水道の閉栓情報で空き家はわかるか|使える範囲と現地調査の役割

水道の閉栓情報で空き家はわかるか|使える範囲と現地調査の役割

空き家を効率よく見つける方法として、水道の使用状況を挙げる声があります。人が住んでいなければ水は使われない。閉栓されていれば空き家である可能性が高い。理屈としては筋が通っています。

実際、この情報を空き家対策に使う仕組みは制度上も整備されています。ただし使えるのは市区町村だけで、民間企業は利用できません。そして自治体であっても、決定打にはなりません。

この記事では、水道や電気・ガスの使用状況が空き家の把握にどこまで使えるのか、誰が使えるのか、そして何が分からないのかを整理します。

この記事の結論

  • 水道の使用状況を空き家対策に使えるのは市区町村のみ。民間企業は利用できない
  • 空家法により、市区町村は電気・ガス等の供給事業者に情報提供を求められる
  • ただし事業者に応答の義務はない。求めても回答が得られるとは限らない
  • 閉栓=空き家、通水=居住中とは言い切れない。逆のケースがある
  • 建物の状態や接道は、この方法では一切分からない

制度上どう位置づけられているか

空家等対策の推進に関する特別措置法では、市区町村長が空家等の所有者等を把握するために必要な情報を集める仕組みが定められています。

根拠 内容
庁内の情報の内部利用 固定資産税の課税情報などを、法の施行に必要な限度で内部利用できる
外部への情報提供の求め 関係する地方公共団体の長のほか、電気・ガス等の供給事業者などに情報提供を求められる

2023年12月に施行された改正空家法では、情報提供を求める対象として「空家等に工作物を設置している者」が明記されました。国土交通省は同日付の事務連絡で、電気・ガス供給事業者への情報提供の求め方についての具体的な手順を示しています。

水道は多くの場合、市区町村が自ら持っている

電気やガスと違い、水道事業は多くの自治体で市区町村が自ら運営しています。つまり水道の使用状況は、庁内にある情報です

外部の事業者に照会するまでもなく、法の施行に必要な限度で内部利用できる場合があります。この点で、水道は電気・ガスより扱いやすい情報だといえます。

民間企業はこの方法を使えない

ここが最も重要な点です。空家法に基づく情報の内部利用も、事業者への情報提供の求めも、市区町村長に認められた仕組みです。

不動産会社やリフォーム会社が水道局に「この住所の使用状況を教えてほしい」と照会しても、応じてもらえません。個人情報にあたるためです。

民間で空き家を把握するには、公開情報(統計・地図・登記)と現地調査を組み合わせる方法しかありません。

自治体でも決定打にはならない

では市区町村であれば万能かというと、そうではありません。制度上も実務上も、複数の限界があります。

①事業者に応答の義務はない

埼玉県空き家対策連絡会議が作成した特定空家等に対する指導手順マニュアルには、電気・ガス・水道の使用状況について事業者に照会できるが、どのような条件を付したとしても事業者側に何らかの応答を義務付けることはできないと記載されています。

照会はできても、回答が得られる保証はありません。制度があることと、実務で使えることは別だということです。

②閉栓していなくても空き家のことがある

使用状況から居住の有無を推測する際、次のようなケースが判断を狂わせます。

状況 実態
通水しているが空き家 所有者が管理のために時々訪れている、通水を止めていないだけ
閉栓しているが居住中 引越し直後で手続きが済んでいない、井戸水を使用している
使用量がごく少ないが居住中 単身の高齢者、長期入院中で住民票はそのまま
使用量がゼロだが解体済み 建物がすでに存在しない

使用量は「人がいるかどうか」の間接的な手がかりにすぎません。断定するには別の確認が必要になります。

③共同住宅では棟単位で分からない

共同住宅では、住戸ごとにメーターが設置されている場合と、棟全体で一括となっている場合があります。一括の場合、どの部屋が空いているかは分かりません

全国の空き家のうち55.9%は共同住宅です。この層について、水道情報から住戸単位の状況を把握することは困難です。

④状態や接道は一切分からない

そして最大の限界がこれです。使用状況から分かるのは、水が使われているかどうかだけ。建物がどの程度傷んでいるか、接道が何メートルか、車が入れるか。これらは一切分かりません

管理不全空家等の判断には、建物の状態の記録が必要です。特定空家等かどうかも、外観の確認なしには判定できません。水道情報は所有者の特定に使える材料であって、状態の把握には使えない情報です。

それぞれの手段の役割を整理する

手段 使える主体 分かること 分からないこと
統計データ 誰でも 市区町村単位の空き家数 個別の建物の状況
登記情報 誰でも 所有者、地目、面積、権利関係 現況、建物の状態、接道
水道・電気・ガスの使用状況 市区町村のみ 使用の有無(推測の材料) 状態、接道、共同住宅の住戸単位
現地調査 誰でも 使用状況、建物の状態、接道、現存の有無 内部の状態、正確な築年数、所有者の意向

それぞれ役割が違います。水道情報は所有者を追う手がかりとして有効ですが、現地調査の代わりにはなりません。逆に現地調査では所有者の連絡先までは分からず、登記情報が必要になります。

