施設入居で空き家になった物件の扱い|接触が難しい理由と配慮

施設入居で空き家になった物件の扱い|接触が難しい理由と配慮

空き家になった原因のうち、11.3%は老人ホームなどの施設への入居です。死亡58.3%、転居26.9%に次ぐ3番目の理由になります。

この層は、相続由来とも転居由来とも状況が違います。所有者は生きていますが、その家にも、登記上の住所にもいません

そして接触には配慮が必要です。本人の状況によっては、判断そのものが難しい場合があります。この記事では、この層をどう扱うかを整理します。

この記事の結論

  • 空き家になった原因の11.3%は施設入居
  • 登記上の住所は自宅のままで、DMが本人に届かないことがある
  • 実質的な窓口が家族になる場合がある
  • 本人の状況によっては判断そのものが難しい
  • 急かさず、相談先を案内する形が適切

空き家になった原因の3番目

国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査によれば、次のとおりです。

原因 割合
死亡 58.3%
転居 26.9%
老人ホームなどの施設へ入居 11.3%

死亡と施設入居を合わせると約7割。高齢期の変化によって空き家になっています。

3つの原因は状況が違う

項目 死亡(相続) 転居 施設入居
所有者 相続人 本人 本人
登記上の住所 相続人の住所または故人の住所 旧住所のことがある 自宅のままのことが多い
判断 相続人。共有なら全員 本人が決められる 状況による
実質的な窓口 相続人 本人 家族のことがある

施設入居では、名義人と実際に対応する人が違うことがあります。ここが他の2つとの大きな違いです。

DMが本人に届かない

実務上、最も影響が大きい点です。

施設に入居しても、住民票を移していない、登記の住所変更もしていないというケースがあります。この場合、登記情報から取得できるのは空き家になっているその自宅の住所です。

そこにDMを送っても、本人はいません。返送されるか、家族が定期的に郵便物を確認していれば家族の手に渡ります

返送された場合、それは「その住所にはいない」という情報です。捨てずに記録として残しておいてください。相続なのか転居なのか施設入居なのか、原因までは分かりませんが、追えない物件として区別できます。

判断能力の問題が生じることがある

施設に入居している方の状況はさまざまです。ご自身で判断できる方もいれば、そうでない場合もあります

不動産の売却や解体は、法律上の行為です。本人の判断能力に関わる問題が生じる場合、成年後見制度などの仕組みが関わってきます

状況 関わる仕組み
本人が判断できる 本人との取引
判断能力に不安がある 成年後見制度など

この判断は、営業する側が行うものではありません。制度の内容や手続きについては、弁護士や司法書士などの専門家への確認をご案内ください。

無理に進めない

相手の状況が分からないまま話を進めるのは、双方にとって危険があります。後から契約の有効性が問題になる可能性もあります。

家族から連絡があった場合も同じです。名義人本人でなければ、代理の権限がどうなっているかを確認する必要があります

この領域は専門家の関与が前提になります。自社で判断せず、専門家への相談を案内してください

3,000万円控除には特例がある

相続した空き家を売却する際の3,000万円特別控除について、押さえておくべき点があります。

この特例は、原則として相続直前まで被相続人が一人で居住していた家屋が対象です。ところが施設に入居していた場合、その要件を満たさないようにも見えます。

ただし、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合についても、一定の要件を満たせば対象となる取扱いが設けられています

項目 内容
対象 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物は対象外)
期限 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
制度の適用期限 令和9年12月31日
必要書類 市区町村の被相続人居住用家屋等確認書

要件は複数あり、個別の状況によって判断が分かれます。適用の可否については、税理士や市区町村の窓口への確認をご案内ください。

営業する側が「使えます」と断定できるものではありません。制度としてこういう仕組みがあるという事実を伝えるにとどめてください

建物の状態は良いことが多い

施設入居による空き家は、比較的最近まで人が住んでいた住宅です。

放置期間が短ければ、建物の傷みも進んでいません。神戸市の例では、兵庫区の空き家が5年間で80.3%増えましたが、腐朽・破損があるのは4.3%だけでした。

空き家の増減 腐朽・破損あり
兵庫区 80.3%増 4.3%
長田区 5.6%減 23.4%

新しく空き家になった住宅が多い地区では、状態がまだ良い物件が残っています

ただし家財は残っている

一方、家財はそのまま残っていることが多くなります。急に入居が決まれば、片付ける時間もありません。

売却も賃貸も、家財が残っていれば進みません。片付けが前工程になります

なお調査で家財の有無は分かりません。公道から外観を確認する方法では、建物内部は見えないためです。

状態の良い空き家を、分けて抽出できます。

放置期間が短い物件は、そのまま流通に乗せられる可能性があります。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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外観から原因は分からない

制約を確認しておきます。その空き家が相続によるものか、転居によるものか、施設入居によるものかは、外から見て判断できません

分かること 分からないこと
使われていない住宅の所在 空き家になった原因
外観から見た状態 所有者の状況
おおよその放置期間 家財の有無
敷地の管理状況 家族が関わっているか

