空き家の防災リスクをどう把握するか|避難路沿いと旧耐震の建物

空き家の防災リスクをどう把握するか|避難路沿いと旧耐震の建物

空き家の状態を記録するとき、多くは資産としての価値を判断するために行います。流通に乗せられるか、解体が必要か。

ただし自治体の実態調査では、別の観点が加わります。災害時にどうなるかという視点です。

相続された空き家の73.2%は1980年以前の建築。新耐震基準が導入される前の建物です。そして空き家には居住者がいないため、耐震診断も改修も行われないまま残ります。この記事では、防災の観点から何を記録しておくべきかを整理します。

この記事の結論

  • 相続空き家の73.2%が1980年以前の建築。新耐震基準以前にあたる
  • 空き家は耐震診断も改修も行われにくい。居住者がいないため
  • 同じ状態でも道路との関係で影響が変わる
  • 建物本体だけでなく塀・樹木・付属物も記録対象になる
  • ただし調査で耐震性の判定はできない。外観の記録までが範囲

空き家は築古に偏る

国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査によれば、相続された空き家の建築時期は次のとおりです。

建築時期 割合
1950年以前 20.4%
1951〜1970年 26.4%
1971〜1980年 26.4%
1981〜2000年 17.5%
2001年以降 4.5%

1980年以前が73.2%を占めます。1981年6月に導入された新耐震基準より前に建てられた建物ということになります。

地域によって割合が違う

神戸市の資料では、居住世帯のある住宅のうち昭和55年以前に建築されたものは18.6%。区別では須磨区26.5%、北区26.1%、垂水区23.7%と差があります。

造成年代のそろった住宅団地では、この割合が高くなります。同じ時期に一斉に建てられているためです。

空き家では改修が進まない

居住中の住宅であれば、耐震診断や改修が行われることがあります。自治体の補助制度もあります。

しかし空き家では、この動きが起きにくくなります。住んでいる人がいないため、危険を感じる機会がありません。所有者が遠方にいれば、なおさらです。

神戸市では持ち家のうち増改築・改修工事を行った住宅が30.2%。ただしこれは居住中の住宅の数字です。空き家について同様の水準を期待することはできません。

結果として、築古の建物が手を入れられないまま残ることになります。

道路との関係で影響が変わる

同じ状態の建物でも、どこに建っているかで影響の大きさが変わります

立地 影響
幅員の狭い道路に面している 倒壊時に道路が塞がる可能性がある
通学路・生活道路に接する 人が通る時間帯がある
密集した住宅地にある 隣接する建物への影響が生じうる
周囲に建物がない 影響の範囲は限られる

国土交通省のガイドラインは、管理不全空家等・特定空家等の判断について「空家等の物的状態」と「周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度等」を踏まえて総合的に判断するとしています。

建物の状態だけでは優先順位が決まりません。周辺条件とあわせて見る必要があります。

接道が狭い物件は空き家に多い

そして接道の狭さと空き家は重なりやすいという傾向があります。

神戸市の資料では、賃貸・売却用や別荘を除く空き家の36%が幅員4メートル未満の道路にしか接していません。賃貸用は28%、売却用も28%です。放置型だけが高くなっています

京都市の資料も、接道の幅員が狭いほど空き家率が高い傾向を指摘しています。

狭い道に面した築古の空き家。これが、防災の観点で最も注意が必要な組み合わせになります。

建物本体だけではない

記録の対象は、建物だけではありません。

対象 見るもの
建物本体 傾き、外壁の剥落、屋根材のずれ
付属物 雨樋、庇、看板、アンテナ
塀・門 ブロック塀の傾き、ひび割れ、控え壁の有無
樹木 大きさ、傾き、道路や隣地への張り出し
敷地 擁壁の状態、地盤の変化

塀や樹木は、建物より先に影響が出ることがあります。管理されていなければ、傾きや腐朽が進みます。

とくにブロック塀については、控え壁の有無や高さが問題になることがあります。道路に面した塀であれば、通行への影響も考慮する対象です

調査でできること・できないこと

ここは明確にしておく必要があります。

できること できないこと
外観から見た傾きや破損の記録 耐震性の判定
塀・樹木・付属物の状態の記録 構造の安全性の評価
道路や隣地との位置関係の記録 正確な築年数の特定
接道のおおよその状況 倒壊の危険性の判断

耐震性の判定はできません。専門的な診断が必要な領域です。

調査で提供できるのは、優先順位づけの材料になる記録までです。詳細な診断が必要な物件を絞り込むための工程だとお考えください。

「危険です」と断定しない

所有者や住民に伝えるとき、危険性を断定するのは避けてください

外観から見て傾いているように見えても、構造上問題がない場合もあります。逆に、外観が整っていても内部が傷んでいることもあります。

伝えるべきは、現地で確認できた状況です。判断は専門家や行政に委ねてください。

建物・塀・樹木の状態を、あわせて記録できます。

周辺との位置関係も含めて、優先順位づけの材料をお出しします。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

0120-107-209

受付 10:00〜20:00/年中無休

無料見積り相談はこちら

自治体の実務にどう関わるか

防災の観点を実態調査に組み込む場合、記録項目を設計する段階で決めておく必要があります。

記録項目 使いどころ
建物の傾き・破損 特定空家等の判断材料
塀の状態 通行への影響の把握
樹木の状態 倒木・落枝への備え
道路との位置関係 影響範囲の把握
建て方 建て方別の集計に使える

