空き家の解体費用と補助金|所有者に伝えるときの正確な説明

空き家の解体費用と補助金|所有者に伝えるときの正確な説明

空き家の所有者に「解体してはどうか」と提案しても、話が止まることがあります。理由の多くは費用です。解体には数百万円がかかることもあり、その負担を誰が持つのかが決まらない

この状態を動かす材料が2つあります。ひとつは自治体の補助金。多くの自治体が解体費用の一部を補助する制度を設けており、上限は50万円から100万円程度が中心です。もうひとつは税制。解体すれば土地の住宅用地特例は外れますが、建物分の固定資産税はかからなくなります。

ただしどちらも、所有者本人が把握しているとは限りません。この記事では、解体をめぐる費用の構造と、伝えるときの注意点を整理します。

この記事の結論

  • 解体補助金は自治体が実施。国の空き家対策総合支援事業などが財源となっている
  • 補助率は解体費の1/3〜1/2程度、上限は50万〜100万円が中心。自治体により異なる
  • ほとんどの制度で工事着手前の申請が必要。着工後では対象外になる
  • 解体すると土地の特例は外れるが、建物分の固定資産税はなくなる
  • 制度の有無・内容は自治体で違う。断定せず窓口への確認を案内する

解体補助金は自治体が実施している

解体費用の補助は、国が直接交付するものではありません。各自治体が制度を設け、国の空き家対策総合支援事業などを財源として運用しています

したがって、制度があるかどうか、いくら補助されるかは自治体によって異なります。隣の市にあるから自分の市にもある、とは限りません

項目 一般的な水準
補助率 解体費の1/3〜1/2程度
上限額 50万〜100万円が中心(自治体により幅がある)
対象 老朽化が進み、倒壊のおそれがあると判定された空き家など
申請時期 工事着手前。多くは各年度の公募期間内
その他の要件 市内の登録業者による施工、所得制限などを設ける例もある

これらは目安です。実際の内容は自治体ごとに定められており、年度によって変わることもあります。

制度の種類も複数ある

解体に関する補助には、いくつかの類型があります。

類型 目的
老朽危険家屋の解体撤去補助 倒壊のおそれがある建物を除却する
景観に関する補助 景観形成地域での老朽空き家を除却する
活用・流通の促進 解体後の土地利用を含めて促進する

目的が違えば、要件も変わります。倒壊のおそれがあるという判定が前提の制度もあれば、そうでない制度もあります

着手前の申請が原則

実務で最も注意すべき点です。多くの制度で、工事に着手する前の申請が求められます。解体してから申請しても対象外になります。

また年度ごとの予算枠があるため、申請期間が限られていたり、予算に達した時点で受付が終了したりすることもあります。

解体を含む提案をする場合、所有者にはまず市区町村の窓口に確認するよう案内してください。工事の話を進めてから制度に気づいても、間に合いません。

解体すると税負担はどう変わるか

解体を検討する所有者が気にするのが、固定資産税です。

住宅が建っている土地には住宅用地特例が適用され、小規模住宅用地(1戸あたり200㎡以下の部分)では課税標準が評価額の6分の1になります。解体して更地にすれば、この特例は適用されなくなります

ただし建物分はなくなる

一方で、建物にかかっていた固定資産税はなくなります。土地の税負担は増えますが、建物分が消えるため、全体でどうなるかは状況によって変わります

状況 土地の税 建物の税
そのまま(特例あり) 軽減されている かかる
解体して更地にした 軽減が外れる かからなくなる

築古の木造住宅であれば建物の評価額は下がっているため、建物分が消える効果は限定的な場合があります。逆に評価額が残っていれば、影響は大きくなります。

「6倍になる」という説明は正確ではない

特例が外れた土地は「商業地等」として扱われ、負担調整措置により課税標準額の上限は評価額の70%と定められています。100%ではありません。

小規模住宅用地との比較では、固定資産税で最大約4.2倍、都市計画税で最大約2.1倍という計算になります。「6倍になる」という説明は、この点で不正確です

どちらが有利かは土地と建物の評価額によって変わります。所有者に説明する際は、断定せず、市区町村の窓口や税理士への確認を案内してください

解体しない選択肢も含めて考える

解体だけが答えではありません。状態によって、取りうる選択肢は変わります。

建物の状態 主な選択肢
そのまま使える 売却、賃貸、空き家バンクへの登録
改修すれば使える 改修して売却・賃貸、買主による改修を前提とした売却
使うのが難しい 解体して土地として売却、解体して活用

この判断には、建物の状態を確認する工程が必要です。外観から確認できる劣化の程度が分かれば、どの選択肢を提示すべきかの見当がつきます。

相続空き家には税制上の特例もある

相続した空き家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。要件のひとつが昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることです。

家屋付きで譲渡する場合は現行の耐震基準への適合が必要ですが、令和6年1月1日以後は、譲渡後に買主が除却工事や耐震改修を行った場合も対象となりました。

期限は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。制度そのものの適用期限は令和9年12月31日までです。解体を急ぐかどうかの判断にも関わります

