空き家はどこから傷むのか|放置期間と状態の関係を現地で見る

空き家はどこから傷むのか|放置期間と状態の関係を現地で見る

空き家は、人が住んでいる住宅より傷みが早いといわれます。ただし「何年で傷む」と一律に示せるものではありません

建物の構造、立地、もともとの状態、気候。条件が違えば進み方も変わります

それでも傷み始める場所には傾向があります。そして外から見えるものと見えないものがあります。この記事では、現地で何が確認できるのかを整理します。

この記事の結論

  • 「何年で傷むか」は一律には示せない
  • 外から見えるのは屋根・外壁・建具・雨樋など
  • 敷地のほうが先に変化が表れる
  • 建て方によって傾向が違う。長屋建は52%に腐朽・破損
  • 構造の安全性の判定は専門の調査が必要

なぜ空き家は傷みが早いのか

一般に、次の要因が挙げられます。

要因 内容
換気されない 湿気がこもりやすくなる
点検されない 不具合に気づかない
小さな修繕がされない 雨樋の詰まりなどが放置される
設備が使われない 配管の劣化が進むことがある

居住していれば、雨漏りや詰まりにすぐ気づきます。空き家では、それが数年後の点検まで分かりません。

とくに所有者が遠方に住んでいる場合、点検の機会そのものが限られます。住宅・土地統計調査によると、世帯が持つ敷地以外の土地のうち他県にあるものは全国平均で14.1%。神奈川県では33.8%にのぼります。

敷地のほうが先に変化する

建物が傷むには年数がかかりますが、敷地はもっと早く変化します

変化 表面化するまで
雑草の繁茂 数か月
樹木の越境 1〜2年
建物の破損 数年以上

建物の状態だけを見ていると、すでに変化が始まっている物件を見落とします

逆にいえば、敷地の状態を見れば早い段階で把握できます。まだ間に合う段階の物件を見つけるうえで、この違いは重要です。

外から見える部分

公道から確認できる範囲で、次の項目が記録できます。

部位 見るもの
屋根 屋根材のずれ、欠損、棟の状態
外壁 ひび割れ、色あせ、剥落
雨樋 外れ、詰まり、破損
建具 窓や戸の破損、開いたままの状態
基礎 ひび割れ(見える範囲)
庇・軒 傾き、破損
塀・門 傾き、ひび割れ

雨樋は見落とされやすい

雨樋が外れたり詰まったりすると、雨水が本来と違う場所に流れます。外壁や基礎に影響が及ぶことがあります。

居住していれば気づきますが、空き家では放置されます。小さな不具合が、時間をかけて別の問題につながるという構造です。

建具の破損は内部にも影響する

窓ガラスが割れている、戸が外れている。この状態では雨や風が室内に入ります

また動物が入り込むこともあります。外から見える破損は、内部の状態を推測する材料になります

外から見えない部分

一方、確認できない部分があります。

見えないもの 確認する方法
建物内部の状態 接触して内見の許可を得る
建物の裏側 —(道路から見える面に限られる)
屋根の勾配で見えない面
構造の状態 専門の調査
シロアリ等の被害 専門の調査
設備・配管 専門の調査

調査は公道から外観を確認する形で行います。敷地には立ち入らず、窓から中をのぞくこともしません。

耐震性は判定できない

外観から傾いているように見えても、構造上問題がない場合もあります。逆に、外観が整っていても内部が傷んでいることがあります。

耐震性の判定には専門的な診断が必要です。調査で提供できるのは、詳細な診断が必要な物件を絞り込むための記録までです。

統計に現れる状態

建物の状態については、統計でも集計されています。

建て方による違い

京都市の資料では、放置型の空き家について建て方別の腐朽・破損率が示されています。

建て方 腐朽・破損あり
一戸建 28%
長屋建 52%
共同住宅 11%

長屋建は半数以上に腐朽・破損があります。共同住宅が低いのは、募集中の賃貸物件が多く管理されているためです。

そして長屋建は全国で7.6%減と、唯一減少している建て方です。数が減り、残っているものは状態が悪いという構図になります。

地区による違い

神戸市では、区によって大きな差があります。

腐朽・破損あり
長田区 23.4%
北区 20.0%
兵庫区 4.3%
西区 2.9%

同じ市内でも8倍の開きがあります。兵庫区は空き家が5年で80.3%増えましたが、傷んでいるのは4.3%だけ。新しく空き家になった住宅が多いためです

相続空き家の状態

令和6年空き家所有者実態調査によれば、相続空き家の状態は次のとおりです。

状態 割合
室内外に部分的な腐朽・破損あり 47.1%
構造上の不具合あり 21.2%
室内外に全体的な腐朽・破損あり 3.5%
構造上の不具合や腐朽・破損なし 28.2%

何らかの腐朽・破損があるのは7割超です。ただしこれは所有者の自己申告による回答であり、遠方にいれば現況を正確に把握していない可能性もあります。

建物と敷地の状態を、段階に分けて記録できます。

まだ間に合う段階の物件と、解体前提の物件を分けて扱えます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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状態によって選択肢が変わる

