空き家調査で守るべき線引き|敷地・情報・近隣対応の考え方

空き家調査で守るべき線引き|敷地・情報・近隣対応の考え方

空き家調査は、他人の所有する建物を外から確認する作業です。だからこそ、守るべき線があります

どこまで見てよいのか、何をしてはいけないのか。ここが曖昧なまま進めると、近隣とのトラブルや、後々の問題につながります

この記事では、調査における線引きを整理します。なお、具体的な法的判断については専門家への確認をご案内します。この記事は実務上の考え方を示すもので、法的な判断を代わりに行うものではありません。

この記事の結論

  • 調査は公道から外観を確認する形で行う
  • 敷地には立ち入らない。郵便受けの中も見ない
  • 登記情報は公開情報だが、取得後の取扱いは別
  • 近隣から声をかけられたときの対応を決めておく
  • 「もっと詳しく」という要望には応じられない

敷地には立ち入らない

これは調査の前提です。所有者の許可なく敷地に立ち入ることはできません

あわせて、次の行為も行いません。

行わないこと 理由
敷地内への立ち入り 所有者の許可が必要
郵便受けの中を見る 投函物は他人のもの
窓から中をのぞく 敷地に近づく必要がある
塀を越えて確認する 立ち入りにあたる
建物に触れる 同上

調査で記録できるのは、公道から見える範囲に限られます

チョーキングも確認できない

外壁塗装の提案では、チョーキング(外壁を触ると白い粉がつく現象)が判断材料になります。ただしこれは手で触れる必要があります

記録できるのは、目視で分かる範囲の劣化まで。ひび割れ、色あせ、剥落といった項目になります。

「もっと詳しく」には応じられない

発注される方から、より踏み込んだ確認を求められることがあります

  • 敷地に入って建物の裏側を見てほしい
  • 郵便受けの中を確認してほしい
  • 窓から室内の様子を見てほしい

いずれもお応えできません。これは能力の問題ではなく、行ってはいけないことだからです。

調査は継続的に同じ地域で行う仕事でもあります。一度でも問題が起きれば、その地域での活動そのものが難しくなります

見てよい範囲

公道から確認できるものは、記録できます。

記録できること 記録できないこと
建物の外観の状態 建物内部
道路から見える面 建物の裏側
郵便受けの外観の状態 投函物の中身
敷地の管理状況(雑草、樹木など) 敷地内の詳細
前面道路のおおよその状況 正確な幅員

この制約のうえで、どこまで判断できるかを設計することになります

建物の裏側は記録できない

外壁の劣化が建物の裏側で進んでいる場合、その情報は記録に含まれません。隣家との間や、奥まった位置にある面も同様です。

優先順位をつけるには十分ですが、網羅的な把握ではありません

登記情報の取扱い

不動産の登記情報は誰でも取得できます。ただし、取得できることと、どう使ってよいかは別です

誤解 実際
公開情報だから自由に使える 取得は自由だが、取り扱いには法令上の求めがある
自分で調べたものだから問題ない 取得方法にかかわらず個人情報にあたる

氏名と住所が並んだリストは個人情報です。事業として取り扱うなら、利用目的の特定や安全管理措置といった対応が求められます

具体的な判断については、個人情報保護委員会や専門家への確認をご案内ください

戸籍は取得できない

名義人が故人の場合、相続人を特定するには戸籍をたどる必要があります。ただし職務上請求ができるのは弁護士・司法書士などの士業に限られます

営業目的で戸籍や住民票の除票を取得することはできません。これは制度上の制約であり、工夫で乗り越えられるものではありません

近隣への配慮

住宅地を歩いて建物を見て回る作業です。近隣から不審に思われることがあります

備えておくこと 内容
身分を明示できる状態 社名の入った服装、名札
説明の仕方 何をしているかを伝えられるようにする
事前の連絡 地域の自治会や交番に伝えておく方法もある
問い合わせ先 誰に確認すればよいかを示せるようにする

声をかけられたときの対応を決めておいてください。ごまかす必要はありません。

自治体の調査は事前に周知することもある

自治体が実態調査を行う場合、広報等で事前に周知する例があります。住民からの問い合わせに備えるためです。

民間の調査でこれを行う必要はありませんが、調査員が説明できる状態にしておくことは共通して重要です

公道から確認できる範囲で、正確に記録します。

できることとできないことを、発注前に明確にお伝えします。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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接触するときの線引き

調査そのものだけでなく、その後の接触にも配慮が必要です

避けたいこと 理由
「近隣から苦情が出ています」と伝える 実際にあるかは分かりません
「管理不全空家等に該当します」と断定する 判断は市区町村が行います
「税金が6倍になります」と伝える 勧告時に限られ、最大約4.2倍です
短期間に繰り返し接触する 負担になります
親族間の事情を詮索する 踏み込みすぎになります

