空き家の固定資産税は6倍になるのか|住宅用地特例の仕組み

「空き家を放置すると固定資産税が6倍になります」。空き家関連のDMやチラシで、よく見かける表現です。
この説明は、2つの点で正確ではありません。ひとつは、空き家であれば自動的にそうなるわけではないこと。もうひとつは、仮に特例が外れても6倍にはならないことです。
不正確な説明は、詳しい所有者には見抜かれます。そうでない所有者には、不要な不安を与えることになります。この記事では、住宅用地特例の仕組みを分解し、実際には何倍になるのかを計算で示します。
この記事の結論
- 特例が外れるのは勧告を受けたとき。空き家であれば自動的に外れるわけではない
- 助言・指導の段階では特例は継続する
- 特例が外れても6倍にはならない。負担調整措置により上限があるため
- 計算上は固定資産税が最大約4.2倍、都市計画税が最大約2.1倍
- 所有者への説明は正確に。断定は避け、市区町村の窓口や専門家へ案内する
記事の目次
住宅用地特例とは
住宅が建っている土地は、税負担が軽減されます。これが住宅用地特例です。面積によって2つに区分されます。
| 区分 | 面積 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 1戸あたり200㎡以下の部分 | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 評価額×1/3 | 評価額×2/3 |
たとえば敷地が300㎡の一戸建てであれば、200㎡分が小規模住宅用地、残り100㎡分が一般住宅用地として扱われます。
この特例は、住宅が建っていることが前提です。建物を解体して更地にすれば、適用されなくなります。空き家を解体せずに置いておく理由のひとつが、ここにあります。
特例が外れるのは「勧告」を受けたとき
2023年12月に施行された改正空家法により、管理不全空家等という区分が新設されました。勧告を受けると、住宅用地特例の対象から除外されます。
ただし重要なのは、そこに至るまでに段階があるということです。
| 段階 | 内容 | 特例の扱い |
|---|---|---|
| 助言・指導 | 適切な管理が行われていない状態に対する働きかけ | 特例は継続する |
| 勧告 | 指導しても改善されず、放置すれば特定空家等になるおそれが大きい場合 | 特例の対象から除外される |
特定空家等についても同様で、勧告を受けた敷地が特例の対象から外れます。
空き家であるというだけで特例が外れることはありません。市区町村による指導があり、それでも改善されない場合に勧告となり、そこで初めて税額に影響します。
指導の段階で対応すれば影響はない
逆にいえば、指導を受けた時点で管理を改善すれば、特例は維持されます。所有者に伝えるべきなのは「放置すると6倍になる」ではなく、「指導を受けた段階で対応すれば影響を避けられる」という点のほうです。
なぜ「6倍」は正確でないのか
小規模住宅用地の課税標準は評価額の1/6です。特例が外れれば1/6ではなくなるため、単純計算では6倍になります。しかし実際には、そこまで上がりません。
負担調整措置による上限がある
特例が外れた土地は「商業地等」として扱われます。この区分では、課税標準額の上限が評価額の70%と定められています。100%ではありません。
したがって、比較は次のようになります。
| 税目 | 特例あり | 特例なし(上限) | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 固定資産税(小規模住宅用地) | 評価額×1/6 | 評価額×70% | 最大約4.2倍 |
| 都市計画税(小規模住宅用地) | 評価額×1/3 | 評価額×70% | 最大約2.1倍 |
70%を1/6で割ると4.2、1/3で割ると2.1になります。固定資産税で最大約4.2倍、都市計画税で最大約2.1倍というのが計算上の上限です。
なお200㎡を超える一般住宅用地の部分は、もともと固定資産税の課税標準が1/3のため、倍率はさらに小さくなります。
解体して更地にした場合との違い
勧告を受けて特例が外れた場合と、自ら解体して更地にした場合では、税負担の変化が異なります。
| 状況 | 土地の税 | 建物の税 |
|---|---|---|
| そのまま(特例あり) | 軽減されている | かかる |
| 勧告を受けた | 軽減が外れる | かかる |
| 解体して更地にした | 軽減が外れる | かからなくなる |
解体すれば建物分の固定資産税はなくなります。土地の税負担は増えますが、建物分が消えるため、全体の増加は状況によって変わります。築古の木造住宅であれば建物の評価額は下がっているため、影響は建物の評価額次第です。
目的によって、この情報の使い方は変わる
| 立場 | この情報の使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 不動産会社 | 所有者に現状と選択肢を説明する材料 | 不安を煽らず、正確に伝える |
| リフォーム・外壁塗装会社 | 管理・修繕を提案する際の背景説明 | 指導段階での対応が有効だと伝える |
| 自治体 | 指導・勧告の運用と、所有者への周知 | 段階ごとの効果を明確に説明する |
所有者に説明するときの注意
税制の説明は、正確でなければ意味がありません。「必ず」「絶対に」といった断定は避けてください。土地の評価額、面積、地域によって実際の税額は変わります。
また、勧告を受けるかどうかは市区町村の判断です。営業する側が「勧告されます」と断定できる立場にはありません。
伝えるべきは、制度としてこういう仕組みがあるという事実と、詳しくは市区町村の窓口や税理士に確認してほしいという案内です。この形であれば、詳しい所有者にも信頼されます。
