AIやWEBで空き家は特定できるか|データの限界と現地調査の役割

AIやWEBで空き家は特定できるか|データの限界と現地調査の役割

空き家のリストが必要になったとき、まずWEBで調べようとするのは自然なことです。統計は公開されていますし、地図サービスも精度が上がっています。AIで判定できるという話も出てきました。

実際、WEB上のデータでかなりのことが分かります。どの市区町村に空き家が多いか、どの年代の住宅が多いか、地番が分かれば所有者は誰か。これらは現地に行かなくても調べられます。

ただし、そこで分かるのは「候補」までです。目の前の1軒が本当に使われていないのか、建物がどんな状態か、そもそもまだ建っているのか。この最後の確認だけは、データでは埋まりません。この記事では、WEBで分かることと分からないことを分けたうえで、両者をどう組み合わせるかを整理します。

この記事の結論

  • 統計で分かるのは市区町村単位の集計まで。どの建物が空き家かは分からない
  • 住宅・土地統計調査は5年に1度。基準日以降の変化は反映されない
  • 航空写真や地図データでは、建っていることは分かっても使われているかは分からない
  • 水道の使用状況などは自治体が保有する情報で、民間企業は利用できない
  • 現実的なのは「データで絞り、現地で確定する」という二段構え

WEBで分かること

まず、データで得られる情報を整理します。ここを把握しておけば、現地調査に頼らずに済む部分が見えてきます。

情報源 分かること 粒度
住宅・土地統計調査 空き家数、空き家率、建て方別・種類別の内訳 市区町村単位
地図サービス 建物の位置、形状、道路との位置関係 建物単位
航空写真・衛星画像 建物の存在、屋根の状態、敷地の様子 建物単位(撮影時点)
登記情報 所有者、地目、面積、権利関係 地番単位
自治体の空き家バンク 登録された空き家の所在と概要 物件単位

この5つを組み合わせれば、「どのエリアに空き家が多そうか」までは相当な精度で分かります。エリアの優先順位をつけるだけなら、現地に行く必要はありません。

統計は市区町村単位まで

住宅・土地統計調査は、空き家に関する最も詳細な公的データです。ただし公表される数値は市区町村単位が下限です。「この町丁目に何戸ある」という粒度では出てきません

市区町村単位で分かるのは、たとえば「A市の空き家率は20%」といった情報です。しかしA市の中でも、市街地と山間部では数字がまったく違います。県内で市町村ごとに数倍から数十倍の差がつく例も珍しくありません。市の平均値は、市内のどの地区の実態も表していないことがあります。

統計は5年に1度

もう一つの制約が更新頻度です。住宅・土地統計調査は5年ごとに実施され、直近の調査の基準日は2023年10月1日でした。それ以降に建物や地域の状況が変わっていても、統計には反映されていません

これは実務上、無視できない差になります。総住宅数が減っている県では、数年前のリストにすでに取り壊された物件が混ざります。逆に空き家が急増している県では、新しく発生した物件を取りこぼします。

データで「候補」は絞れる

ここまでの制約は、データが役に立たないという意味ではありません。エリアの優先順位づけには、統計は十分に有効です

放置型の空き家が多い市町村はどこか、別荘が混ざりやすい地域はどこか、共同住宅の比率が高いのはどこか。こうした判断は統計でできます。そのうえで、絞り込んだエリアの中を実際に歩く。この順番であれば、調査費用も抑えられます。

WEBでは分からないこと

ここからが本題です。データでは埋まらない情報を4つに分けて説明します。

①その建物が使われているかどうか

航空写真や地図データで分かるのは、建物が「建っている」ことです。しかし人が住んでいるかどうかは、上から見ても判断できません

現地で見れば、判断材料はいくつもあります。郵便受けの状態、カーテンの有無、庭木や雑草の伸び方、洗濯物、駐車場所の使われ方、玄関まわりの様子。これらは地上から近づいて初めて分かる情報です。

