空き家問題はなぜ解決しないのか|発生から除却までの4段階

空き家問題はなぜ解決しないのか|発生から除却までの4段階

空き家対策が始まって10年以上が経ちました。空家法の施行は2015年、2023年には改正法も施行されています。それでも全国の空き家率は13.8%で過去最高です。

制度が足りないわけではありません。補助金も、税制の特例も、活用促進の仕組みも整備されています。それでも数字が下がらないのは、複数の段階で同時に詰まっているからです

この記事では、空き家が発生してから解消されるまでを4段階に分け、それぞれどこで詰まっているのかを整理します。事業者としてどこに関われるかも、あわせて示します。

この記事の結論

  • 構造は発生・把握・流通・除却の4段階に分けられる
  • 発生は止められない。約7割が死亡・施設入居によるもの
  • 把握で詰まる。町丁目単位のデータは公表されていない
  • 流通で詰まる。接道・状態・共有・感情が障害になる
  • 除却で詰まる。費用と判断が止める

①発生の段階

空き家がどう生まれるか。国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査では、次のとおりです。

原因 割合
死亡 58.3%
転居 26.9%
老人ホームなどの施設へ入居 11.3%

死亡と施設入居で約7割。高齢期の変化によって発生しています。そして取得方法の57.9%は相続です。

発生は止められない

これは対策の問題ではありません。人が亡くなれば、その人が住んでいた家は空きます。65歳以上の世帯員がいる世帯の81.6%が持ち家に住んでいる以上、発生は続きます。

加えて、新築の供給も続いています。大阪市では住宅総数が5年間で9.1%増えました。発生と供給の両方が続けば、総数は増え続けます

「増やさない」より「回す」

発生を止められない以上、問題は解消のスピードです

実際に動いている数字もあります。直近1年間で、使用目的のない空き家の14.8%が空き家でなくなりました。理由の1位は除却22.7%、2位は貸した15.5%と所有者や親族が居住した15.5%です。

発生する量と、解消する量。この差が縮まらない限り、総数は増えます。事業者が関われるのは、解消の側です。

②把握の段階

次に詰まるのが、どこにあるか分からないという段階です。

情報源 分かること 限界
住宅・土地統計調査 市区町村単位の推計値 町丁目以下は公表されない
登記情報 所有者、権利関係 空き家かどうかは分からない
空き家バンク 登録された物件 所有者が申し込んだもののみ
航空写真 建物の存在 住んでいるかは分からない

どの情報源も、個別の建物が空き家かどうかを教えてくれません

バンクに載るのはごく一部

全国版空き家・空き地バンクの掲載件数は、アットホーム版で1万1,117件。参画自治体は888です。

一方、放置型の空き家は385万6,000戸。桁が3つ違います。バンクは所有者の申し込みを待つ仕組みなので、動いていない所有者の物件は載りません。

自治体でも把握は容易ではない

自治体には課税情報の内部利用など民間にない手段がありますが、所在と状態の把握には現地の確認が必要です

空家等対策計画には法定の記載事項として「空家等の調査に関する事項」が含まれます。実態把握をどう行うかを、計画に書く必要があるということです

③流通の段階

把握できても、次の段階で止まります。売却や賃貸が成立しないという問題です。

障害 内容
接道 建替えができなければ買い手が限られる
状態 改修費用が読めない、解体が前提になる
共有 売却には原則として全員の同意が必要とされている
感情 亡くなった家族の家を手放す判断がつかない
市場 買い手・借り手がいない地域がある

接道は空き家に偏る

京都市の資料は、接道している道の幅員が狭いほど空き家率が高い傾向にあるとしています。神戸市でも放置型の36%が幅員4メートル未満の道路にしか接していません。賃貸用と売却用はいずれも28%です。

建替えができず車も入らないから流通に乗らず、そのまま残る。この構図が数字に表れています。

市場そのものが成立しない地域もある

家賃水準を見ると、地域差が分かります。和歌山県は1畳当たり2,152円で全国44位。貸す動機が働きにくく、空き家が放置型に流れやすくなります

一方、奈良県は1か月5万1,996円で全国9位。賃貸市場が空き家を吸収しやすい構造です

同じ近畿でも、構造が正反対になります。全国一律の対策では対応できない部分です

④除却の段階

流通しない物件は、最終的に除却の対象になります。ここでも詰まります。

障害 内容
費用 解体費用を誰が負担するか
更地にすると住宅用地特例が外れる
判断 解体後の使い道が決まらない
制度の周知 補助制度を知らない、着手前申請を逃す

税の説明が誤解されている

「解体すると税金が6倍になる」という説明を見かけますが、これは不正確です

特例が外れるのは勧告を受けた場合に限られ、負担調整措置により課税標準額の上限は評価額の70%。固定資産税で最大約4.2倍という計算になります。

また解体すれば建物分の固定資産税はなくなります。全体でどうなるかは、土地と建物の評価額によって変わります

着手前申請が壁になる

多くの自治体が解体費用の補助制度を設けています。補助率は解体費の1/3〜1/2程度、上限は50万〜100万円が中心です。

ただしほとんどの制度で工事着手前の申請が必要です。解体してから申請しても対象外になります。制度を知らずに工事を進めてしまえば、使えません

把握の段階から関われます。

現地調査で所在と状態を確定し、所有者の特定まで対応します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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どこで関われるか

