物が傷む前に表面化する。敷地のほうが先に出る
  • 判断は物的状態と周辺への影響の両方を踏まえた総合判断とされている
  • 同じ状態の建物でも、周辺条件で優先度が変わる
  • 所有者は影響を知らないことが多い。遠方に住んでいるため
  • 苦情が来てからでは、すでに関係がこじれていることがある

影響は建物の傷みより先に出る

空き家が周辺に及ぼす影響を整理すると、次のようになります。

影響 内容 表面化の早さ
雑草の繁茂 隣地への侵入、種子の飛散、視界の悪化 数か月で出る
樹木の越境 道路や隣地へのはみ出し、落ち葉 1〜2年で出る
不法投棄 敷地内へのごみの投げ込み 管理されていないと分かると始まる
害虫・小動物 敷地や建物への住み着き 放置期間に比例する
防犯上の懸念 侵入の形跡、たまり場化 建物の状態による
建物の破損 部材の落下、外壁の剥落 数年以上かかる

上から順に、早く表面化します。建物の破損は最後です。

つまり建物の状態だけを見ていると、すでに近隣に影響が出ている物件を見落とします。逆にいえば、敷地の状態を見れば早い段階で把握できます。

雑草と樹木が最も多い

手入れがされなくなれば、まず草が伸びます。夏場であれば数か月で状況が変わります。

樹木は成長に時間がかかりますが、一度越境すれば元に戻りません。道路にはみ出せば通行の支障になり、隣地に入れば直接の苦情につながります

所有者は影響を知らない

ここが問題の中心です。空き家の所有者は、その物件から離れて住んでいることが多くなります。

住宅・土地統計調査によると、世帯が持つ敷地以外の土地のうち他県にあるものは全国平均で14.1%。神奈川県では33.8%にのぼります。

物件を見ていなければ、草が伸びていることも、ごみが投げ込まれていることも分かりません。悪意で放置しているのではなく、状況を知らないケースが相当数あります。

そして苦情が自治体に届き、指導の通知が来て初めて事態を知る。この時点では、近隣との関係がすでにこじれていることがあります

周辺条件で優先度が変わる

同じ状態の建物でも、周りの状況によって影響の大きさは変わります。

周辺条件 影響が大きい 影響が小さい
道路との関係 通行量の多い道路に面している 行き止まりの奥にある
隣家との距離 密集していて隣家が近い 周囲に建物がない
人の往来 通学路や生活道路に接する 人がほとんど通らない
敷地の見通し 道路から敷地内が見える 塀等で囲われている

国土交通省のガイドラインは、判断要素として「周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度等」を挙げています。悪影響を受ける周辺環境があるか、影響の程度、危険の切迫性、地域の実情を踏まえるとされています。

建物が傷んでいても、周囲に人も建物もなければ優先度は下がります。逆に軽微な状態でも、通学路に面していれば早期の対応が必要になります。

3つの系統で記録する

周辺への影響を把握するには、記録項目を3つの系統に分けておく必要があります。

系統 見るもの
建物 屋根、外壁、建具、傾き、部材の状態
敷地 雑草の繁茂、樹木の越境、放置物、囲いの状態
周辺への影響 道路や隣地との距離、通行への支障、人の往来

この3つは連動しません。建物は傷んでいるが敷地は手入れされている、逆に建物は無事だが草が生い茂っている。実際にある組み合わせです。

「空き家か否か」の2区分だけを記録すると、この違いが分かりません。敷地と周辺の状況を別に記録しておく必要があります。

建物の状態だけでは足りない理由

管理不全空家等は「適切な管理が行われていないこと」が起点です。建物が無事でも、敷地が放置されていれば該当しうるということになります。

実態調査を建物中心に設計すると、この層が拾えません。敷地の管理状況を記録項目に含めておいてください

目的によって、使い方が変わる

立場 周辺への影響の使い方 調査で指定するとよい条件
自治体 指導・勧告の優先順位づけ 建物・敷地・周辺の3系統を記録
空き家管理会社 提案の材料。所有者への説明 敷地の管理状況を記録
不動産会社 所有者に現状を伝える材料 建物と敷地の両方を記録
解体会社 緊急性の判断 周辺との位置関係も記録

自治体は優先順位づけに使う

限られた人員で対応するには、優先順位が必要です。建物の状態だけで並べると、影響の大きさが反映されません

状態の記録と周辺条件の記録があれば、「傷みは中程度だが通学路に面している物件」を上位に置くといった判断ができます。

継続的に同じ範囲を調査すれば、前回との比較もできます。雑草の状況や放置物の増加は、管理が止まった時期の手がかりになります

管理サービスは説明の材料に使う

所有者が状況を知らないなら、知らせることが提案の第一歩になります。

ただし伝え方には注意が必要です。「近隣から苦情が出ています」と断定するのは避けてください。実際に苦情があるかどうかは分かりませんし、事実でなければ信用を失います。

