空き家の状態別分類はどう作るか|段階・判断要素・記録の粒度

空き家の状態別分類はどう作るか|段階・判断要素・記録の粒度

空き家の実態調査を発注するとき、多くの仕様書に書かれているのは「空き家か否か」の判定までです。ところが調査結果を受け取った後、必ず次の問いが出てきます。この中で、どれから対応すべきか

ここで詰まるのは、状態が記録されていないからです。2023年12月施行の改正空家法で管理不全空家等の区分が新設され、特定空家等になる手前の段階も把握する必要が生じました。「空き家である」だけでは、この判断ができません。

この記事では、状態別の分類をどう設計するか、何段階に分けるか、どの要素を見るかを整理します。

この記事の結論

  • 「空き家か否か」の2区分では、優先順位がつけられない
  • 分類の設計で決めるのは段階数・判断要素・記録の粒度の3つ
  • 段階はその後の対応と対応させる。分けすぎると運用できない
  • 判断要素は建物・敷地・周辺への影響の3系統に分かれる
  • 次回調査と比較するには、基準を文書に残すことが前提になる

なぜ状態別の分類が必要なのか

国土交通省のガイドラインは、措置を講ずるにあたって「空家等の物的状態」と「当該空家等が周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度等」を踏まえて総合的に判断するとしています。

つまり判断には、状態の記録が不可欠です。「空き家である」という情報だけでは、管理不全空家等に該当するかどうかを検討する材料になりません

記録の粒度 できること
空き家か否かの2区分 件数の集計、分布の把握
状態を段階に分けた記録 優先順位づけ、措置の検討、経年比較

民間の場合も同じです。すぐ流通に乗せられる物件と、解体を前提に話をする物件では、提案の内容がまったく変わります。状態が分からなければ、リストを受け取った後に一件ずつ見に行くことになります

①何段階に分けるか

最初に決めるのが段階数です。細かく分けるほど情報量は増えますが、運用できなければ意味がありません

段階数 向いている場面 注意点
2段階(傷みあり/なし) 全体の分布を把握したい 優先順位づけには粗い
3〜4段階 対応の優先度を分けたい 実務ではこの範囲が扱いやすい
5段階以上 詳細な分析を行いたい 調査員の判断がぶれやすくなる

目安は、その後の対応の種類と数を合わせることです。対応が3通りしかないのに5段階に分けても、結局まとめ直すことになります。

対応と対応させる

たとえば自治体であれば、次のような対応が想定されます。

  • すぐに現地確認が必要なもの
  • 所有者に働きかけるもの
  • 経過を見るもの
  • 活用の候補になるもの

この4つに対応させるなら、段階も4つ。分類はそれ自体が目的ではなく、次の行動を決めるための道具です。

「活用できる空き家」も分けておく

状態別の分類というと、傷みの度合いだけを想定しがちです。ただし状態の良い空き家を区別しておくことにも意味があります

空き家バンクへの登録を働きかける候補、移住定住施策の対象、地域の活動拠点としての活用。いずれも「まだ使える空き家」が前提です

実態調査を措置のためだけに設計すると、この層が拾えません。傷んでいるものを上から並べる分類ではなく、両端を区別できる分類にしておくと使い道が広がります。

②どの要素を見るか

判断の材料は、大きく3系統に分かれます。

系統 見るもの 分かること
建物 屋根、外壁、建具、傾き、部材の状態 構造的な劣化の程度
敷地 雑草の繁茂、樹木の越境、放置物、囲いの状態 管理が行われているか
周辺への影響 道路や隣地との距離、通行への支障、人の往来 影響が及ぶ範囲があるか

この3つは連動しません。建物は傷んでいるが敷地は手入れされている、逆に建物は無事だが草が生い茂っている、といった組み合わせが実際にあります。

建物の状態

外観から確認できる範囲で記録します。屋根材の欠損やずれ、外壁のひび割れや剥落、建具の破損、全体の傾き、部材が落下しそうな箇所。

参考までに、京都市の資料では放置型の腐朽・破損率が一戸建28%、長屋建52%、共同住宅11%と、建て方によって大きく差がありました。建て方も記録項目に含めておくと、集計の際に使えます。

敷地の状態

建物が無事でも、敷地の管理が行われていなければ近隣への影響が生じます。雑草、樹木の越境、放置物、不法投棄。これらは建物の劣化より早く表面化することがあります

管理不全空家等は「適切な管理が行われていないこと」が起点です。敷地の状態は、その判断に直接関わります。

周辺への影響

同じ状態の建物でも、道路に面していれば通行への支障が生じ、隣家と近ければ影響が及びます。逆に周囲に建物がなく人の往来もなければ、優先度は下がります。

ガイドラインが「周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度」を判断要素としているのは、この点です。建物の状態だけで優先順位は決まりません

③記録の粒度をどう決めるか

3系統それぞれについて、どこまで細かく記録するかを決めます。

記録の仕方 特徴
有無だけ(あり/なし) 判断がぶれにくい。集計しやすい
程度を段階で(軽微/中程度/著しい) 優先順位はつけやすいが、判断基準の明文化が必要
該当箇所を項目で(屋根/外壁/建具) どこが傷んでいるか分かる。記録量は増える

