空き家の統計を資料でどう示すか|出典の書き方と注記すべき点

空き家の統計を資料でどう示すか|出典の書き方と注記すべき点

空き家の数字を資料にまとめる場面があります。議会への説明、社内での報告、計画の背景説明

このとき、数字の示し方によって伝わる内容が変わります。率だけを載せれば実数の動きが見えず、実数だけでは規模感が伝わりません

そして統計には前提があります。標本調査であること、基準日があること、表章の単位に限りがあること。これらを注記しないと、後で説明を求められます。この記事では、資料に載せるときの作法を整理します。

この記事の結論

  • 率と実数を両方示す。片方だけでは誤解を招く
  • 出典は調査名・実施機関・集計の種類まで書く
  • 標本調査であること基準日を注記する
  • 推計と目標は区別して示す
  • 自地域の数字と全国の傾向は分けて示す

率と実数を両方示す

最も基本的な作法です。空き家率だけでは、実態の動きが見えません

率が下がっても実数が増えることがある

大阪市の例です。

項目 平成30年 令和5年 増減
住宅総数 167万5,900戸 182万7,900戸 +9.1%
空き家数 28万6,100戸 29万4,600戸 +3.0%
空き家率 17.1% 16.1% ▲1.0pt

空き家率は1.0ポイント下がっていますが、空き家は8,500戸増えています。住宅総数が15万2,000戸増えたためです。

率だけを載せれば「改善した」と読まれます。実数を並べなければ、正確に伝わりません

3つの数字をセットで載せる

資料に載せるなら、次の3つを並べてください。

  • 総住宅数/分母が動いたかどうか
  • 空き家数/分子が動いたかどうか
  • 放置型(その他の住宅)の数/対策の対象が動いたかどうか

3つ目が最も重要です。空き家全体が減っていても、放置型が増えていることがあります。

群馬県では空き家率16.7%が5年間まったく変わりませんでしたが、放置型は1万500戸・16.8%増えています。賃貸用・売却用が7,500戸減って相殺された結果です。

出典の書き方

統計の出典は、調査名だけでは不十分です

書くこと
実施機関 総務省統計局
調査名 令和5年住宅・土地統計調査
集計の種類 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)
公表時期 2024年9月25日

集計の種類まで書く理由は、同じ調査でも複数の集計があるためです

集計によって数字が違うことがある

住宅・土地統計調査は段階的に公表されます。

集計 公表時期
速報集計 2024年4月30日
基本集計(確報) 2024年9月25日
構造等に関する集計 2025年1月29日
土地集計 2025年3月26日
共同住宅の空き家分析 2025年5月30日

速報と確報では数字が異なります。全国の確報は速報より総住宅数が2万6千戸、空き家数が6千戸多くなりました。ただし空き家率13.8%は変わっていません。

どの集計を使ったかを明記しておけば、後で照合できます

注記すべき3つのこと

①標本調査であること

住宅・土地統計調査は全数調査ではありません。抽出された約340万の住戸・世帯を調べて全体を推計しています

公表されている空き家率も空き家数も推計値です。実際に数えた数字ではありません

この点を注記しておかないと、「実態と合わない」という指摘を受けたときに説明できません

②基準日

令和5年調査の基準日は2023年10月1日です。それ以降の変化は反映されていません。

総住宅数が減少している地域では、取り壊しが進んでいます。高知県は5年間で総住宅数が1.0%減、長崎県も0.7%減。基準日から時間が経つほど、現況とのずれは大きくなります

③表章の単位

結果が公表されるのは、市区および人口1万5千人以上の町村までです。

町丁目単位の空き家数は公表されていません。地区別の数字が必要な場合、自治体が独自に実施した調査によることになります。

また規模が小さいほど誤差の影響を受けやすくなります。市区町村単位の数字を細かく比較しすぎないでください。

推計と目標を区別する

将来の数字を載せる場合、推計なのか目標なのかを明確にしてください

数字 性格
2030年に470万戸(見込み) 対策を講じない場合の推計
2030年に400万戸程度 住生活基本計画で目指す水準

国土交通省の資料によれば、居住目的のない空き家は1988年182万戸、2018年349万戸と推移し、2030年には470万戸に達する見込みとされています。これに対し、住生活基本計画では400万戸程度に抑える目標が設定されています

混同すると、施策の必要性が伝わりません

民間の推計を引用する場合

民間の推計を使う場合、公表時期を明記してください。推計は更新されるためです。

野村総合研究所が2016年に公表した「2033年の空き家率30.4%」という予測は、2024年6月公表の推計では18.3%に修正されています。世帯数の増加が予想を上回ったことが理由とされています。

古い数字をそのまま引用すると、指摘を受けることになります

実数が必要なら、現地調査でお出しします。

町丁目単位の件数を、地区別・状態別に集計した形で納品します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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自地域と全国を分ける

全国の傾向を背景として示すことはできますが、自地域の数字と混ぜないでください

地域 状況
沖縄県 空き家が20年ぶりに減少
京都市 空き家が700戸減、空き家率も0.4ポイント低下
神戸市兵庫区 空き家が5年で80.3%増

全国が増えていても、減っている地域があります。全国の傾向をそのまま当てはめると、実態と食い違います。

市内でも差が大きい

政令市では、区によって状況がまったく違います。

区による差
広島市 空き家率が中区14.6%、安佐南区7.4%
大阪市 空き家率が西成区25.9%、北区11.1%
神戸市 空き家率が兵庫区24.7%、東灘区10.6%