逆にいえば、上空からの画像で「空き家らしい」と判定しても、実際には居住中であることがあります。誤った前提でDMを送れば、受け取った側は不快に感じるでしょう。

②建物が今どういう状態か

統計にも「腐朽・破損の有無」という項目はありますが、集計値として公表されるだけで、個別の建物がどれに当たるかは分かりません。

実務では、この違いが扱いを分けます。すぐ流通に乗せられる状態の物件と、解体を前提に話をする物件では、所有者への提案内容がまったく変わるためです。外壁の劣化、屋根の破損、建具の状況。これらは外観を見て初めて記録できます

③接道や車両進入の可否

地図上では同じように見える2軒でも、現地では扱いがまったく違うことがあります。前面道路の幅、車が入れるかどうか、玄関まで階段が何段あるか。

これらは登記情報にも統計にも表れませんが、売却の可否や価格に直結します。特に地形に起伏のある地域では、この条件がリストの精度を大きく左右します。

④その建物が今も存在するか

意外に見落とされるのがこれです。航空写真の撮影時点から時間が経っていれば、すでに取り壊されている可能性があります。

総住宅数が減少している県では、取り壊しが新築の供給を上回って進んでいます。数年前に作ったリストには、現存しない物件が混ざっていると考えたほうが正確です。

AIによる判定はどこまでできるか

画像認識の技術は進んでいます。航空写真や街路画像から、建物の劣化や利用状況を推定する試みも行われています。

ただし判定の材料になるのは、あくまで画像に写っている情報です。撮影時点の見た目から推定する以上、次の制約は残ります。

制約 内容
撮影時点の情報 画像が古ければ、現況とずれる
見えない部分は判定できない 建物の裏側、内部の状況、郵便受けの中身
季節の影響 積雪期は屋根も敷地も雪に覆われ、判定材料が減る
誤判定の扱い 推定である以上、確認の工程は別に必要になる

ここで重要なのは、推定と確認は別の作業だということです。AIが「空き家の可能性が高い」と示した物件も、DMを送る前には確認が必要になります。技術が候補の絞り込みを効率化しても、最後の確認工程がなくなるわけではありません。

季節の影響は無視できない

積雪のある地域では、この問題が特に大きくなります。雪に覆われると、屋根や外壁の状態、敷地の様子、建物の傷み具合といった情報が一斉に得られなくなります。

画像による判定も、現地調査も、同じ制約を受けます。調査の時期そのものが結果の精度を左右するため、初回の調査は雪のない時期に実施することをおすすめしています。

自治体だけが使える情報がある

水道の使用状況や、固定資産税の課税情報から空き家を把握する方法もあります。ただしこれらは自治体が保有する情報です。

空家等対策の推進に関する特別措置法では、市区町村が空き家対策のために内部の課税情報などを利用できる仕組みが定められています。所有者の特定が難しい場合の手段として整備されたものです。

一方、民間企業がこれらの情報を取得することはできません。不動産会社やリフォーム会社が同じ手段を使うことは制度上想定されていません。自治体であっても、目的の範囲を超えた利用はできません。

つまり、この方法は誰でも使えるものではないということです。民間で対象を把握するには、公開情報と現地調査を組み合わせる方法が現実的になります。

データと現地調査をどう組み合わせるか

ここまでを踏まえると、進め方は次のようになります。

段階 使う手段 やること
1. エリアの選定 統計データ 放置型の多い市町村、別荘の混ざる地域などを把握し、優先順位をつける
2. 範囲の絞り込み 地図データ 住宅が集まっている町丁目・集落を特定し、調査範囲を決める
3. 現況の確認 現地調査 実際に歩き、外観から一軒ずつ状態を確認・記録する
4. 所有者の特定 登記情報 確定した地番から所有者事項を取得する
5. 接触 DM等 所有者へアプローチする

