空き家リストが使われないまま古くなる理由|運用の設計と初動

空き家リストが使われないまま古くなる理由|運用の設計と初動

調査を依頼して、リストが納品される。ここまでは順調に進みます。問題はその後です。

数か月後に「あのリスト、どうなりましたか」と伺うと、半分も手をつけられていないことがあります。精度が悪かったわけでも、対象が少なかったわけでもありません。動かす仕組みがなかっただけです。

リストは、納品された瞬間が最も価値の高い状態です。そこから時間とともに、確実に価値を失っていきます。この記事では、何がリストを古くするのか、使われないまま終わるのはどういう場合かを整理し、受け取る前に決めておくべきことを3つに絞ってお伝えします。

この記事の結論

  • リストは納品時が最も価値が高い。取り壊し・売却・所有者の変化で古くなる
  • 使われない理由は精度ではなく運用の設計にある
  • 受け取る前に決めるのは担当・件数・期限の3つだけ
  • 1件あたりに時間をかけるより、一巡させるほうが先
  • 発送数・反応数を記録すれば、次の調査範囲が数字で決まる

リストは何によって古くなるのか

時間の経過そのものが問題なのではありません。現地で起きる変化が、リストの内容を実態から引き離していきます

変化 リストへの影響
取り壊された 物件そのものが存在しない
売却された 所有者が変わり、対象から外れる
入居があった 空き家ではなくなる
建物の状態が悪化した 提案の内容が変わる
所有者が転居した 登記上の住所に届かなくなる
相続が発生した 名義人と実際の権利者が食い違う

取り壊しは思ったより早い

特に効いてくるのが取り壊しです。総住宅数が減少している県では、取り壊しが新築の供給を上回って進んでいます

たとえば高知県では総住宅数が5年間で1.0%減、長崎県でも0.7%減となっています。こうした地域では、数年前のリストにすでに現存しない物件が混ざっていると考えたほうが正確です。

逆に住宅が増えている地域でも、空き家が売却や入居で対象から外れる動きは常にあります。どちらの方向であれ、リストは静止していません

使われないまま終わる4つのパターン

①担当と件数が決まっていない

最も多いパターンです。「営業部で使ってください」とだけ伝えて配ると、誰も自分の担当だと思いません。

全員の仕事は誰の仕事でもなくなります。1人でも構わないので、このリストを扱う人を決めること。複数人なら、エリアか件数で分けておくことです。

②1件あたりに時間をかけすぎる

1件ずつ丁寧に調べ、資料を作り込んでから当たろうとすると、10件目まで進むのに数週間かかります。その間に、残りの物件の状況は変わっていきます。

最初の一巡は、粗くてもかまいません。DMを送る、電話をかける、現地を見に行く。どれか1つの動作を全件に対して行い、反応があったものだけ深掘りする。この順番のほうが、結果的に接触できる件数は増えます。

③反応がないと止まる

DMを100通送って、返信が2件。この結果を見て「効果がない」と判断し、そこで止まってしまうことがあります。

空き家の所有者は、急いでいません。相続の整理、親族との調整、解体費用の検討。判断に時間がかかる相手であることが前提です。1回の反応率だけで打ち切ると、時間差で動く相手を取りこぼします。

④記録が残らない

誰にいつ何を送ったか、どんな反応があったかが残っていないと、次の判断ができません。同じ相手に同じ内容を再送してしまうこともあります。

記録がないリストは、一巡した時点で価値がゼロになります。逆に記録があれば、2回目の調査で「前回反応がなかったエリアは外す」といった判断ができます。

リストの寿命は「一巡にかかる時間」で決まる

100件のリストがあるとして、週に5件しか処理しなければ一巡に20週間かかります。最後の1件に当たる頃には、最初に調べた情報から5か月近く経っています。

週に20件処理すれば5週間で一巡します。同じリストでも、情報の鮮度がまったく違う状態で使えることになります。

大切なのは、処理できる件数から逆算してリストの規模を決めることです。1,000件のリストを作っても、月に20件しか動けなければ4年かかります。まず1〜2地区で実施することをおすすめしているのは、費用の面だけでなく、この理由もあります。

受け取る前に決めておく3つのこと

難しいことではありません。次の3つを、納品前に決めておくだけです。

決めること 具体的に 決まっていないと
担当 誰がこのリストを扱うか。複数人なら分け方も 誰も手をつけない
件数 1週間あたり何件処理するか 一巡にかかる時間が読めない
期限 いつまでに一巡させるか 後回しになり続ける