建物の状態は、その後の扱いを左右します。

状態 現実的な選択肢
そのまま使える 売却、賃貸、空き家バンクへの登録
改修すれば使える 改修して流通させる、用途を変えて活用
使うのが難しい 解体して土地として扱う

状態が進むほど、選択肢は減ります。修繕より解体が現実的になり、活用の道も閉じていきます。

まだ間に合う段階を見つける

逆にいえば、早い段階で見つけられれば選択肢が多く残ります

庭木が伸び始めた、雨樋が外れている。この段階なら、対応の負担も小さく済みます

管理サービスにとっては、ここが提案の対象になります。手遅れの物件では管理の提案が続かず、手入れが行き届いている物件は提案先になりません

記録の粒度を決める

どこまで細かく記録するかは、その後の使い道で決まります。

記録の仕方 向いている用途
有無だけ(該当する/しない) 件数の把握、分布の確認
程度を段階で 訪問の順番を決める
該当箇所を項目で(屋根/外壁/建具) 修繕・解体の提案

細かくするほど良いわけではありません。段階を増やすほど調査員の判断はぶれやすくなり、運用でもまとめ直すことになります。

その後の対応が3通りしかないなら、記録も3段階で十分です

目的によって、見る部位が変わる

立場 優先して見る部位 調査で指定するとよい条件
不動産会社 全体の状態、接道 状態を段階に分けて記録
買取再販 屋根、外壁、建具 該当箇所を項目で記録
屋根・外壁塗装会社 屋根、外壁 「古家(居住中)」+外壁・屋根の状態
解体会社 全体の傷み、接道、隣家との距離 状態+接道
空き家管理会社 敷地の管理状況、軽微な破損 敷地+建物の状態
自治体 建物・敷地・周辺の3系統 3系統を別に記録

リフォームは居住中の住宅が対象

屋根や外壁の施工を提案する場合、対象は人が住んでいる築古住宅です。空き家では、所有者が改修する動機が働きにくくなります。

「古家(居住中)」を調査項目として指定すれば、この層を対象にできます。塗り替え周期は10〜15年とされ、屋根・外壁等の改修を行った持ち家は全国で12.4%です

自治体は3系統で記録する

国土交通省のガイドラインは、管理不全空家等・特定空家等の判断について「空家等の物的状態」と「周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度等」を踏まえて総合的に判断するとしています。

系統 見るもの
建物 屋根、外壁、建具、傾き
敷地 雑草、樹木、放置物、囲い
周辺への影響 道路や隣地との距離、通行への支障

この3つは連動しません。建物は傷んでいるが敷地は手入れされている、その逆もあります。別に記録しておく必要があります。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物の状態と敷地の管理状況を記録項目に含めることができます。屋根や外壁の劣化、雨樋の破損、雑草の繁茂、樹木の越境といった項目に分けて記録することも可能です。

ただし耐震性の判定や構造の安全性の評価は行いません。専門的な診断が必要な領域です。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と記録項目のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、建物・敷地のどこまでを、どの粒度で記録するかを決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、公道から確認できる範囲で建物・敷地の状況を記録します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

状態を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 「何年で傷む」と断定する/構造も立地も条件が違えば進み方も変わります
  • 建物だけを見る/敷地のほうが先に変化します
  • 外観から構造の安全性を判断する/専門的な診断が必要です
  • 「危険です」と所有者に断定して伝える/外観からは判断できません
  • 段階を細かく分けすぎる/判断がぶれ、運用でもまとめ直すことになります

よくあるご質問

空き家は何年くらいで傷みますか?

一律にはお示しできません。建物の構造、立地、もともとの状態、気候によって進み方が変わるためです。調査でお伝えできるのは、現時点で外観から確認できる状態までです。

どの部位を記録してもらえますか?

屋根、外壁、雨樋、建具、基礎、塀などについて、外観から確認できる範囲で記録できます。該当箇所を項目で分けることも、程度を段階に分けることも可能です。

建物の裏側も見てもらえますか?

道路から見える面に限られます。隣家との間や奥まった位置は記録できません。外壁の劣化が裏側で進んでいる場合、その情報は含まれない点をご了承ください。

耐震性の判定もしてもらえますか?

できません。耐震性の判定には専門的な診断が必要です。調査で記録できるのは、外観から確認できる傾きや破損の状況までとなります。

敷地の状態も記録できますか?

できます。雑草の繁茂、樹木の越境、放置物の有無といった項目を記録できます。建物の状態とは別の系統として記録することも可能です。建物より早く変化が表れる部分です。

まとめ

「何年で傷むか」は一律には示せません。建物の構造、立地、もともとの状態によって進み方が変わるためです。

ただし傾向はあります。敷地のほうが先に変化します。雑草は数か月、樹木の越境は1〜2年、建物の破損は数年以上。建物だけを見ていると、すでに変化が始まっている物件を見落とします。

外から見えるのは、屋根・外壁・雨樋・建具・基礎・塀など。とくに雨樋は見落とされやすく、小さな不具合が時間をかけて別の問題につながることがあります。

一方、建物内部、裏側、構造の状態は見えません。耐震性の判定には専門的な診断が必要です。

そして状態が進むほど選択肢は減ります。修繕より解体が現実的になり、活用の道も閉じていく。早い段階で見つけられれば、選択肢は多く残ります。

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