空き家調査でできないことの整理|理由別に見る5つの限界と代替手段

空き家調査でできないことの整理|理由別に見る5つの限界と代替手段

空き家調査で何が分かるかは、多くの資料で説明されています。一方、何が分からないかは、あまり整理されていません

ここが曖昧なまま発注すると、受け取ってから「思っていたものと違う」ということになります。期待値のずれは、発注前に埋めておくべきものです

この記事では、調査でできないことを理由別に5つに分類して整理します。あわせて、代わりにどうすればよいかもお伝えします。

この記事の結論

  • できない理由は物理的に見えない・立ち入れない・権限が必要・判断主体が別・接触が必要の5つ
  • 調査は公道から外観を確認する方法で行う
  • 戸籍や測量は資格や権限が必要な領域
  • 制度の該当判断は行政が行う
  • できることは候補を絞るまで。その先は別の工程

①物理的に見えない

調査は公道から外観を確認する形で行います。視界に入らないものは記録できません

できないこと 代わりの手段
建物内部の状態 接触して内見の許可を得る
建物の裏側の確認 —(道路から見える面に限られる)
家財の有無 接触して確認する
地下の状況 専門の調査
屋根の勾配で見えない面

裏側は記録できない

外壁の劣化が建物の裏側で進んでいる場合、その情報は記録に含まれません

隣家との間や、奥まった位置にある面も同様です。優先順位をつけるには十分ですが、網羅的な把握ではありません

敷地には立ち入らない

これは調査の前提です。所有者の許可なく敷地に立ち入ることはできません

あわせて、次の行為も行いません。

  • 郵便受けの中を見る
  • 窓から中をのぞく
  • 塀を越えて敷地内を確認する

これは制約であると同時に、調査の適法性に関わる部分です。「もっと詳しく見てほしい」というご要望には応じられません。

②立ち入れない

敷地内の情報は、原則として得られません。

できないこと 代わりの手段
敷地内の詳細な状況 所有者の許可を得たうえでの確認
外壁のチョーキング確認 触れる必要があるため、施工前の点検で
建物の裏手の敷地
擁壁の裏側

チョーキングは確認できない

外壁塗装の提案では、チョーキング(外壁を触ると白い粉がつく現象)が判断材料になります。ただしこれは手で触れる必要があります

調査で記録できるのは、目視で分かる範囲の劣化までです。ひび割れ、色あせ、剥落といった項目になります。

③資格や権限が必要

制度上、特定の資格や権限がなければできない領域があります。

できないこと 必要なもの 依頼先
戸籍をたどる相続人の調査 職務上請求 司法書士、弁護士など
測量、境界の確定 資格 土地家屋調査士
耐震診断 専門的な調査 建築士など
不動産の価格査定 宅地建物取引業 不動産会社
住民票の除票等の取得 正当な理由 —(営業目的では不可)

相続人の調査はできない

登記情報の名義が故人のままである場合、実際の権利者は相続人です。ただし、それが誰かは登記簿に書かれていません

特定するには戸籍をたどる必要がありますが、職務上請求ができるのは士業に限られます。営業目的で戸籍や住民票の除票を取得することはできません。

これは制度上の制約であり、工夫で乗り越えられるものではありません

測量も対応していない

正確な面積や境界の位置は、測量が必要な領域です。公図で分かるのは地番と隣接関係までで、境界の確定には使えません

相続土地国庫帰属制度では、境界が明らかでない土地は申請できないとされています。この確認が必要な場合、土地家屋調査士への依頼になります。

④判断主体が別

制度の適用可否を判断するのは、行政や専門家です。

できないこと 判断する主体
特定空家等・管理不全空家等に該当するかの判断 市区町村
建替えが可能かの判断 特定行政庁
補助制度の対象になるかの判断 市区町村
税の特例が適用されるかの判断 市区町村、税務署
農地かどうかの最終的な判断 農業委員会

調査で提供できるのは、判断の材料になる記録までです

営業する側も断定できない

これは調査会社に限りません。営業する側も、これらを断定できる立場にはありません

避けたい説明 理由
「勧告されます」 判断は市区町村が行う
「建替えできます」 判断は特定行政庁が行う
「補助金が使えます」 制度の有無も要件も自治体による
「税金が6倍になります」 勧告時に限られ、最大約4.2倍

制度としてこういう仕組みがあるという事実を伝え、確認先を案内する。この形が適切です。

⑤接触しないと分からない

物件を見ても分からず、所有者と話して初めて分かることがあります。

できないこと いつ分かるか
所有者の意向 接触して確認する
売却・賃貸の条件 交渉の段階
共有者間の状況 接触して確認する
相続の経緯 登記情報である程度、詳細は接触後
家財の量 内見の段階

意向は外観から判断できない

傷んでいるから解体の意向がある、とは限りません。使用目的のない空き家の40.6%は「空き家として所有しておく」意向を持っています。除却は19.2%、売却は18.3%です。

ただし状態が分かっていれば、どの提案から入るかは決められます。腐朽・破損が進んだ物件なら解体を含む話から、状態が良ければ売却や賃貸の話から。この判断が事前にできます。