伝えるべきは、現地で確認できた事実です。判断は所有者に委ねてください。

送付停止への対応

DMを受け取った方から「今後送らないでほしい」という連絡が来ることがあります。最も現実的に起こりうる場面です

除外リストを作り、次回以降の発送で反映される仕組みにしておいてください

また「どこで情報を知ったのか」と聞かれたとき、説明できないと不信感を招きます。登記情報から取得したのであれば、そう伝えれば足ります。公開情報であり、誰でも取得できるものだからです。

目的によって、注意点が変わる

立場 とくに注意すべき点
不動産会社 個人情報の取扱い、送付停止への対応
リフォーム・外壁塗装会社 訪問勧誘に関わる規制
解体会社 制度の説明を断定しない
士業 業務広告に関するルール
自治体 庁内の規定、条例上の取扱い

訪問勧誘には規制がある

訪問して勧誘を行う場合、業種や取引の内容に応じた規制があります

不動産の取引であれば宅地建物取引業法、訪問販売であれば特定商取引法など、関わる法令が異なります。自社の業務にどの規制が適用されるかは、事前にご確認ください

士業には広告のルールがある

司法書士、税理士、弁護士などには、それぞれの法令や会規で業務広告に関するルールが定められています。

DMの内容についても、これらのルールに沿う必要があります。所属する会や関係団体にご確認ください

自治体は目的外利用に注意する

自治体の場合、空家法にもとづいて課税情報などを内部利用できます。ただし目的の範囲を超えた利用はできません

また個人情報の取扱いについては条例が定められている場合があります。庁内の規定にもとづいて運用してください

誤判定への配慮

調査には、一定の誤差が生じます。外観から判断する以上、避けられません。

長期入院で郵便物が溜まっている、使っていない部屋のカーテンだけが開いている。居住中でも空き家に見える状態は起こります

誤判定のコストは1通分ではない

居住中の住宅に空き家についてのDMが届けば、受け取った側は不快に感じます

地域での評判に関わりますし、その世帯が将来の顧客になる可能性も消えます。本格的に発送する前に、一部で試すことをおすすめしています

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査は公道から確認できる範囲で行います。敷地への立ち入りを伴う調査には対応していません

また戸籍をたどる相続人調査にも対応していません。職務上請求が必要な領域のため、司法書士等の専門家へのご依頼となります。

所有者の氏名が不要であれば、住所・地番までの納品にとどめることもできます。ポスティングを前提とする場合は、この形で足ります。扱う個人情報も減ります。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、調査で記録できる範囲とできない範囲を明確にご説明します。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、公道から確認できる範囲で状態を確認・記録します。敷地には立ち入りません。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

進めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 敷地内の情報を期待する/立ち入りは行いません。公道から見える範囲が限界です
  • 「公開情報だから自由」と考える/取得は自由でも、取り扱いには法令上の求めがあります
  • 説明の仕方を決めずに調査する/近隣から声をかけられることがあります
  • 制度の説明を断定する/判断は行政や専門家が行います
  • 確認せずに全件へ発送する/誤判定のコストは1通分では済みません

よくあるご質問

敷地の中には入らないのですか?

入りません。所有者の許可なく敷地に立ち入ることはできないため、公道から確認できる範囲での調査となります。郵便受けの中を見る、窓から中をのぞくといった行為も行いません。

もっと詳しく確認してもらうことはできますか?

できません。これは能力の問題ではなく、行ってはいけないことだからです。公道から確認できる範囲での記録となります。

調査中に近隣の方から声をかけられたらどうなりますか?

調査員が説明できる状態にしています。ご心配な点があれば、事前にご相談ください。地域の実情に応じて、実施方法について調整することも可能です。

写真の撮影はできますか?

ご相談ください。撮影する場合、人や表札等が写り込むことへの配慮が必要になります。ご要望と地域の状況を伺ったうえでご案内します。

所有者の氏名を含まない納品もできますか?

できます。住所・地番までの納品にとどめることが可能です。ポスティングを前提とする場合、氏名を扱わずに運用でき、管理すべき個人情報も減ります。

まとめ

調査は公道から外観を確認する形で行います。敷地には立ち入らず、郵便受けの中も見ず、窓から中ものぞきません。

「もっと詳しく」という要望にはお応えできません。これは能力の問題ではなく、行ってはいけないことだからです。

登記情報についても、取得できることと、どう使ってよいかは別です。氏名と住所が並んだリストは個人情報であり、事業として扱うなら法令上の対応が求められます。戸籍の職務上請求は士業に限られます。

そして近隣から声をかけられたときの対応を決めておいてください。住宅地を歩いて建物を見て回る作業である以上、不審に思われることがあります。

接触の場面でも同じです。断定せず、煽らず、現地で確認できた事実を伝える。この形が、結果的に信頼につながります。

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