1と2はデータで、3は現地で、4は再びデータで。この組み合わせが、費用と精度のバランスとして現実的です。

調査費用は面積に対する従量制なので、1と2でどれだけ範囲を絞れるかが費用を決めます。逆に3を省くと、リストの精度が落ちたまま接触することになります。

目的によって、必要な確認の粒度は変わる

立場 主な目的 現地で確認したいこと 調査で指定するとよい条件
不動産会社 売却・買取につながる物件の発掘 使用状況、建物の状態、接道と車両進入 戸建てに限定し、状態別の記録を依頼する
リフォーム・外壁塗装会社 施工需要のある住宅の発掘 居住中かどうか、屋根や外壁の劣化 「古家(居住中)」を調査項目に追加する
自治体 実態把握、防災・防犯の重点地区の選定 腐朽・破損の程度、周辺への影響 町丁目単位で全域を対象にし、状態別の分類を依頼する

リフォームや外壁塗装が目的の場合、対象は空き家ではなく居住中の築古住宅です。この場合、統計では市区町村単位の持ち家数しか分かりません。どの住宅が築古で、外壁がどの程度傷んでいるかは、現地でしか記録できない情報です。

データでは埋まらない部分を、現地で確認します。

使用状況、建物の状態、接道の条件まで記録した形で納品できます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。統計や地図データで範囲を絞り込んでおけば、そのぶん費用は抑えられます。調査期間も対象面積と調査項目数によって変わるため、範囲をうかがったうえで費用とあわせてスケジュールをご提示します。

調査項目は、空き家(戸建て)のほか、空き地、古アパート、古家(居住中)、駐車場、倉庫・工場などから選べます。目的に合わせて組み合わせてください。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。エリアによって調査の粒度が変わることはありません。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストか(仕入れ/施工提案/実態把握)を確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。WEB上のデータでは把握できない現況を押さえる工程です。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

データだけで進めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 統計の数字を現況として扱う/調査は5年に1度で、基準日以降の変化は反映されていません
  • 市区町村の平均値でエリアを決める/市内でも地区によって実態は大きく異なります
  • 上空からの画像で空き家と判定する/建っていることは分かっても、使われているかは分かりません
  • 確認せずにDMを送る/居住中の住宅に送れば、受け取った側は不快に感じます
  • 古いリストをそのまま使う/すでに取り壊された物件が混ざっている可能性があります

よくあるご質問

統計データだけでリストは作れませんか?

作れません。住宅・土地統計調査で公表されるのは市区町村単位の集計値で、どの建物が空き家かという情報は含まれていません。エリアの優先順位づけには有効ですが、個別の物件を特定するには現地での確認が必要です。

建物が現存しているかどうかも確認できますか?

できます。現地を歩いて外観を確認するため、建物が残っているかどうかを含めて記録します。取り壊し後の区画を把握したい場合は、「空き地(更地)」を調査項目に追加していただくと地図上で区別できます。

建物の傷み具合まで記録してもらえますか?

外観から確認できる範囲で状態を記録します。屋根や外壁の劣化といった項目に分けて記録することも可能です。どの粒度が必要かはヒアリング時にお伺いします。

接道や車両進入の可否も分かりますか?

ご相談ください。外観から確認できる範囲で、必要な項目を調査条件に組み込みます。地図では判断できない条件のため、現地調査の価値が出やすい部分です。

調査範囲を自分で絞り込んでから依頼したほうが安くなりますか?

そのとおりです。費用は面積に対する従量制のため、範囲が狭いほど費用は下がります。ただし絞り込み方のご相談も承っていますので、目的をお伺いしたうえで一緒に範囲を決めることもできます。

まとめ

WEB上のデータで分かることは、思っている以上に多くあります。どのエリアに空き家が多いか、どの地域に別荘が混ざるか、地番が分かれば所有者は誰か。エリアの優先順位づけと範囲の絞り込みは、データで十分にできます

一方で、目の前の1軒が使われているのか、どんな状態か、車が入れるのか、そもそもまだ建っているのか。この最後の確認だけは、データでは埋まりません。統計は5年に1度で市区町村単位、画像は撮影時点の見た目まで。制度上、自治体しか使えない情報もあります。

現実的なのは、データで絞り、現地で確定するという二段構えです。前半をしっかり絞り込むほど調査費用は下がり、後半を省かないほどリストの精度は上がります。どちらか一方ではなく、役割を分けて組み合わせてください。

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