伝えるべきは、現地で確認できた状況です。草が伸びている、樹木が道路側に出ている。事実だけを伝え、判断は所有者に委ねる。この形が適切です。

敷地と周辺の状況まで記録できます。

建物の状態だけでは分からない、早い段階の変化を押さえられます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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制度上の扱い

2023年12月施行の改正空家法で、管理不全空家等の区分が新設されました。適切な管理が行われず、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態が対象です。

段階 措置 税への影響
助言・指導 適切な管理への働きかけ 住宅用地特例は継続
勧告 指導しても改善されない場合 特例の対象から除外される

指導の段階で管理を改善すれば、税への影響は避けられます。所有者に伝えるべきなのは「放置すると税が上がる」ではなく、この点のほうです。

なお該当するかどうかの判断は市区町村が行います。営業する側が「管理不全空家等に該当します」と断定できる立場にはありません

制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、所管する市区町村の窓口への確認をご案内ください。

調査でできること・できないこと

できること できないこと
敷地の管理状況の記録 敷地内への立ち入り
樹木の越境の有無 近隣からの苦情の有無
放置物の有無 害虫・小動物の実際の発生状況
道路や隣地との位置関係 建物内部の状態
建物の外観の状態 該当区分の判断

調査は公道から見える範囲に限られます。敷地には立ち入りません。

また、近隣から苦情が出ているかどうかは分かりません。分かるのは、外から見て確認できる状況までです。

季節の影響

雑草の状況は季節によって大きく変わります。夏場と冬場では見え方が違います。

また積雪期には、敷地の状態も建物の状態も確認できません。初回の調査は雪のない時期をおすすめしています

継続して調査する場合は、同じ時期に実施するほうが比較しやすくなります

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、敷地の管理状況や周辺との位置関係を記録項目に含めることができます。どの粒度で記録するかは、ヒアリングの段階でご相談ください。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。状態別に分類したうえで地図上に色分けする形にも対応します

所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する系統と粒度を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、公道から確認できる範囲で建物・敷地・周辺の状況を記録します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

周辺への影響を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 建物の状態だけで優先順位をつける/周辺への影響は判断要素の一つとされています
  • 敷地の状況を記録しない/雑草や放置物は建物の傷みより早く表面化します
  • 「近隣から苦情が出ています」と伝える/実際に苦情があるかは分かりません。事実だけを伝えてください
  • 「管理不全空家等に該当します」と断定する/判断は市区町村が行います
  • 調査時期を揃えない/雑草の状況は季節で大きく変わります

よくあるご質問

敷地の管理状況も記録してもらえますか?

できます。雑草の繁茂、樹木の越境、放置物の有無といった項目を記録できます。建物の状態とは別の系統として記録することも可能です。

近隣からの苦情の有無は分かりますか?

分かりません。調査で確認できるのは、公道から見える範囲の状況までです。苦情があるかどうかは、市区町村の窓口や近隣への確認が必要な領域です。

通学路に面しているかどうかも分かりますか?

ご相談ください。道路との位置関係は記録できますが、通学路の指定状況は自治体の情報になります。あわせて確認いただく形になります。

敷地の中には入らないのですか?

入りません。所有者の許可なく敷地に立ち入ることはできないため、公道から確認できる範囲での調査となります。

前回調査との比較はできますか?

できます。同じ判定基準・記録項目で実施すれば、比較できる形で納品します。雑草の状況は季節で変わるため、同じ時期に実施することをおすすめしています。

まとめ

空き家が近隣に及ぼす影響は、建物の傷みより先に表面化します。雑草は数か月、樹木の越境は1〜2年。建物の破損はもっと後です。

そして国土交通省のガイドラインは、判断を「空家等の物的状態」と「周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度等」を踏まえた総合判断としています。建物の状態だけでは決まりません。

同じ状態でも、通行量の多い道路に面していれば影響は大きく、周囲に人も建物もなければ小さい。周辺条件を記録しておけば、優先順位づけの精度が上がります

最後に、所有者の多くは影響を知りません。物件から離れて住んでいれば、草が伸びていることもごみが投げ込まれていることも分かりません。悪意で放置しているのではなく、状況を知らない。だからこそ、正確な情報を届けることに意味があります。

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