目的によって、組み合わせ方が変わる

立場 使える手段 現実的な進め方
不動産会社 統計・地図・登記・現地調査 統計でエリアを絞り、現地で対象を確定し、登記で所有者を特定する
リフォーム・外壁塗装会社 統計・地図・現地調査 造成年代のそろった地区を選び、現地で外観の状態を記録する
自治体 上記に加えて庁内情報・事業者への照会 現地調査で状態を記録し、所有者の特定に庁内情報を使う

自治体の場合、現地調査と庁内情報は補完関係にあります。現地で「使われていない、状態が悪い」建物を特定し、その所有者を庁内情報や登記情報で追う。この順序であれば、それぞれの強みが活きます。

逆に、水道情報から入って候補を絞ろうとすると、状態の分からないリストができあがります。管理不全空家等の判断には使えません。

状態まで記録した現地データをお出しします。

使用状況・建物の状態・接道まで、外観から確認できる範囲で記録します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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自治体から民間への情報提供という道もある

もうひとつ押さえておきたいのが、自治体が把握した空き家所有者の情報を、民間事業者に提供する取り組みです。

国土交通省は2023年12月に「空き家所有者情報の外部提供等に関するガイドライン」を公表しています。同ガイドラインによれば、空き家所有者情報を民間事業者等に提供している市町村は320に上ります

ただし提供には所有者の同意など一定の手続きが必要で、どの自治体でも受けられるものではありません。制度としての可能性はあるが、汎用的な手段ではないという位置づけです。

なお制度の運用は自治体によって異なります。具体的な内容については、所管する市区町村の窓口への確認をご案内ください。

現地調査で記録できること

弊社の土地調査では、調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ確認・記録します。水道情報では分からない部分が、ここで押さえられます。

記録項目 内容
使用の実態 郵便受け、カーテン、庭木、駐車の状況など複数の材料から判断
建物の状態 屋根・外壁の劣化、破損の程度
接道の状況 前面道路の幅、車両の進入可否
現存の有無 すでに取り壊されていないか
建て方 戸建てか、共同住宅か
地番 登記情報の取得につなげるための特定

複数の材料から総合的に判断する点が、単一の指標に頼る方法との違いです。通水しているが庭木が伸び放題で郵便受けが溢れている、といった状況も記録できます。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。統計や地図データで範囲を絞り込んでおけば、そのぶん費用は抑えられます。

調査項目は、空き家(戸建て)のほか、空き地、古アパート、古家(居住中)、駐車場、倉庫・工場などから選べます。自治体の実態調査では、状態別の分類にも対応します。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(仕入れ/施工提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。使用状況は複数の材料から総合的に判断します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

使用状況のデータに頼るときの注意点

よくあるつまずき

  • 民間でも照会できると考える/空家法に基づく仕組みは市区町村長に認められたものです
  • 閉栓=空き家と断定する/引越し直後や井戸水利用では閉栓していても居住中です
  • 通水=居住中と断定する/管理のために通水を続けている空き家があります
  • 共同住宅にも使えると考える/メーターが一括の場合、住戸単位では分かりません
  • 状態の把握に使おうとする/建物の劣化や接道は、この方法では一切分かりません

よくあるご質問

民間企業でも水道の使用状況を調べられますか?

調べられません。空家法に基づく情報の内部利用や事業者への情報提供の求めは、市区町村長に認められた仕組みです。民間企業が水道局等に照会しても、個人情報にあたるため応じてもらえません。

自治体なら確実に情報が得られますか?

照会はできますが、事業者側に応答を義務付けることはできないとされています。水道については市区町村が自ら運営している場合が多く、庁内で扱える可能性がありますが、運用は自治体によって異なります。

現地調査では、使用状況をどう判断するのですか?

郵便受けの状態、カーテンの有無、庭木の手入れ、駐車の状況など、複数の材料から総合的に判断します。単一の指標ではないため、通水していても実質的に使われていない住宅を拾える場合があります。

自治体から空き家所有者の情報を提供してもらえますか?

国土交通省がガイドラインを公表しており、民間事業者等へ情報提供を行っている市町村もあります。ただし所有者の同意など手続きが必要で、すべての自治体で受けられるものではありません。所管の窓口にご確認ください。

建物の状態も記録してもらえますか?

外観から確認できる範囲で記録します。屋根や外壁の劣化といった項目に分けて記録することも可能です。管理不全空家等の判断材料が必要な場合はご相談ください。

まとめ

水道の使用状況から空き家を把握する方法は、制度上も整備されています。ただし使えるのは市区町村だけで、民間企業はこの方法を使えません。

そして自治体であっても、決定打にはなりません。事業者に応答の義務はなく、閉栓していても居住中のことがあり、通水していても空き家のことがある。共同住宅では住戸単位まで分からず、建物の状態や接道は一切分かりません

結局のところ、それぞれの手段には役割があります。統計はエリアの絞り込み、登記は所有者の特定、使用状況は所有者を追う手がかり。そして建物の状態と接道は、現地でしか分かりません

管理不全空家等の判断にも、仕入れの優先順位づけにも、状態の記録が必要です。使用状況のデータで代替できる工程ではありません。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げてください。

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