「程度」を使う場合、何をもって軽微・著しいとするかを文書化しておく必要があります。これがないと、調査員によって判断がばらつきます。

写真を残すかどうか

写真があれば後から確認できますが、撮影と管理の手間が発生します。全件撮るのか、一定の段階以上のみ撮るのかを先に決めておいてください。

とくに措置につながる可能性がある物件については、記録として残しておく意味が大きくなります。

分類の設計からご相談いただけます。

段階数・判断要素・記録の粒度について、運用に合わせてご提案します。
目的と対象範囲を伺ったうえで、費用とスケジュールをご提示します。

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次回調査と比較できる形にする

実態調査は1回で終わりません。数年おきに実施し、変化を追うことになります。そのとき効いてくるのが基準の一貫性です。

残しておくもの 次回に使えること
段階の定義 同じ区分で集計できる
判断要素と、その見方 調査員が変わっても再現できる
記録の粒度 データの形式を揃えられる
調査範囲の指定方法 同じ範囲で比較できる

基準が変わっていれば、件数が増減しても実態が変わったのか基準が変わったのか区別できません。仕様書を作る段階で、次回も同じ基準で実施できるかを確認してください。

委託先が変わっても再現できる仕様であることが望ましい形です。

目的によって、設計が変わる

立場 主な目的 重視する要素 段階数の目安
自治体 措置の検討、計画への反映 建物・敷地・周辺への影響の3系統すべて 3〜4段階
不動産会社 流通可能か解体前提かの判別 建物の状態、接道 2〜3段階
リフォーム・外壁塗装会社 施工の提案先の優先順位づけ 屋根・外壁の劣化 3段階程度

民間は「扱いを分けられるか」で決める

民間企業の場合、細かい段階は必要ありません。その後の扱いが分かれる境目だけ記録できれば十分です。

仕入れであれば、そのまま流通に乗せられるか、解体を前提に話をするか。この2つに分かれるなら、記録も2段階でかまいません。施工提案であれば、すぐ提案すべきか、時期を見るか、対象外か。

分類の細かさより、リストを受け取った後にすぐ動けるかどうかが重要です

調査で記録できること・できないこと

弊社の土地調査では、調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ確認・記録します。

できること できないこと
屋根・外壁の劣化の記録 建物内部の状態
敷地の管理状況の記録 正確な築年数の特定
周辺との位置関係の記録 構造の安全性の判定
接道の状況の記録 該当区分の判断そのもの
指定された区分での分類 道路から見えない面の確認

該当するかどうかの判断は、市区町村が行います。調査で提供できるのは、その判断の材料になる記録までです。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。予算額から逆算して調査範囲を設定することもできます。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。状態別に分類したうえで地図上に色分けし、あわせて地区別の件数を集計する形にも対応します

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。広域連携や複数自治体での共同実施にも対応します。

依頼から納品までの流れ

目的と分類設計のヒアリング
調査結果をどう使うかを確認したうえで、段階数・判断要素・記録の粒度を決めます。次回調査との比較を前提とした設計にも対応します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、指定された基準に沿って外観から状態を確認・記録します。
地番の特定と集計
調査結果をもとに地番を割り出し、地区別・状態別に集計します。
納品
地図・リスト・集計表の形で納品します。所有者情報の取得や通知の発送までご依頼いただくこともできます。

分類を設計するときの注意点

よくあるつまずき

  • 「空き家か否か」の2区分で発注する/優先順位づけも管理不全空家等の検討もできません
  • 段階を細かく分けすぎる/調査員の判断がぶれ、運用でもまとめ直すことになります
  • 建物の状態だけを見る/敷地の管理状況と周辺への影響は連動しません
  • 判断基準を文書化しない/調査員によってばらつき、次回との比較もできません
  • 状態の良い空き家を区別しない/活用の候補が拾えなくなります

よくあるご質問

何段階に分けるのがよいですか?

その後の対応の種類に合わせてください。対応が3通りなら3段階が扱いやすくなります。細かく分けても、運用でまとめ直すことになれば意味がありません。目的をお伺いしたうえでご提案します。

判断基準はこちらで決める必要がありますか?

ご相談いただけます。段階の定義や判断要素についてご提案しますので、運用に合わせて決めていただく形になります。決めた内容は文書として残し、次回調査でも使えるようにします。

写真も撮ってもらえますか?

ご相談ください。全件か、一定の段階以上のみかによって費用と期間が変わります。範囲と件数を伺ったうえでご提案します。

前回調査と同じ基準で実施できますか?

できます。前回の仕様や集計形式をお示しいただければ、それに合わせて設計します。基準を揃えれば、件数の増減がそのまま実態の変化を表します。

該当するかどうかの判断もしてもらえますか?

判断は市区町村が行うものです。調査でご提供できるのは、外観から確認できる範囲の記録までとなります。その記録を判断の材料としてご活用ください。

まとめ

「空き家か否か」の2区分では、調査結果を受け取った後にどれから対応すべきかが決められません。管理不全空家等の検討にも、仕入れの優先順位づけにも、状態の記録が必要です。

設計で決めるのは3つ。段階数・判断要素・記録の粒度です。段階はその後の対応と対応させ、分けすぎないこと。判断要素は建物・敷地・周辺への影響の3系統に分かれ、これらは連動しません。粒度は、有無だけか、程度まで見るかで判断のぶれやすさが変わります。

そして状態の良い空き家も区別しておいてください。活用の候補になるのはこの層です。傷んだものを上から並べるだけの分類では、使い道が限られます。

最後に、基準は文書として残すこと。次回調査と比較できるかどうかは、ここで決まります。まずは1〜2地区で実施し、記録の中身を確認してから範囲を広げてください。

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