市の平均だけを示すと、地区ごとの実態が見えません。区別のデータがあれば、あわせて示してください。

種類別の内訳を示す

空き家の総数だけでは、対策の対象が分かりません。種類別に分けて示してください

区分 全国の戸数 構成比
賃貸用の住宅 443万5,800戸 49.3%
その他の住宅 385万6,000戸 42.8%
二次的住宅 38万3,500戸 4.3%
売却用の住宅 32万6,300戸 3.6%

賃貸用は市場の在庫であり、放置型とは性質が違います。二次的住宅(別荘)は管理されています。

空き家が多い地区でも、その大半が賃貸用であれば対策の必要性は変わります。内訳を示さなければ、施策の設計を誤ります

表記の揺れに注意する

同じものを指す言葉が複数あります。

表記 使われる場面
その他の住宅 総務省の統計での正式な区分名
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 引き算の形で表現したもの
その他空き家 国土交通省の資料など

いずれも同じ385万6,000戸を指しています。資料内では表記を統一し、初出で定義を示しておくと分かりやすくなります。

前回との比較を示す

経年の変化を示す場合、比較の前提を揃えてください

確認すること 理由
同じ集計を使っているか 速報と確報では数字が違う
区域の変更がないか 市町村合併等で範囲が変わることがある
定義の変更がないか 調査の設計が変わる場合がある

自治体の実態調査は基準を揃える

自治体が独自に実施した実態調査の結果を示す場合、判定基準が前回と同じかどうかが重要です

基準が変われば、件数が増減しても実態の変化か基準の変化か区別できません。基準を変更した場合は、その内容と理由を注記してください。

目的によって、示す数字が変わる

立場 主に示す数字 注意点
自治体(議会説明) 自地域の実数と経年変化、種類別の内訳 推計値であることを注記
自治体(計画策定) 実態調査の結果、全国の傾向 自地域と全国を分けて示す
不動産会社(社内報告) 放置型の実数、エリア別の分布 率だけで判断しない
リフォーム会社 居住世帯のある住宅、建築時期別の構成 空き家率は判断材料にならない

自治体は実態調査の結果を併記する

統計は市区町村単位の推計値です。実態調査の結果があれば、それを併記してください

ただし前提が違うことを明記する必要があります。統計は標本調査による推計値、実態調査は現地を確認した実数。判定基準も自治体が定めます。単純な比較はできません

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

資料への反映や議会説明を想定するなら、件数集計もあわせてご用意します。地区別・状態別に分けた形で納品できます。

また次回調査との比較を前提とした形式でもご用意できます。判定基準は記録として残し、同じ基準で実施できるようにします。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのデータかを確認したうえで、対象範囲・調査項目・判定基準・集計の単位を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、指定された基準に沿って外観から状態を確認・記録します。
地番の特定と集計
調査結果をもとに地番を割り出し、地区別・状態別に集計します。資料に使いやすい形に整理します。
納品
地図・リスト・集計表の形で納品します。判定基準もあわせて記録として残します。

資料を作るときの注意点

よくあるつまずき

  • 率だけを示す/率が下がっても実数が増えていることがあります
  • 推計値であることを注記しない/実態と合わないという指摘を受けたときに説明できません
  • 推計と目標を混同する/470万戸は推計、400万戸は目標です
  • 古い予測をそのまま引用する/推計は更新されます。公表時期を確認してください
  • 全国の傾向を自地域に当てはめる/減っている地域も増えている地域もあります

よくあるご質問

統計の出典はどう書けばよいですか?

実施機関、調査名、集計の種類、公表時期まで書いておくと確実です。同じ調査でも複数の集計があり、速報と確報では数字が異なるためです。

町丁目単位のデータはありますか?

公表されていません。住宅・土地統計調査で表章されるのは市区および人口1万5千人以上の町村までです。地区別の実数が必要な場合、現地調査で確認する形になります。

議会説明に使える形で納品してもらえますか?

地区別・状態別に集計した形でご用意できます。判定基準もあわせて記録として残しますので、数字の根拠を示すことができます。

前回調査との比較ができる形にできますか?

できます。前回の仕様や集計形式をお示しいただければ、それに合わせて設計します。基準を揃えることで、件数の増減がそのまま実態の変化を表します。

統計と実態調査の数字が違うのはなぜですか?

前提が異なるためです。統計は標本調査による推計値で基準日は2023年10月1日、実態調査は現地を確認した実数で判定基準も自治体が定めます。単純な比較はできないため、それぞれの前提を注記して併記する形をおすすめしています。

まとめ

空き家の数字を資料に載せるとき、押さえるべき作法があります。

まず率と実数を両方示すこと。大阪市は空き家率が1.0ポイント下がりましたが、空き家は8,500戸増えています。率だけでは「改善した」と読まれます。総住宅数・空き家数・放置型の3つをセットで載せてください

出典は実施機関・調査名・集計の種類・公表時期まで。同じ調査でも複数の集計があり、速報と確報では数字が異なります。

注記すべきは3つ。標本調査であること、基準日が2023年10月1日であること、表章が市区および人口1万5千人以上の町村までであること

そして推計と目標を区別してください。2030年470万戸は対策を講じない場合の推計、400万戸程度は住生活基本計画で目指す水準です。混同すると、施策の必要性が伝わりません。

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