空き家調査を自社で行う手順|必要な準備と押さえるべき工程

空き家調査を自社で行う手順|必要な準備と押さえるべき工程

空き家調査は、外注しなければできない作業ではありません。調査員が対象エリアを歩き、外観を確認して記録する。やっていること自体は、自社でも再現できます。

実際、範囲が限られていれば自社実施のほうが早い場面もあります。営業所の近隣だけ、数十件だけ、1回きり。こうした条件なら、外注する意味は大きくありません

この記事では、自社で調査を行う場合の手順を整理します。準備するもの、工程、そして見落とされやすい作業まで含めてお伝えします。

この記事の結論

  • 工程は5つ。範囲設定・候補抽出・現地調査・地番の割り出し・データ化
  • 先に決めるのは判定基準。これがないと記録がばらつく
  • 見落とされやすいのは移動時間・データ化・地番の割り出し
  • とくに地番の割り出しは件数に比例して負担が増える
  • 1回きり・近隣だけなら自社実施で十分成立する

準備するもの

調査を始める前に、次のものを揃えます。

準備するもの 用途
調査範囲を示した地図 歩く範囲を確定し、ルートを組む
判定基準の文書 何をもって空き家とするかを統一する
記録様式 現地で書き込む用紙、または入力フォーム
筆記具・クリップボード 歩きながら記録するため
ブルーマップ等 地番を調べる場合に使用する

このうち最も重要なのが判定基準です。複数人で調査するなら必須ですし、1人でも日をまたげば判断はぶれます。

服装と身分の明示

住宅地を歩いて建物を見て回る作業です。近隣から不審に思われることがあります

社名の入った服装や名札を用意し、声をかけられたときにどう説明するかを決めておいてください。あらかじめ地域の自治会や交番に伝えておく方法もあります

工程は5つ

①調査範囲を決める

市全域ではなく、住宅が集まっている範囲を町丁目単位で切ります。山林や農地を含めても、歩く時間が増えるだけです。

1日で回れる範囲を先に見積もり、そこから全体の日数を計算します。住宅の密度によって、同じ時間で回れる件数は大きく変わります

②調査候補を抽出する

地図上で、対象になりそうな建物に当たりをつけます。航空写真や地図サービスを使えば、造成年代のそろった住宅地や、建て方の傾向はある程度分かります。

ただしこの段階では候補までです。住んでいるかどうかは、上から見ても分かりません

③現地を歩いて記録する

実際に歩き、1軒ずつ外観を確認します。見る材料は、郵便受け、窓とカーテン、庭木と雑草、駐車場所、建物の状態、メーターなど。

単一の材料では判断できません。郵便受けが溜まっていても長期入院かもしれず、カーテンがあっても前の居住者のものかもしれない。複数を突き合わせて判断します。

敷地には立ち入りません。公道から見える範囲での確認になります

④地番を割り出す

所有者を調べるには、登記情報が必要です。そして登記情報を請求するには地番が必要で、普段使っている住所(住居表示)では取得できません

地番を調べる方法は次のとおりです。

方法 内容
ブルーマップ 住居表示と地番を重ねた住宅地図。図書館や法務局で閲覧できる
法務局で照会 窓口の地番検索用の地図で確認する
公図で確認 土地の形状と地番を示した図面を取得する

1件ずつ変換する作業になります。数件なら問題ありませんが、数百件になると相当な時間がかかります。

⑤データ化する

現地で書いたメモを、地図やリストの形に整理します。この工程が想定より時間を取ります

作業 内容
手書きメモの清書 読み取れる形に整理する
地図への転記 位置を色分けして落とし込む
一覧表の作成 住所・地番・状態を表にする
集計 地区別・状態別の件数を出す

見落とされる3つの工数

自社実施の負担を見積もるとき、現地を歩く時間だけを計算しがちです。実際には次の3つが加わります。

  • 移動時間/事務所から現地への往復、エリア間の移動
  • データ化/調査そのものと同等かそれ以上の時間がかかることがある
  • 地番の割り出し/件数に比例して増える。数百件では別作業になる

加えて、その社員が本来の業務をできないという機会損失もあります。営業や施工の対応が止まることを含めて計算してください。

判定基準を先に決める

調査を始めてから基準を考えると、前半と後半で記録がずれます。次の3点を先に決めておいてください。

決めること 具体的に
何を材料とするか 郵便受け、カーテン、庭木など。優先順位も決める
どの粒度で記録するか 有無だけか、程度を段階に分けるか
迷った物件をどう扱うか 保留の受け皿を用意する

とくに3つ目は忘れられがちです。「空き家か否か」の2区分しか用意しないと、判断がつかない物件がどちらかに押し込まれます。

保留として別に記録し、判断がつかない理由も残しておけば、あとから扱いを決められます。

次回のために文書で残す

調査を継続するなら、基準は文書で残してください。基準が変われば、件数が増減しても実態が変わったのか基準が変わったのか区別できません

担当者が異動・退職すれば、記録がなければ再現できなくなります。

記録様式をどう作るか

現地で書き込む様式は、シンプルなほど続きます。

項目 記録の仕方
位置 地図上の番号と対応させる
建て方 戸建て/共同住宅/長屋建
判定 該当/非該当/保留
判断材料 該当したものにチェック
建物の状態 段階を選択
備考 特記事項のみ記入

