空き家調査で何件見つかるか|発注前におおよその目安を立てる

「この範囲で何件くらい見つかりますか」。調査のご相談で、最も多くいただく質問です。
正直にお答えすると、正確な件数は調査してみなければ分かりません。統計は市区町村単位の推計値で、町丁目ごとの空き家数は公表されていないためです。
ただしおおよその水準を見積もることはできます。公開されているデータを組み合わせれば、桁を間違えない程度の目安は立てられます。この記事では、その手順とずれる要因を整理します。
この記事の結論
- 正確な件数は調査しなければ分からない。町丁目単位の統計はない
- ただし3つの数字を掛ければおおよその水準は出る
- 町丁目の世帯数は国勢調査の小地域集計から確認できる
- ずれる要因は標本調査・基準日・地区内のばらつき・判定基準
- だからこそ1〜2地区で試して実数を確かめる
記事の目次
3つの数字を掛ける
目安を立てる手順は単純です。
| 数字 | 入手先 |
|---|---|
| ①対象範囲の住宅数 | 国勢調査の小地域集計(町丁字別の世帯数) |
| ②その市区町村の空き家率 | 住宅・土地統計調査 |
| ③空き家に占める放置型の割合 | 住宅・土地統計調査 |
①×②×③で、その範囲にある放置型の空き家のおおよその戸数が出ます。
計算してみる
仮に次の条件だとします。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 対象範囲の住宅数 | 2,000戸 |
| 市の空き家率 | 15% |
| 空き家に占める放置型の割合 | 40% |
2,000戸 × 15% = 300戸が空き家。そのうち40%が放置型なので、およそ120戸という計算になります。
さらに戸建てに限定するなら、その市の建て方の構成を掛けます。一戸建の割合が60%であれば、120戸 × 60%でおよそ72戸です。
町丁目の世帯数は国勢調査から分かる
意外に知られていませんが、国勢調査には小地域集計があり、町丁字別の世帯数が公表されています。
住宅・土地統計調査は市区町村単位までですが、国勢調査であればもっと細かい単位で確認できます。調査範囲に何世帯あるかは、ここから分かります。
ただし世帯数と住宅数は同じではありません。空き家には世帯がいないため、世帯数は住宅数より少なくなります。目安として使う分には差し支えありませんが、そのまま住宅数として扱わないでください。
ずれる要因は4つある
この計算はあくまで目安です。実際の件数とはずれます。理由は4つあります。
①統計が標本調査である
住宅・土地統計調査は全数調査ではありません。抽出された約340万の住戸・世帯を調べて全体を推計しています。
公表されている空き家率も空き家数も推計値です。規模が小さいほど誤差の影響を受けやすくなります。
②基準日から時間が経っている
令和5年調査の基準日は2023年10月1日です。それ以降の変化は反映されていません。
総住宅数が減少している地域では、取り壊しが進んでいます。高知県は5年間で総住宅数が1.0%減、長崎県も0.7%減。統計の数字と現況にはずれが生じます。
③地区内のばらつきが大きい
市の空き家率を町丁目に当てはめると、実態から離れます。同じ市内でも地区によって差が大きいためです。
| 市 | 区による差 |
|---|---|
| 広島市 | 中区14.6%、安佐南区7.4% |
| 大阪市 | 西成区25.9%、北区11.1% |
| 神戸市 | 兵庫区24.7%、東灘区10.6% |
市平均を使えば、実態の2倍にも半分にもなりえます。区や地区ごとのデータがあれば、そちらを使ってください。
④判定基準によって件数が変わる
何をもって空き家とするかで、件数は変わります。統計の定義と、実務で使う定義が一致するとは限りません。
とくに共同住宅を含めるかどうかは影響が大きくなります。全国の空き家のうち55.9%は共同住宅です。戸建てに限定すれば、母数は大きく減ります。
どこまで信じてよいか
この計算で得られるのは、桁を間違えないための目安です。
| 使い方 | 適否 |
|---|---|
| 数十件か数百件かの見当をつける | 使える |
| 処理能力に見合う範囲かを判断する | 使える |
| 複数の範囲を比べて優先順位をつける | 使える |
| 正確な件数を約束する | 使えない |
| 件数から売上を逆算する | 使えない |
「120件くらい」ではなく「100件前後の規模」と捉えてください。そのうえで、実数は調査で確かめる形になります。
だから1〜2地区で試す
推計にずれがある以上、いきなり広い範囲を発注するのは危険です。
想定より多ければ処理しきれず、少なければ費用に見合いません。1〜2地区で実施すれば、そのエリアの実際の水準が分かります。
| 1回目で分かること | 2回目への反映 |
|---|---|
| 実際の件数 | 次の範囲の規模を決められる |
| 推計とのずれ | 同じ市の他の地区にも当てはめられる |
| 条件の適否 | 共同住宅の扱い、築年数の想定を調整できる |
| 状態の分布 | 提案の方向を決められる |
1回目の結果があれば、2回目以降の推計精度は大きく上がります。統計の推計値ではなく、自社の実測値を基準にできるためです。
目安の立て方からご相談いただけます。
対象エリアをお聞かせいただければ、統計をもとにおおよその水準をお伝えします。
まずは1地区から、実数を確かめてください。