庭木が伸びている、郵便物が溜まっている。これらはどの原因でも起こります

登記情報でも判別は難しい

相続であれば、登記に所有権移転の記録が残ります。ところが施設入居では、名義は本人のままです

登記上は「売買で取得したまま移転がない」状態になり、転居との区別がつきません

結局、原因が分かるのは接触してからです。この点を踏まえたうえで、接触の設計をしてください。

接触の設計

この層に対しては、通常より慎重な設計が必要です

避けたいこと 理由
期限を強調して急かす 本人も家族も、他に優先すべきことがある
繰り返し接触する 負担になる
本人の状況を詮索する 踏み込みすぎになる
家族の権限を確認せずに進める 後から問題になりうる

伝えるべきは、そういうサービスがあるという案内までです

返送された物件をどう扱うか

返送された場合、その住所には誰もいないということです。次の判断が必要になります

選択肢 考え方
記録に残して保留する 他に追える物件があるなら、そちらを優先する
士業に相談する その物件に確実に価値がある場合
対象から外す 追える見込みが薄い場合

1件に時間をかけるより、追える物件を数で処理するほうが結果につながります。全国の放置型は385万6,000戸あり、追える物件のほうが多数です。

目的によって、扱いが変わる

立場 この層との関わり 注意点
不動産会社 状態が良ければ流通の対象 判断能力の確認は専門家へ
空き家管理会社 管理の需要が生じやすい 家族が窓口になることがある
遺品整理・不用品回収 家財が残っていることが多い 急かさない
士業 成年後見、相続の相談 業務広告のルールを確認
自治体 実態把握の対象 庁内情報で状況を確認できる場合がある

管理の需要が生じやすい

所有者は施設にいて、家に戻れる見通しが立たない。ただし手放す決断もついていない。この状態では、当面の管理が必要になります。

使用目的のない空き家の40.6%は「空き家として所有しておく」意向を持っています。この層は売却の対象ではありませんが、管理の対象にはなります

家族にとっても、遠方の実家を定期的に見に行くのは負担です。管理サービスの需要が生じやすい層といえます

自治体は庁内情報を使える場合がある

自治体には、課税情報の内部利用など民間にない手段があります。空家法の施行に必要な限度で、庁内の情報を利用できるとされています

ただし目的の範囲を超えた利用はできません。庁内の規定にもとづいて運用してください

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物の状態を記録項目に含めることができます。放置期間が短い物件を区別できるため、状態の良い空き家を抽出できます。

登記情報の取得は、調査で特定した地番をもとに行います。ただし登記簿の住所は登記した時点のものです。施設に入居していても住所変更をしていなければ、自宅の住所が記載されたままになります。

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する状態の区分を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。劣化の程度を段階に分けた記録にも対応します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

進めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 外観から原因を判断する/相続も転居も施設入居も、外からは区別できません
  • 登記情報で判別できると考える/施設入居では名義が本人のままです
  • 本人の状況を確認せずに話を進める/判断能力に関わる問題が生じる場合があります
  • 家族の権限を確認しない/名義人でなければ代理の権限の確認が必要です
  • 期限を強調して急かす/本人にも家族にも、他に優先すべきことがあります

よくあるご質問

施設入居による空き家だけを調べられますか?

できません。外観から原因は判断できず、登記情報でも転居との区別がつきません。相続であれば所有権移転の記録が残りますが、施設入居では名義が本人のままです。

状態の良い空き家だけを抽出できますか?

できます。建物の状態を記録項目に含めていただければ、劣化の程度で分類したリストを納品します。比較的最近まで人が住んでいた住宅は、状態が良い傾向があります。

家財が残っているか分かりますか?

分かりません。公道から外観を確認する形のため、建物内部の状態は判断できません。ただし敷地に置かれた放置物の有無は記録できます。

DMが返送されたらどうすればよいですか?

「その住所にはいない」という情報として記録に残してください。次回の判断材料になります。追える物件が他にあるなら、そちらを優先するほうが結果につながります。

登記の住所が自宅のままということはありますか?

あります。施設に入居しても住民票を移していない、登記の住所変更もしていないというケースがあります。この場合、登記情報から取得できるのは空き家になっているその自宅の住所です。

まとめ

空き家になった原因の11.3%は施設入居です。所有者は生きていますが、その家にも、登記上の住所にもいないという状態が生じます。

実務上、最も影響が大きいのはDMが本人に届かないことです。登記の住所変更をしていなければ、取得できるのは空き家になっているその自宅の住所になります。

そして本人の状況によっては、判断そのものが難しい場合があります。不動産の売却や解体は法律上の行為であり、判断能力に関わる問題が生じれば専門家の関与が前提になります。この判断は、営業する側が行うものではありません

また外観からも登記情報からも、原因の区別はつきません。相続なら所有権移転の記録が残りますが、施設入居では名義が本人のまま。転居との判別ができません。

この層に対しては、急かさず、相談先を案内する形が適切です。本人にも家族にも、他に優先すべきことがあります。

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