転居で空き家になった物件をどう見つけるか|相続とは違う層

空き家の話は、相続を前提に語られることが多くなります。実際、空き家の57.9%は相続によって取得したもので、空き家になった原因の58.3%は所有者の死亡です。
ただし、それだけではありません。空き家になった原因の26.9%は転居です。4分の1以上が、所有者が生きているまま空き家になっています。
そしてこの層は、相続由来の空き家とは性質が違います。話が進みやすい条件が揃っていることが多く、実務上の扱いも変わります。この記事では、その違いと見つけ方を整理します。
この記事の結論
- 空き家になった原因の26.9%は転居。相続とは別の層
- 所有者本人が判断できる。共有になっていないことが多い
- 放置期間が短く、建物の状態も比較的良い
- 登記も整理されている可能性が高く、所有者にたどり着きやすい
- ただし外観から原因は判断できない。登記情報で確認する
記事の目次
空き家になった原因の内訳
国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査によれば、次のとおりです。
| 原因 | 割合 |
|---|---|
| 死亡 | 58.3% |
| 転居 | 26.9% |
| 老人ホームなどの施設へ入居 | 11.3% |
転居は2番目に多い原因です。そして死亡や施設入居と違い、所有者本人が自分の意思で移っています。
取得方法から見ても一定数ある
空き家の取得方法を見ると、相続以外も一定の割合を占めます。
| 取得方法 | 割合 |
|---|---|
| 相続 | 57.9% |
| 新築・建て替え | 17.1% |
| 既存住宅を購入 | 14.2% |
| 新築住宅を購入 | 4.6% |
| 贈与 | 2.3% |
自分で取得した住宅(新築・建て替え・購入)は合わせて35.9%です。この層の多くは、所有者本人が住んでいた家ということになります。
相続由来との違い
実務上、次の点が変わります。
| 項目 | 相続由来 | 転居由来 |
|---|---|---|
| 所有者 | 相続人。共有のことがある | 本人。単独名義が多い |
| 判断 | 全員の同意が必要な場合がある | 本人が決められる |
| 登記 | 未了のことがある | 整理されている可能性が高い |
| 放置期間 | 長いことがある | 比較的短い |
| 感情 | 亡くなった家族の家 | 自分が住んでいた家 |
合意形成、所有者の特定、建物の状態。いずれも転居由来のほうが条件が良くなります。
所有者にたどり着きやすい
相続由来の空き家では、名義が故人のままということがあります。この場合、実際の権利者は相続人ですが、それが誰かは登記簿に書かれていません。
戸籍をたどる必要がありますが、職務上請求ができるのは士業に限られます。民間企業にできるのは登記情報までです。
転居由来なら本人の名義
一方、転居であれば所有者は生きていて、名義も本人のままです。
ただし登記簿の住所は登記した時点のものです。転居しても変更登記をしなければ更新されません。ここは注意が必要です。
なお2026年4月から住所等変更登記が義務化されました。変更日から2年以内の申請が求められ、施行前の変更も対象で2028年3月31日までとされています。長期的には改善に向かう変化です。
建物の状態が良い可能性が高い
放置期間が短ければ、建物の傷みも進んでいません。
神戸市の例では、兵庫区の空き家が5年間で80.3%増加しました。ところが腐朽・破損があるのは4.3%だけです。
| 区 | 空き家の増減 | 腐朽・破損あり |
|---|---|---|
| 兵庫区 | 80.3%増 | 4.3% |
| 長田区 | 5.6%減 | 23.4% |
新しく空き家になった住宅が多い地区では、状態がまだ良い物件が残っています。逆に長田区のように空き家が減っている地区では、長く残り続けている物件が多くなります。
売却・賃貸の対象になる
状態が良ければ、そのまま流通に乗せられる可能性があります。改修費を抑えられるぶん、買取再販でも成立しやすくなります。
賃貸活用の対象にもなります。令和6年の調査によれば、相続空き家のうち構造上の不具合や腐朽・破損がないのは28.2%。転居由来であれば、この割合はさらに高いと考えられます。
外観から原因は分からない
ここが制約です。その空き家が相続によるものか、転居によるものかは、外から見て判断できません。
| 分かること | 分からないこと |
|---|---|
| 使われていない住宅の所在 | 空き家になった原因 |
| 外観から見た状態 | 所有者が生きているか |
| おおよその放置期間 | 相続の有無 |
| 敷地の管理状況 | 共有かどうか |
庭木が伸びている、郵便物が溜まっている。これらは相続でも転居でも施設入居でも起こります。
登記情報で手がかりが得られる
登記事項証明書には、所有権の移転登記が行われた時期と原因が記載されます。原因が「相続」であれば、その時期が分かります。
逆に、売買で取得したまま移転がなければ、本人が所有し続けていると分かります。この場合、転居や施設入居による空き家である可能性が高くなります。
| 工程 | やること |
|---|---|
| 1 | 現地調査で使われていない住宅を確定し、地番を割り出す |
| 2 | 登記情報から所有者事項と移転の経緯を確認する |
| 3 | 接触する |
所有者事項のみであれば1件140円(登記情報提供サービス)で取得できますが、移転の経緯まで確認するなら全部事項が必要です。件数が多い場合は、まず現地調査で対象を絞ってから取得するほうが効率的です。
状態の良い空き家を、分けて抽出できます。
放置期間が短い物件は、所有者にもたどり着きやすくなります。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。
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継続調査で見つけやすくなる
転居由来の空き家を見つけるうえで、継続調査は有効です。
前回はなかったのに今回は空き家になっている。この物件は、比較的最近空き家になったと分かります。
| 前回比較で分かること | 意味 |
|---|---|
| 新たに空き家になった | 放置期間が短い。状態も良い可能性が高い |
| 空き家でなくなった | 売却・入居・取り壊しのいずれか |
| 状態が悪化した | 対応の優先度を上げる |
