空き家の将来推計はどこまで信じられるか|外れ方に意味がある

空き家の将来推計はどこまで信じられるか|外れ方に意味がある

「2033年には空き家率が30%を超える」。この予測を聞いたことがある方は多いと思います。3戸に1戸が空き家になるという数字は、大きく報道されました

ただし、この予測はその後大きく下方修正されています。野村総合研究所の2024年6月公表の推計では、2033年の空き家率は18.3%。当初の30.4%から12ポイント以上下がりました。

予測が外れたということですが、問題は外れ方です。全体としては緩和されましたが、内訳を見ると別の傾向が現れています。この記事では、推計をどう扱うべきかを整理します。

この記事の結論

  • 2016年の予測は2033年に空き家率30.4%だったが、大きく下方修正された
  • 2023年の実績は13.8%。予測の17.4%を3.6ポイント下回った
  • 下方修正の理由は世帯数の増加が予想を上回ったこと
  • ただし一戸建の空き家率は上昇すると見込まれている
  • 推計は前提が変われば変わる。数字より構造を見る

予測はどう変わってきたか

野村総合研究所は、住宅市場の将来予測を定期的に公表しています。

公表時期 2033年の空き家率の予測
2016年 30.4%
2024年6月 18.3%

12ポイント以上の下方修正です。同社の2024年6月公表の推計では、2043年時点で約25%とされています。

2023年の実績も予測を下回った

より直近の例があります。同社は2023年6月に、2023年の空き家率を17.4%と予測していました。

項目 予測(2023年6月) 実績
空き家率 17.4% 13.8%
空き家数 1,136万戸 900万戸

空き家率は3.6ポイント、空き家数は236万戸下回りました。予測と実績のずれとしては、小さくありません。

なぜ外れたのか

理由は世帯数の増加が予想を上回ったこととされています。

空き家率は「空き家数 ÷ 総住宅数」で計算されます。世帯数が増えれば住宅の需要も増え、空き家になる住宅が減ります

そして世帯数の増加を牽引しているのは単独世帯です。人口が減っても、1世帯あたりの人数が減れば世帯数は増えます。この傾向は2030年代前半まで続くと見込まれています。

推計は前提の置き方で結果が変わります。世帯数の見通しが変われば、空き家率の見通しも変わるということです。

外れ方に意味がある

全体の数字は下方修正されましたが、内訳を見ると別の傾向が現れています

野村総合研究所の2024年6月公表の資料によれば、建て方別に次のような見通しが示されています。

建て方 空き家率の見通し
集合住宅(共同住宅+長屋建) 減少
一戸建 上昇

一戸建の空き家は、2043年には2023年時点の2.6倍になることが見込まれるとされています。

単独世帯は集合住宅を選ぶ

この差の背景として、世帯数増加を牽引する単独世帯からの居住先としての選ばれやすさが挙げられています。

単独世帯が増えても、その多くは集合住宅に住みます。一戸建の需要は増えません。結果として、一戸建だけに空き家が積み上がる構図になります。

一戸建は状態も悪い

同資料では、一戸建の空き家は腐朽・破損ありの割合が相対的に高いとも指摘されています。

実際、京都市の資料では放置型の空き家について、腐朽・破損率が一戸建28%、長屋建52%、共同住宅11%と示されています。共同住宅は募集中の賃貸物件が多く、管理されているためです

数が増えるうえに状態も悪い。一戸建の空き家は、この2つが重なります。

国の推計と目標

国土交通省も推計を示しています。

居住目的のない空き家(その他空き家)
1988年 182万戸
2018年 349万戸
2030年(見込み) 470万戸

この20年で1.9倍に増加し、今後も増加が見込まれるとされています。

これに対し、住生活基本計画では2030年時点で400万戸程度に抑える目標が設定されています。活用可能な空き家の利用と、管理不全の空き家の除却等によって、約70万戸分の抑制が必要という見解が示されています。

推計と目標は別のものです。470万戸は対策を講じない場合の数字であり、400万戸は施策によって達成を目指す水準ということになります。

推計をどう扱うか

ここまでを踏まえると、実務での扱い方は次のようになります。

向いている使い方 向いていない使い方
方向性の把握 特定の年の数字を前提にする
構造の理解 件数の見積り
中長期の判断材料 短期の意思決定の根拠

推計は前提が変われば変わります。数字そのものより、その背後にある構造を見るほうが実務に使えます。

読み取るべき3つの構造

構造 実務への意味
世帯数の増加が空き家率を抑えてきた 2030年代前半までは緩やかな上昇にとどまる可能性
一戸建に空き家が集中していく 戸建てを対象とする事業には追い風
一戸建は状態が悪い割合が高い 解体・改修の需要も生じる