「空き家か否か」の2区分では、この判断ができません。状態と周辺条件を別に記録しておく必要があります。

重点地区の選定に使う

限られた人員と予算で対応するには、優先順位が必要です。状態と周辺条件の両方が記録されていれば、地区ごとの傾向が見えます

築古の空き家が集まっている地区、狭い道に面した物件が多い地区。こうした情報は、計画上の重点地区を選ぶ材料になります

空家等対策計画との関係

空家等対策計画には、法定の記載事項として「空家等の調査に関する事項」が含まれます。実態把握の方針を計画に書く必要があるということです。

防災の観点を計画に位置づけるなら、調査の仕様にもそれを反映しておく必要があります。建物の状態だけを記録する設計では、周辺条件が拾えません。

民間にとっての意味

立場 関わり方
解体会社 緊急性の高い物件を把握できる
不動産会社 所有者に状況を伝える材料になる
リフォーム・改修会社 耐震改修の提案先になりうる
空き家管理会社 塀や樹木の管理が提案の入口になる

耐震改修は居住中の住宅が中心

耐震改修の提案先としては、空き家より居住中の築古住宅のほうが現実的です。住んでいる人がいれば、安全への関心も高くなります。

「古家(居住中)」を調査項目として指定すれば、この層を対象にできます。新耐震基準以前と推定される住宅が集まる地区であれば、提案の余地が大きくなります

ただし外観から築年数を断定することはできません。建物の仕様や傷み具合から築古と判断できる住宅を対象とする形になります。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物・塀・樹木の状態と、道路や隣地との位置関係を記録項目に含めることができます。どの粒度で記録するかは、ヒアリングの段階でご相談ください。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。状態別に分類したうえで地図上に色分けし、地区別の件数を集計する形にも対応します

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と記録項目のヒアリング
調査結果をどう使うかを確認したうえで、建物・付属物・周辺条件のどこまでを記録するかを決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。造成年代のそろった地区に絞った範囲設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、公道から確認できる範囲で建物・塀・樹木・周辺の状況を記録します。
地番の特定と集計
調査結果をもとに地番を割り出し、地区別・状態別に集計します。
納品
地図・リスト・集計表の形で納品します。所有者情報の取得や通知の発送までご依頼いただくこともできます。

防災の観点を扱うときの注意点

よくあるつまずき

  • 調査で耐震性が分かると期待する/判定はできません。専門的な診断が必要な領域です
  • 「危険です」と断定して伝える/外観から構造の安全性は判断できません
  • 建物本体だけを記録する/塀や樹木は建物より先に影響が出ることがあります
  • 周辺条件を記録しない/同じ状態でも道路との関係で影響が変わります
  • 外観から築年数を断定する/仕様や傷み具合からの判断にとどまります

よくあるご質問

耐震性の判定もしてもらえますか?

できません。耐震性の判定には専門的な診断が必要です。調査で記録できるのは、外観から確認できる傾きや破損の状況までとなります。詳細な診断が必要な物件を絞り込む工程としてご活用ください。

ブロック塀の状態も記録できますか?

できます。外観から確認できる範囲で、傾きやひび割れ、控え壁の有無といった状況を記録できます。道路に面した塀については、通行との位置関係もあわせて記録できます。

樹木の状態も対象になりますか?

なります。大きさ、傾き、道路や隣地への張り出しといった項目を記録できます。倒木や落枝への備えを検討する材料としてご活用いただけます。

築年数を条件にした調査はできますか?

外観から築年数そのものを断定することはできませんが、建物の仕様や傷み具合から築古と判断できる建物を対象として調査・報告します。どの程度の年代を想定するかはヒアリング時にお伺いします。

重点地区の選定に使えるデータになりますか?

状態と周辺条件を記録し、地区別に集計した形で納品できます。地区ごとの傾向を把握する材料としてご活用いただけます。ただし区域の指定そのものは行政が判断するものです。

まとめ

相続された空き家の73.2%は1980年以前の建築です。新耐震基準が導入される前の建物にあたります。そして空き家には居住者がいないため、耐震診断も改修も行われにくいという特徴があります。

そして同じ状態でも、どこに建っているかで影響の大きさが変わります。幅員の狭い道路に面していれば、倒壊時に道路が塞がる可能性があります。しかも接道の狭さと空き家は重なりやすいという傾向があります。

記録の対象は建物だけではありません。塀、樹木、付属物。これらは建物より先に影響が出ることがあります。

ただし調査で耐震性の判定はできません。外観から確認できる状況を記録し、詳細な診断が必要な物件を絞り込む。そこまでが範囲です。「危険です」という断定は、外観からはできません

関連記事

まず1地区から、現地データをお出しします。

自治体の実態把握、解体・改修の提案、不動産の仕入れ、それぞれに合わせた調査項目をご提案します。

0120-107-209

受付 10:00〜20:00/年中無休

無料見積り相談はこちら

反響を生む配布設計をプロがご提案します

反響を生む配布設計

プロがご提案します

お気軽にご相談ください

お気軽にどうぞ 無料見積もり相談