この3つが決まっていれば、調査を発注する段階でリストの規模も決まります。週20件で3か月なら、約240件。それに見合う調査範囲を設定すればよいことになります。

次の一手も先に決めておく

DMを送って反応がなかった場合にどうするか。再送するのか、別の手段にするのか、対象から外すのか。

これを決めていないと、一巡した後にリストが宙に浮きます。「反応がなかったものは3か月後に再送する」と決めておけば、その時点で次の作業が自動的に始まります。

目的によって、回し方が変わる

立場 主な目的 一巡の目安 記録しておくこと
不動産会社 売却・買取につながる物件の発掘 3か月以内 接触方法、反応の有無、次回の連絡時期
リフォーム・外壁塗装会社 施工の提案先を探す 施工の繁忙期を外して設定 提案内容、断られた理由、再訪の可否
自治体 実態把握、重点地区の選定 年度内 状態別の件数、前回調査との差分

自治体の場合、継続的に同じ範囲を調査すれば前回との比較ができます。件数集計を年度ごとに残しておけば、対策の効果検証の材料になります。この場合、記録そのものが成果物になります。

処理できる件数に合わせて、範囲をご提案します。

1週間に何件動けるかをお聞かせいただければ、それに見合う調査範囲を設計します。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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一巡した後にやること

リストを一巡させたら、そこで終わりではありません。手元には次の判断材料が残っています

残る記録 次に使えること
発送数と返送数 登記上の住所がどれだけ有効だったか
エリア別の反応数 次にどの地区を調査するか
反応があった物件の特徴 次回の調査条件をどう絞るか
断られた理由 提案内容やタイミングの見直し

たとえばA地区の反応率がB地区より明らかに高ければ、次はA地区の周辺を調査するという判断ができます。これは統計データからは出てこない、自社の実績に基づく情報です。

再調査のタイミング

同じ範囲をもう一度調査する価値があるのは、次のような場合です。

  • 前回から1年以上経過し、状況が変わっている可能性がある
  • 反応率が高かったエリアで、対象を取りこぼしていないか確認したい
  • 前回とは違う調査項目(空き地、古家など)を追加したい
  • 自治体で、対策の効果を前回と比較したい

2回目以降は、1回目の記録があるぶん精度が上がります。どこを重点的に見るか、どの条件で絞るかが、前回の実績から決められるためです。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。処理できる件数が決まっていれば、それに見合う範囲を設定できます。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。件数集計を残しておけば、次回調査との比較にそのまま使えます

所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。社内で封入作業をする時間を、接触そのものに充てられます。

依頼から納品までの流れ

目的と処理体制のヒアリング
何のためのリストか、そして週にどれくらい処理できるかを確認します。処理能力に見合った調査範囲をご提案します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。WEB上のデータでは把握できない現況を押さえる工程です。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

リストを動かすときの注意点

よくあるつまずき

  • 処理できる件数を超える規模で発注する/一巡に時間がかかるほど、後半の情報は古くなります
  • 「営業部で使って」と配る/担当を決めないと、誰も自分の仕事だと思いません
  • 1件ずつ作り込んでから当たる/最初の一巡は粗くてかまいません。反応があったものを深掘りしてください
  • 1回の反応率で打ち切る/空き家の所有者は急いでいません。時間差で動く相手を取りこぼします
  • 記録を残さない/記録がないリストは、一巡した時点で価値がゼロになります

よくあるご質問

どれくらいの件数から始めるとよいですか?

週にどれくらい処理できるかによります。週20件で3か月かけて一巡させるなら、およそ240件が目安です。処理体制をお聞かせいただければ、それに見合う調査範囲をご提案します。

リストはどれくらいで古くなりますか?

一律の期限はありません。ただし取り壊しや売却は常に起きているため、時間の経過とともに実態からずれていきます。一巡にかかる期間を短くすることが、鮮度を保つ最も確実な方法です。

同じ範囲をもう一度調査する意味はありますか?

あります。1年以上経過している場合、状況が変わっている可能性があります。また、前回の記録があるぶん2回目は精度が上がります。前回とは違う調査項目を追加することもできます。

件数の集計データは残せますか?

Excel件数リスト(地区別・分類別集計)の形で納品します。年度ごとに残しておけば、次回調査との比較にそのまま使えます。

DMの発送まで頼めば、社内の作業は減りますか?

減ります。所有者情報の取得から印刷・封入・発送まで一括で対応するため、社内で住所の名寄せや封入作業をする必要がありません。その時間を接触や商談に充てられます。

まとめ

リストが使われないまま古くなる原因は、精度ではありません。取り壊し、売却、入居、所有者の転居。現地では常に変化が起きていて、リストはその瞬間の記録です

だからこそ、一巡にかかる時間が価値を決めます。週5件なら20週間、週20件なら5週間。同じリストでも、鮮度がまったく違う状態で使えることになります。

決めておくのは3つだけです。誰が扱うか、週に何件処理するか、いつまでに一巡させるか。この3つが決まっていれば、必要な調査範囲も自動的に決まります。

そして一巡したら、記録が残ります。エリア別の反応率、返送率、断られた理由。これは統計からは出てこない、自社だけが持つ情報です。2回目の調査は、その記録をもとに設計できます。

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