「どれだけ増えたか」より「どの物件が動いたか」のほうが実務的です。
ただし比較が成立するには、範囲・判定基準・記録項目・調査時期を揃える必要があります。基準が変われば、実態の変化か基準の変化か区別できません。
接触の設計
相続由来と転居由来では、伝え方も変わります。
| 項目 | 相続由来 | 転居由来 |
|---|---|---|
| 配慮すべき点 | 亡くなった家族の家である | 本人が住んでいた家である |
| 制度の材料 | 相続登記の義務化、3,000万円控除 | 住所等変更登記の義務化 |
| 判断の速さ | 時間がかかることがある | 比較的早い |
期限を強調しない
どちらの場合でも、期限を強調して急かすのは避けてください。相手は身構えます。
制度としてこういう仕組みがあるという事実を伝え、詳しくは市区町村の窓口や専門家へと案内する。この形が最も信頼されます。
なお「放置すると固定資産税が6倍になる」という説明は不正確です。特例が外れるのは勧告を受けた場合に限られ、負担調整措置により固定資産税で最大約4.2倍という計算になります。
目的によって、狙う層が変わる
| 立場 | 転居由来の空き家との関わり | 調査で指定するとよい条件 |
|---|---|---|
| 不動産会社(仕入れ) | 最も進めやすい層 | 状態の良い物件を区別する |
| 買取再販 | 改修費を抑えられる | 状態別の分類 |
| 賃貸管理会社 | 賃貸活用の提案先 | 状態+立地条件 |
| 空き家管理会社 | まだ間に合う段階の物件 | 敷地の管理状況 |
| 解体会社 | 対象になりにくい | 傷みが進んだ物件を別に指定 |
解体の対象にはなりにくい
状態が良ければ、解体より売却や賃貸が現実的な選択肢になります。
解体の提案先を探すなら、傷みが進んだ物件を条件に指定してください。京都市の資料では、放置型の腐朽・破損率が一戸建28%、長屋建52%、共同住宅11%と示されています。
自治体は活用の候補として把握する
実態調査を措置のためだけに設計すると、状態の良い空き家が拾えません。活用促進を計画に掲げているなら、この層の把握が必要です。
空き家バンクへの登録を働きかける候補、移住定住施策の対象。いずれも「まだ使える空き家」が前提です。
費用・期間・納品物
弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。
| 項目 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金 | 10,000㎡あたり 1,000円 |
| 追加調査(1項目) | 200円 |
| 登記情報取得(所有者事項) | 750円/件 |
| DM印刷・封入・発送代行 | 180円/通 |
調査では、建物の状態を記録項目に含めることができます。劣化の程度を段階に分けて分類すれば、状態の良い物件を区別できます。
登記情報の取得は、調査で特定した地番をもとに行います。地番の割り出しから取得、リストへの反映までを含む金額です。
納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。
弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。
依頼から納品までの流れ
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する状態の区分を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
指定条件に該当する建物を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。劣化の程度を段階に分けた記録にも対応します。
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。
進めるときの注意点
よくあるつまずき
- 空き家をすべて相続由来と考える/26.9%は転居によるものです
- 外観から原因を判断する/庭木も郵便受けも、どの原因でも同じ状態になります
- 登記簿の住所を現住所と考える/転居していても変更登記がなければ古いままです
- 傷んだ物件ばかり狙う/状態の良い物件のほうが話は進みやすくなります
- 相続前提の内容で接触する/本人が住んでいた家である場合があります
よくあるご質問
転居による空き家だけを調べられますか?
外観から原因は判断できません。現地調査で使われていない住宅を確定し、登記情報から所有権移転の経緯を確認する流れになります。売買で取得したまま移転がなければ、本人が所有し続けていると分かります。
状態の良い空き家だけを抽出できますか?
できます。建物の状態を記録項目に含めていただければ、劣化の程度で分類したリストを納品します。放置期間が短い物件は、所有者にもたどり着きやすくなります。
新しく空き家になった物件は分かりますか?
継続して調査していれば、前回との比較で分かります。前回はなかったのに今回は空き家になっている物件は、比較的最近空き家になったと判断できます。
所有者が生きているかどうか分かりますか?
調査では分かりません。登記情報で所有権移転の経緯を確認すれば手がかりが得られます。相続による移転がなく、売買で取得したままであれば、本人が所有し続けている可能性が高くなります。
DMの発送まで依頼できますか?
できます。調査で特定した地番をもとに登記情報を取得し、そのまま印刷・封入・発送まで代行します。ただし登記簿の住所は登記時点のものであるため、一定の返送は避けられません。
まとめ
空き家の話は相続を前提に語られがちですが、空き家になった原因の26.9%は転居です。4分の1以上が、所有者が生きているまま空き家になっています。
そしてこの層は、相続由来とは条件が違います。所有者本人が判断でき、共有になっていないことが多く、登記も整理されている可能性が高い。放置期間が短いぶん、建物の状態も良くなります。
合意形成、所有者の特定、建物の状態。いずれも転居由来のほうが有利です。
ただし外観から原因は判断できません。庭木が伸びている、郵便物が溜まっている。これらは相続でも転居でも施設入居でも起こります。
現地調査で使われていない住宅を確定し、登記情報で移転の経緯を確認する。この2段階が必要です。継続して調査していれば、前回との比較で新しく空き家になった物件も分かります。
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