目的によって、この情報の使い方が変わる

立場 使い方 注意点
不動産会社 売却か解体かの選択肢を示す材料 制度の有無は自治体で違う。断定しない
解体・建設会社 補助制度を含めた提案 着手前の申請が必要。手順を先に確認する
リフォーム・外壁塗装会社 改修という選択肢の提示 解体より改修が適する物件を見極める
自治体 制度の周知、対象物件の把握 老朽度の判定に状態の記録が必要

自治体は対象物件の把握が前提になる

補助制度を設けていても、対象となる空き家がどこにあるかを把握していなければ、制度は使われません

老朽危険家屋を対象とする制度では、老朽度の判定が必要です。この判定には、建物の状態を段階的に記録したデータが材料になります。実態調査で状態別の分類を行っておけば、制度の対象になりうる物件を抽出できます

建物の状態まで記録したリストをお出しします。

そのまま使える物件と、解体を前提に話をする物件を分けて扱えます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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所有者に伝えるときの注意

制度の話は、正確でなければ意味がありません。

避けたいこと 理由
「補助金が出ます」と断定する 制度の有無も要件も自治体によって違う
金額を先に示す 上限額と補助率は制度ごとに異なる
「税金が6倍になる」と伝える 負担調整措置により上限がある。不正確
解体を前提に話を進める 状態によっては改修や売却のほうが適する
申請の手順を説明しない 着手前の申請を逃すと対象外になる

伝えるべきは、そういう制度がある場合があるという事実と、市区町村の窓口で確認してほしいという案内です。この形であれば、詳しい所有者にも信頼されます。

制度を知らない所有者は多い

全国で世帯が所有する空き家の61.6%は、相続・贈与によって取得したものです。自分で買った家ではなく、引き継いだ家だということです。

相続で引き継いだまま、制度の変化も補助制度の存在も知らずに年数が経過している。この状態の所有者は少なくありません。正確な情報を届けることが、判断が動くきっかけになります

なお制度の適用や手続きの詳細は個別の状況によって判断が分かれます。具体的な内容については、所管する市区町村の窓口や税理士などの専門家への確認をご案内ください。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物の状態を記録項目に含めることができます。屋根や外壁の劣化、破損の程度といった項目に分けて記録することも可能です。

状態が分かれば、そのまま流通に乗せられる物件と、解体を前提に話をする物件を最初から分けられます。提案の内容を物件ごとに変えられるということです。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(仕入れ/解体提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する状態の区分を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。劣化の程度を段階に分けた記録にも対応します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

解体を提案するときの注意点

よくあるつまずき

  • 「補助金が使えます」と断定する/制度の有無も要件も自治体によって違います
  • 着手前の申請に触れない/解体してから申請しても対象外になります
  • 「税金が6倍になる」と伝える/負担調整措置により上限があります。最大でも約4.2倍です
  • 建物分の税に触れずに解体を勧める/解体すれば建物分の固定資産税はなくなります
  • 状態を確認せずに解体を前提にする/改修や売却のほうが適する物件もあります

よくあるご質問

解体補助金はどこに確認すればよいですか?

物件が所在する市区町村の窓口です。制度の有無、補助率、上限額、要件はいずれも自治体ごとに定められており、年度によって変わることもあります。

解体したほうが税は安くなりますか?

状況によります。土地の住宅用地特例は外れますが、建物分の固定資産税はかからなくなります。どちらが有利かは土地と建物の評価額によって変わるため、市区町村の窓口や税理士にご確認ください。

建物の傷み具合まで記録してもらえますか?

外観から確認できる範囲で記録します。屋根や外壁の劣化といった項目に分けることも、段階に分けて分類することも可能です。どの粒度が必要かはヒアリング時にお伺いします。

解体前提の物件と、まだ使える物件を分けられますか?

できます。建物の状態を記録項目に含めていただければ、劣化の程度で分類したリストを納品します。物件ごとに提案の内容を変えられるようになります。

自治体でも利用できますか?

ご利用いただいています。老朽度の判定には状態の記録が材料になります。町丁目単位で調査し、状態別に分類したうえで地図上に可視化する形での納品に対応しています。

まとめ

空き家の解体が進まない理由の多くは費用です。それを動かす材料が2つあります。

ひとつは自治体の補助金。補助率は解体費の1/3〜1/2程度、上限は50万〜100万円が中心です。ただし制度の有無も要件も自治体によって異なり、多くは工事着手前の申請が必要です。着工してからでは間に合いません。

もうひとつは税制。解体すれば土地の住宅用地特例は外れますが、建物分の固定資産税はなくなります。なお「税金が6倍になる」という説明は不正確で、負担調整措置により上限があります。

そして解体だけが答えではありません。そのまま使える物件、改修すれば使える物件、使うのが難しい物件。この判断には建物の状態を確認する工程が必要です。状態が分かれば、物件ごとに提案の内容を変えられます。

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