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費用は件数では決まらない
件数の話をするとき、あわせて押さえておくべき点があります。調査費用は件数ではなく面積で決まります。
| 項目 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金 | 10,000㎡あたり 1,000円 |
| 追加調査(1項目) | 200円 |
| 登記情報取得(所有者事項) | 750円/件 |
| DM印刷・封入・発送代行 | 180円/通 |
基本料金は、何件見つかっても変わりません。空き家が1軒もない範囲でも、歩いた分の工数は発生します。
逆にいえば、密集した地区であれば同じ費用でより多くの建物を確認できます。件数を増やしたいなら、密度の高い範囲を選ぶことになります。
件数に比例するのは後工程
登記情報の取得(750円/件)とDMの発送(180円/通)は、件数に比例します。
調査で何件見つかるかによって、この部分の金額が変わります。まず調査を実施し、件数を確認してから判断していただく形も可能です。
目的によって、必要な件数が変わる
| 立場 | 件数の考え方 | 目安 |
|---|---|---|
| 不動産会社 | 処理できる件数から逆算する | 週20件×3か月なら約240件 |
| リフォーム・外壁塗装会社 | 配布や訪問の規模に合わせる | 営業体制による |
| 自治体 | 網羅性が求められる | 対象範囲の全件 |
多ければよいわけではない
1,000件のリストを作っても、月に20件しか処理できなければ一巡に4年かかります。最後の1件に当たる頃には、最初に調べた情報は使えなくなっています。
処理できる件数に見合う規模を選んでください。件数の推計は、そのための材料です。
自治体は網羅性が前提
実態調査では、対象範囲の全件を把握することが求められる場合があります。この場合、件数の推計は予算の見積もりに使います。
費用は面積従量制のため、予算額から調査可能な面積を逆算することもできます。基本料金が10,000㎡あたり1,000円(税別)であれば、予算100万円で約10平方キロメートルが目安です。
依頼から納品までの流れ
何のためのリストか、処理できる件数はどれくらいかを確認します。統計をもとにおおよその水準もお伝えします。
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。推計ではなく実際に確認した件数を報告します。
調査結果をもとに地番を割り出し、地区別・状態別に集計します。
地図・リスト・集計表の形で納品します。件数を確認してから、登記情報の取得やDM発送をご判断いただけます。
件数を見積もるときの注意点
よくあるつまずき
- 市の空き家率をそのまま町丁目に当てはめる/同じ市内で2倍以上の差があります
- 統計の数字を実数と考える/標本調査による推計値です
- 基準日以降の変化を織り込まない/2023年10月1日時点の調査です
- 共同住宅を含めた数字で判断する/戸建てに限定すると母数は大きく減ります
- 件数から費用を計算する/基本料金は面積で決まります
よくあるご質問
何件見つかるか、事前に分かりますか?
正確な件数は調査してみなければ分かりません。町丁目単位の空き家数は公表されていないためです。ただし統計からおおよその水準は見積もれます。ご相談いただければ、対象エリアの空き家率などをもとに目安をお伝えします。
町丁目の世帯数はどこで調べられますか?
国勢調査の小地域集計で、町丁字別の世帯数が公表されています。ただし世帯数と住宅数は同じではなく、空き家には世帯がいないため世帯数のほうが少なくなります。目安としてご利用ください。
件数が少なかった場合、費用は下がりますか?
基本料金は面積に対する従量制のため、件数によって変わることはありません。ただし登記情報の取得やDMの発送は件数に比例するため、その部分は少なくなります。
推計と実際がどれくらいずれますか?
一律にお示しすることはできません。標本調査による推計値であること、基準日から時間が経過していること、地区内のばらつきがあることなど、複数の要因があるためです。だからこそ1〜2地区で実施して実数を確かめることをおすすめしています。
件数が多すぎた場合はどうすればよいですか?
処理できる件数に絞ってお使いいただき、残りは次の期間に回す形が現実的です。次回の調査では範囲を狭めることもできます。1回目の結果があれば、2回目以降の規模を決めやすくなります。
まとめ
正確な件数は、調査してみなければ分かりません。町丁目単位の空き家数は公表されていないためです。
ただし目安は立てられます。対象範囲の住宅数 × 空き家率 × 放置型の割合。町丁目の世帯数は国勢調査の小地域集計から確認できます。
ずれる要因は4つ。統計が標本調査であること、基準日から時間が経っていること、地区内のばらつきが大きいこと、判定基準で件数が変わること。とくに市平均を町丁目に当てはめると、実態の2倍にも半分にもなりえます。
だからこそ、1〜2地区で実施して実数を確かめてください。1回目の結果があれば、2回目以降は統計の推計値ではなく自社の実測値を基準にできます。推計の精度は、そこから大きく上がります。
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