「空き家が増える」という一言では、この違いが見えません

推計ではなく、実数をお出しします。

現地調査で確認した町丁目単位の件数と、建物の状態を記録します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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足元の数字も見る

推計は中長期の話ですが、足元では実際に動きが起きています

国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査によれば、直近1年間で使用目的のない空き家の14.8%が空き家でなくなりました

順位 理由 割合
1位 除却した 22.7%
2位 貸した 15.5%
2位 所有者や親族が居住した 15.5%

発生する量と解消する量。この差が総数を決めます。推計の数字を追うより、この構造を押さえるほうが実務に近くなります。

地域差は推計より大きい

全国の推計は、あくまで全国の話です。実際には地域によって状況がまったく違います

地域 状況
沖縄県 空き家が20年ぶりに減少
京都市 空き家が700戸減、空き家率も0.4ポイント低下
大阪市 空き家率は1.0ポイント低下したが、空き家は8,500戸増
神戸市兵庫区 空き家が5年で80.3%増

全国が増えていても、減っている地域があります。逆に率が下がっていても、実数は増えていることがあります。

そして市区町村単位でも粗すぎます。町丁目単位の空き家数は公表されていないため、実数は現地で確認するしかありません

目的によって、見る指標が変わる

立場 推計の使い方 あわせて見るべきもの
不動産会社 中長期の事業方針 自社エリアの放置型の実数と増減
買取再販 一戸建の増加は追い風 状態別の分布
解体会社 一戸建は状態が悪い割合が高い 腐朽・破損の割合
リフォーム・外壁塗装会社 参考程度 居住世帯のある住宅、建築時期別の構成
自治体 計画の背景説明 自地域の経年変化

リフォームは推計を追う必要が薄い

リフォームや外壁塗装の提案先は、人が住んでいる築古住宅です。空き家の推計は、この用途では判断材料になりません。

見るべきは居住世帯のある住宅数と、建築時期別の構成です。

自治体は計画の背景に使える

空家等対策計画には、現状と課題を示す必要があります。全国の推計は、その背景説明として使えます

ただし自地域の数字とは分けて示してください。全国の傾向と自地域の実態が一致しないことは珍しくありません。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物の状態を記録項目に含めることができます。一戸建の空き家は状態が悪い割合が高いとされるため、状態別の分類が判断に効きます。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する状態の区分を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。推計ではなく実際に確認した件数を報告します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

推計を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 古い予測をそのまま引用する/2033年30.4%という数字は下方修正されています
  • 特定の年の数字を前提に事業計画を立てる/前提が変われば結果も変わります
  • 全国の傾向を自地域に当てはめる/減っている地域も増えている地域もあります
  • 「空き家が増える」で止まる/建て方別に見れば傾向が分かれます
  • 推計値を件数の見積りに使う/実数は現地で確認する必要があります

よくあるご質問

「2033年に空き家率30%」という予測は今も有効ですか?

大きく下方修正されています。野村総合研究所の2024年6月公表の推計では、2033年の空き家率は18.3%とされています。世帯数の増加が予想を上回ったことが主な理由です。

なぜ予測が外れたのですか?

世帯数の増加が予想を上回ったためとされています。空き家率は空き家数を総住宅数で割った数字なので、世帯数が増えて住宅の需要が増えれば、空き家率は抑えられます。増加を牽引しているのは単独世帯です。

一戸建の空き家は増えるのですか?

野村総合研究所の2024年6月公表の資料では、集合住宅の空き家率が減少する一方、一戸建の空き家率は上昇するとされています。一戸建の空き家は2043年に2023年時点の2.6倍になることが見込まれるとされています。

自社エリアの見通しは分かりますか?

全国の推計をそのまま当てはめることはできません。地域によって状況が大きく違うためです。自社エリアの実態については、現地調査で実数を確認する形になります。

町丁目単位の将来予測はありますか?

公表されていません。住宅・土地統計調査の表章も市区および人口1万5千人以上の町村までです。町丁目単位の実数は、現地調査で確認する形になります。

まとめ

「2033年に空き家率30.4%」という予測は、大きく下方修正されました。2024年6月公表の推計では18.3%。2023年の実績も、予測17.4%に対して13.8%でした。

理由は世帯数の増加が予想を上回ったことです。増加を牽引しているのは単独世帯で、この傾向は2030年代前半まで続くと見込まれています。

ただし外れ方に意味があります。全体は緩和されましたが、建て方別に見ると集合住宅の空き家率は減少、一戸建は上昇。一戸建の空き家は2043年に2023年の2.6倍になると見込まれ、しかも腐朽・破損ありの割合が相対的に高いとされています。

推計は前提が変われば変わります。数字そのものより、その背後にある構造を見てください。そして実数は、町丁目単位では公表されていません。まずは1〜2地区で実施し、自社エリアの実態を確かめてください。

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