4段階のうち、事業者が関われる部分を整理します。

段階 関われる立場 できること
発生 士業 相続前の相談を受ける
把握 調査会社、自治体 所在と状態を確定する
流通 不動産会社、買取再販、管理会社 売却・賃貸・管理の選択肢を示す
除却 解体会社 解体と補助制度の案内

相続前の対策が効く

令和6年の調査で、興味深い結果が出ています。相続前に対策をしていない空き家は、していた空き家と比べて放置される割合が約1.5倍(45.1%対29.4%)でした。

相続前に対策を実施していた世帯は23.0%。内容は「被相続人との話し合い」が16.7%で最多です。

準備なく相続された家ほど、そのまま止まりやすい。発生の段階で関われるとすれば、ここになります。

把握の段階は現地でしかできない

統計は市区町村単位の推計値、登記情報は所有者しか分からない、バンクは申し込みを待つ仕組み、航空写真は上から見えるものだけ。

どこに、どういう状態の空き家があるかを確定するには、現地を歩くしかありません。この段階が埋まらなければ、その先の流通も除却も動きません。

目的によって、関わる段階が変わる

立場 主に関わる段階 調査で指定するとよい条件
不動産会社 把握・流通 戸建てに限定し、状態と接道を記録
買取再販 流通 状態別の分類
解体会社 除却 状態と接道、隣家との距離
管理会社 流通(保留期間) 管理されていない、かつ傷みが軽微な物件
士業 発生・流通 地番を含むリスト
自治体 4段階すべて 町丁目単位で全域、状態別の分類

管理は「止まっている間」の受け皿

流通も除却も進まない物件は、当面持ち続けるしかありません。この期間の受け皿が管理サービスです

実際、使用目的のない空き家の40.6%は「空き家として所有しておく」意向を持っています。この層は売却の対象ではありませんが、管理の対象にはなります

自治体は4段階すべてに関わる

把握は実態調査、流通は活用促進やバンク、除却は補助制度と措置。発生の段階でも、相談窓口や制度の周知という関わり方があります

ただしどの段階でも、対象物件がどこにあるかを把握していることが前提になります。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物の状態と接道の状況を記録項目に含めることができます。流通に乗せられる物件と、解体を前提に話をする物件を分けて扱えます。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する状態の区分を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。統計や地図では埋まらない段階を押さえる工程です。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

構造を踏まえるときの注意点

よくあるつまずき

  • 発生を止めようとする/約7割は死亡・施設入居によるものです。止められません
  • 統計の数字から物件を特定しようとする/町丁目単位のデータは公表されていません
  • バンクだけを情報源にする/掲載されているのは所有者が登録した物件のみです
  • 「税金が6倍になる」と伝える/勧告を受けた場合に限られ、上限も約4.2倍です
  • 解体の補助制度で着手前申請を逃す/工事を始めてから申請しても対象外になります

よくあるご質問

空き家は今後も増えますか?

発生の約7割は死亡・施設入居によるものです。65歳以上の世帯員がいる世帯の81.6%が持ち家に住んでいることを踏まえると、発生そのものは続くと考えられます。ただし直近1年間で14.8%が空き家でなくなっており、解消も進んでいます。

町丁目単位の空き家数は分かりますか?

公表されていません。住宅・土地統計調査で表章されるのは市区および人口1万5千人以上の町村までです。町丁目単位の実数は、現地調査で確認する形になります。

状態別に分類したリストを作れますか?

できます。建物の状態を記録項目に含めていただければ、劣化の程度で分類したリストを納品します。流通に乗せられる物件と、解体を前提に話をする物件を分けて扱えます。

接道の状況も記録してもらえますか?

ご相談ください。外観から確認できる範囲で、前面道路の状況を記録項目に組み込めます。ただし正確な幅員の測定や道路種別の確認は行いません。

自治体でも利用できますか?

ご利用いただいています。空家等対策計画には「空家等の調査に関する事項」が法定の記載事項として含まれます。町丁目単位で調査し、状態別に分類した納品にも対応します。

まとめ

空き家の構造は4段階に分けられます。発生・把握・流通・除却です。

発生は止められません。約7割は死亡・施設入居によるもので、65歳以上の世帯員がいる世帯の81.6%が持ち家に住んでいます。加えて新築の供給も続きます。

だから問題は解消のスピードです。直近1年間で14.8%が空き家でなくなっていますが、発生する量との差が縮まらなければ総数は増えます。

そして解消の入口が把握です。統計は市区町村単位、登記は所有者のみ、バンクは申し込み待ち、航空写真は上から見えるものだけ。どこに、どういう状態の空き家があるかを確定するには、現地を歩くしかありません。

この段階が埋まらなければ、その先の流通も除却も動きません。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げてください。

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