できる範囲を、正確にお伝えします。

目的をお聞かせいただければ、調査で埋まる部分とそうでない部分を整理してご説明します。
まずはお気軽にお問い合わせください。

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できることは何か

制約を並べましたが、調査でしか分からないこともあります

できること 他の手段では
町丁目単位の実数 統計は市区町村単位まで
使用状況(人が住んでいるか) 登記でも航空写真でも分からない
建物の外観の状態 統計は集計値のみ
接道のおおよその状況 統計にも登記にも記載されない
現存の有無 統計は基準日時点
空き地・駐車場・倉庫工場の所在 全国的な悉皆調査がない
共同住宅の棟単位の情報 統計は室単位

統計は市区町村単位の推計値、登記は所有者しか分からない、航空写真は上から見えるものだけ。この隙間を埋めるのが現地調査です。

役割分担で考える

段階 使うもの 分かること
1. エリアの選定 統計 市区町村単位の傾向
2. 範囲の絞り込み 地図・航空写真 住宅の集まり方
3. 対象の確定 現地調査 使用状況、状態、接道
4. 所有者の特定 登記情報 氏名、住所、権利関係
5. 意向の確認 接触 所有者の考え

調査が担うのは3の部分です。その前後には別の工程があります。

目的によって、影響の大きさが変わる

立場 とくに影響する制約 対応
不動産会社 相続人の調査ができない 士業と連携する
買取再販 建物内部が分からない 内見の段階で確認する
リフォーム・外壁塗装会社 チョーキングが確認できない 訪問時の点検で確認する
解体会社 正確な面積が分からない 登記情報と現地の再確認
遺品整理・不用品回収 家財の有無が分からない 他業種からの紹介と組み合わせる
自治体 該当区分の判断はできない 記録を判断材料として使う

制約が大きい業種もある

正直に書きますが、調査との相性が良くない目的もあります

分譲マンションの1住戸を仕入れる、家財処分の需要を直接見つける。これらは外観からの調査では対応しきれません

現地調査が有効なのは、戸建ての空き家、棟単位での提案、そして統計にない対象(空き地、駐車場、倉庫・工場)です。用途を見極めたうえでご検討ください。

誤差も生じる

できないこととは別に、判定の誤差もあります

長期入院で郵便物が溜まっている、使っていない部屋のカーテンだけが開いている。居住中でも空き家に見える状態は起こります。逆もあります。

複数の材料を突き合わせて判断しますが、100%にはなりません。とくにDMを送る前には、一部で試して精度を確認することをおすすめしています。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

登記情報の取得は、調査で特定した地番をもとに行います。ただし戸籍をたどる相続人調査には対応していません

またDMの原稿はご用意いただいたものを使用する形が基本です。文面の作成は業務範囲に含まれません。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、調査で埋まる部分とそうでない部分を整理してご説明します。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、公道から確認できる範囲で状態を確認・記録します。敷地には立ち入りません。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

発注前に確認しておくこと

よくある期待値のずれ

  • 建物内部の情報を期待する/公道から外観を確認する方法です
  • 相続人の調査まで含まれると考える/職務上請求は士業に限られます
  • 正確な面積や境界が分かると考える/測量が必要な領域です
  • 制度の該当判断を求める/判断は行政が行います
  • 誤差がないと考える/外観からの判断である以上、一定の誤差は生じます

よくあるご質問

敷地の中には入らないのですか?

入りません。所有者の許可なく敷地に立ち入ることはできないため、公道から確認できる範囲での調査となります。郵便受けの中を見る、窓から中をのぞくといった行為も行いません。

相続人の調査までお願いできますか?

対応していません。戸籍をたどる作業は職務上請求が必要な領域のため、司法書士等の専門家へのご依頼となります。弊社では登記情報から取得できる所有者事項までを提供しています。

正確な面積や境界は分かりますか?

分かりません。登記情報で公簿面積を確認できますが、実測と乖離していることがあります。正確な面積や境界の確定には測量が必要で、土地家屋調査士へのご依頼となります。

特定空家等に該当するか判定できますか?

できません。該当するかどうかの判断は市区町村が行います。調査でご提供できるのは、外観から確認できる範囲の記録までです。その記録を判断の材料としてご活用ください。

誤判定はどれくらいありますか?

一律にお示しすることはできません。外観から判断する以上、居住中でも空き家に見える状態や、その逆が起こりうるためです。まず一部で試し、精度を確認してから本格的にご利用いただくことをおすすめしています。

まとめ

調査でできないことは、5つの理由に分けられます

①物理的に見えない/建物内部、裏側、家財。②立ち入れない/敷地内、チョーキング。③資格や権限が必要/戸籍、測量、耐震診断。④判断主体が別/制度の該当判断。⑤接触しないと分からない/所有者の意向。

一方、調査でしか分からないこともあります。町丁目単位の実数、使用状況、建物の外観の状態、接道のおおよその状況、現存の有無。統計にも登記にも航空写真にもない情報です。

できることは、候補を絞るまでです。その先には所有者の特定と接触という別の工程があります。この役割分担を踏まえたうえで、ご検討ください。

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