「その物件について書ける」リストをお出しします。
現地調査で確認した状態を記録しているため、一般論ではない提案ができます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。
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制度を知らない所有者は多い
2023年の改正から日が浅く、管理不全空家等という区分自体を知らない所有者は少なくありません。とくに物件から離れて住んでいる場合、市区町村からの通知も現地の状況も把握しにくくなります。
住宅・土地統計調査によると、世帯が現住居の敷地以外に持っている土地のうち、他県にあるものは全国平均で14.1%。神奈川県では33.8%にのぼります。所有者が遠方にいる物件では、情報が届いていない可能性が高くなります。
また、世帯が所有する空き家の61.6%は相続・贈与によって取得したものです。相続で引き継いだまま、制度の変化を知らずに年数が経過しているケースが想定されます。
あわせて相続登記の義務化も
2024年4月から、相続登記の申請が義務化されています。相続で不動産を取得したことを知った日から一定期間内に登記申請を行うことが求められ、過去に発生した相続についても対象となります。
税制と登記、両方の面で対応が必要になっている所有者は一定数います。正確な情報を届けることが、話が動くきっかけになります。
なお制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、所管する市区町村の窓口や税理士・司法書士などの専門家への確認をご案内ください。
費用・期間・納品物
弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。
| 項目 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金 | 10,000㎡あたり 1,000円 |
| 追加調査(1項目) | 200円 |
| 登記情報取得(所有者事項) | 750円/件 |
| DM印刷・封入・発送代行 | 180円/通 |
調査では、建物の状態を記録項目に含めることができます。管理が行き届いていない物件を把握しておけば、優先順位をつけて接触できます。
納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。
弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。
依頼から納品までの流れ
何のためのリストか(仕入れ/施工提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。管理の行き届き具合もこの工程で記録できます。
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。
税制を説明するときの注意点
よくあるつまずき
- 「放置すると6倍」と伝える/負担調整措置により上限があります。計算上は最大約4.2倍です
- 空き家なら自動的に特例が外れると説明する/勧告を受けた場合に限られます
- 助言・指導の段階で税額が上がると伝える/この段階では特例は継続します
- 「勧告されます」と断定する/勧告するかどうかは市区町村の判断です
- 解体を勧める際に建物分の税に触れない/解体すれば建物分の固定資産税はなくなります
よくあるご質問
空き家を持っているだけで固定資産税は上がりますか?
上がりません。市区町村長から特定空家等または管理不全空家等として勧告を受けた場合に、住宅用地特例の対象から除外されます。助言・指導の段階では特例は継続します。
特例が外れると本当に6倍になりますか?
なりません。特例が外れた土地は「商業地等」として扱われ、負担調整措置により課税標準額の上限が評価額の70%となります。小規模住宅用地との比較では、固定資産税が最大約4.2倍、都市計画税が最大約2.1倍という計算になります。
解体して更地にしたほうが税は安くなりますか?
状況によります。土地の特例は外れますが、建物分の固定資産税はかからなくなります。どちらが有利かは土地と建物の評価額によって変わるため、市区町村の窓口や税理士にご確認ください。
管理不全空家等の判断基準は何ですか?
適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態とされています。具体的な判断は市区町村が行います。
管理が行き届いていない物件を、調査で把握できますか?
外観から確認できる範囲で状態を記録します。屋根や外壁の劣化、敷地の管理状況といった項目に分けて記録することも可能です。どの粒度が必要かはヒアリング時にお伺いします。
まとめ
「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」という説明は、2つの点で正確ではありません。
ひとつは、特例が外れるのは勧告を受けたときだということ。空き家であるだけでは外れません。市区町村の指導があり、それでも改善されない場合に勧告となります。逆にいえば、指導の段階で対応すれば影響を避けられます。
もうひとつは、外れても6倍にはならないということ。負担調整措置により課税標準額の上限が評価額の70%と定められているためです。計算上は固定資産税が最大約4.2倍、都市計画税が最大約2.1倍になります。
所有者に伝えるなら、正確に伝えてください。不正確な説明は、詳しい相手には見抜かれ、そうでない相手には不要な不安を与えます。制度の仕組みを示したうえで、詳しくは市区町村の窓口や税理士へ。この形が、最も信頼される伝え方です。
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