自由記述を増やすと、現地での記入に時間がかかり、後の集計も難しくなります。選択式を中心に組んでください。

紙で記録するか、タブレット等で入力するかは、人員と件数によります。紙のほうが現地では早いことが多いものの、データ化の工程が別途必要になります

自社実施が向く条件

どこまでなら自社で成立するか、整理しておきます。

条件 自社実施が向く 外注が向く
頻度 1回だけ、または年に1回程度 継続的に、複数回実施する
範囲 営業所の近隣、限られた地区 複数の市町村、複数の県にまたがる
件数 数十件程度 数百件以上
人員 手の空いている社員がいる 本来業務に集中させたい
基準の統一 担当者が固定されている エリアや時期をまたいで比較したい

数十件の範囲であれば、自社実施のほうが早く動けます。発注の手間もありませんし、条件を途中で変えることもできます。

分岐点は地番の割り出し

負担が大きく変わるのは、所有者まで調べるかどうかです。現地を歩いて記録するだけなら、範囲を絞れば1日で終わります。

しかし所有者を調べるとなると、地番の割り出しが件数分だけ発生します。数百件になると、この作業だけで数日から数週間かかります

弊社では、調査で特定した地番をもとに登記情報の取得を750円/件(税別)で代行しています。地番の割り出しから取得、リスト化までを含む金額です。

一部だけを外注することもできます。

現地調査は自社で、地番の割り出しと所有者の特定だけを依頼するといった形にも対応します。
まずはご相談ください。

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継続する場合の注意

1回きりであれば問題は起きにくいのですが、継続すると別の課題が出ます

課題 内容
基準の継承 担当者が変われば判断がずれる
範囲の管理 どこを調査済みか分からなくなる
データの蓄積 前回との比較ができる形で残っているか
本来業務との両立 繁忙期には調査が止まる

とくに範囲の管理は、記録がなければ重複や漏れが生じます。調査済みの範囲を地図上に残しておいてください。

季節の制約

積雪のある地域では、雪に覆われると屋根も敷地も確認できません。判断材料が一斉に減ります

また、自社の繁忙期には調査に人を出せません。年間のどの時期に実施するかを先に決めておくほうが、継続しやすくなります

目的によって、必要な工程が変わる

立場 主な目的 必要な工程
不動産会社 売却・買取につながる物件の発掘 5工程すべて。所有者の特定まで必要
リフォーム・外壁塗装会社 施工の提案先を探す 地番の割り出しは不要。ポスティングで足りる
自治体 実態把握、重点地区の選定 状態別の分類が必要。所有者は庁内情報で追える

リフォーム目的なら工程が減る

リフォームや外壁塗装の提案先は、人が住んでいる築古住宅です。居住者がいるため、ポスティングや訪問で接触できます。

地番の割り出しと登記情報の取得が不要になるぶん、自社実施の負担は大きく下がります。現地を歩いて記録し、地図に落とす。ここまでで運用できます。

費用・期間・納品物

外注する場合の費用も参考までにお伝えします。弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

1平方キロメートル(1,000,000㎡)であれば、基本料金は100,000円(税別)という計算になります。自社実施の人件費と比較する際の目安にしてください

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、判定基準を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、公道から確認できる範囲で複数の材料を突き合わせて判断し、記録します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

自社で行うときの注意点

よくあるつまずき

  • 判定基準を決めずに始める/前半と後半で記録がずれます
  • 現地を歩く時間だけで工数を見積もる/移動とデータ化が加わります
  • 地番の割り出しを軽く見る/件数に比例します。数百件なら別作業になります
  • 自由記述を増やす/現地での記入も後の集計も時間がかかります
  • 調査済みの範囲を記録しない/継続すると重複や漏れが生じます

よくあるご質問

一部だけ外注できますか?

できます。現地調査は自社で行い、地番の割り出しと登記情報の取得だけをご依頼いただくといった形にも対応します。件数と範囲を伺ったうえでご提案します。

判定基準の作り方を相談できますか?

できます。何を材料とするか、どの粒度で記録するか、迷った物件をどう扱うかについてご相談いただけます。自社実施を前提としたご相談も承ります。

調査中に声をかけられたらどうすればよいですか?

あらかじめ説明の仕方を決めておくことをおすすめします。社名の入った服装や名札を用意し、必要に応じて地域の自治会や交番に事前に伝えておく方法もあります。

地番の割り出しだけ頼めますか?

ご相談ください。対象の住所リストをお持ちであれば、そこからの対応が可能かを含めてご案内します。件数によって進め方が変わります。

自社と外注、どちらが安くなりますか?

範囲と件数によります。数十件・1回きりであれば自社実施のほうが早く済むことが多くなります。継続的に、複数エリアを、同じ基準で調べる場合は外注のほうが総コストは下がります。

まとめ

空き家調査は、外注しなければできない作業ではありません。工程は5つ。範囲設定・候補抽出・現地調査・地番の割り出し・データ化です。

始める前に決めておくべきは、判定基準。何を材料とするか、どの粒度で記録するか、迷った物件をどう扱うか。これがないと、前半と後半で記録がずれます。

そして工数の見積もりでは、移動時間・データ化・地番の割り出しを忘れないでください。とくに地番の割り出しは件数に比例し、数百件になると別作業になります。

数十件・1回きり・近隣だけなら、自社実施で十分です。発注の手間もなく、条件を途中で変えることもできます。継続的に複数エリアを同じ基準で調べる段階になったとき、外注を検討すればよいと考えています。

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