空き家の売却がまとまらない5つの理由|どこで止まっているか

空き家の売却がまとまらない5つの理由|どこで止まっているか

接触して、話は前向きだった。それなのに進まない。空き家の仕入れでは、この段階で止まる案件が一定数出ます

所有者に売る気がないわけではありません。国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査では、使用目的のない空き家について売却の意向がある層が18.3%、除却の意向がある層が19.2%。合わせて4割弱には手放す意思があります。

それでも進まないのは、意思とは別の障害があるからです。どこで止まっているかが分かれば、対応も変わります。この記事では、5つの理由を整理します。

この記事の結論

  • 止まる理由は共有・片付け・感情・条件・情報の5つに整理できる
  • 共有名義では全員の同意が必要とされている
  • 接道や境界といった物件側の条件は現地で確認できる
  • 制度を知らない所有者は多い。正確な情報が判断を動かす
  • 止まる理由によって、かかる時間も対応も変わる

①共有名義で同意が揃わない

相続が発生すると、遺産分割が済むまで不動産は相続人の共有になります。分割せずに次の相続が起きれば、共有者はさらに増えます

そして民法上、売却は変更行為にあたるとされ、原則として共有者全員の同意が必要とされています。1人でも反対すれば話は進みません。

共有者の数 合意形成の難しさ
単独名義 本人の判断で進む
2〜3人 進められる場合が多い
4人以上 時間がかかる
名義が故人のまま 相続人の特定が先に必要

登記情報を取得すれば、共有かどうかと持分が分かります。接触の前に確認しておけば、時間のかかる案件を見分けられます。

ただし相続登記が済んでいなければ、登記されている名義は故人のままです。この場合、実際の権利者は相続人となり、特定には戸籍をたどる作業が必要になります。職務上請求ができるのは士業に限られます。

②家財の片付けが済んでいない

建物の中に家財が残っている。これも進まない理由としてよくあります

とくに所有者が遠方に住んでいる場合、片付けに行くこと自体が負担です。住宅・土地統計調査によると、世帯が持つ敷地以外の土地のうち他県にあるものは全国平均で14.1%。神奈川県では33.8%にのぼります。

障害 内容
物理的な負担 遠方だと何度も通えない
費用 処分費用の負担
判断 何を残し、何を捨てるかを決められない
親族間の調整 形見分けが済んでいない

片付けが済まなければ、内見も査定も進みません。ここで止まっている案件では、片付けの選択肢を示すことが前進につながる場合があります。

調査では家財の有無は分からない

正直に書いておきます。現地調査は公道から外観を確認する形のため、建物内部の状態は分かりません。家財が残っているかどうかも判断できません。

調査で得られるのは、使われていない住宅がどこにあるか、外観がどういう状態かまでです。内部の状況は、接触して確認する工程になります。

ただし外観の状態から、放置期間の長さはある程度推測できます。庭木の伸び方、郵便受けの状態、建物の傷み具合。長く放置されているほど、片付けの負担も大きくなる傾向があります。

③感情の整理がついていない

空き家の57.9%は相続によって取得したものです。そして空き家になった原因の58.3%は所有者の死亡でした。

つまり多くの場合、その家は亡くなった家族の家です。自分で買った家を売るのとは、意味が違います。

「まだ決められない」「もう少し考えたい」。この反応は、条件の問題ではないことがあります。急かせば逆効果になります

時間差で動くことがある

直近1年間で、使用目的のない空き家の14.8%が空き家でなくなりました。理由の1位は除却22.7%、2位は貸した15.5%と所有者や親族が居住した15.5%です。

意向調査で「所有しておく」と答えた人も、状況が変われば動きます。1回の接触で結論が出なくても、記録を残しておく意味があります。

④物件側の条件が悪い

売る意思があっても、買い手が見つからないことがあります。

条件 影響
接道が狭い 再建築不可であれば買い手が限られる
境界が不明確 取引の前に確定が必要になる
建物の傷みが激しい 解体費用を織り込む必要がある
農地や山林が付随する 扱える事業者が限られる

接道は空き家に偏る

京都市の資料は、接道している道の幅員が狭いほど空き家率が高い傾向にあるとしています。神戸市でも、放置型の36%が幅員4メートル未満の道路にしか接していません。賃貸用と売却用はいずれも28%です。

建替えができず車も入らないから流通に乗らず、そのまま残る。この構図が数字に表れています。

ただし幅員4メートル未満=再建築不可ではありません。2項道路であればセットバックによって建替えできる場合があります。判断は特定行政庁が行うため、役所での確認が必要です。

この条件は現地で確認できる

5つの理由のうち、物件側の条件だけは接触前に把握できます

接道のおおよその状況、建物の外観の状態、隣接地の様子。これらは現地調査で記録できます。有望な物件と、条件の確認が必要な物件を先に分けられるということです。

⑤情報が届いていない

制度が変わったことを知らない所有者は、少なくありません。

制度 時期 内容
改正空家法の施行 2023年12月13日 管理不全空家等の新設
相続登記の義務化 2024年4月1日 3年以内の申請義務
住所等変更登記の義務化 2026年4月1日 2年以内の申請義務

あわせて、相続した空き家を売却する際の3,000万円特別控除があります。要件は昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であることなど。制度の適用期限は令和9年12月31日までです

期限があることが動機になる

3,000万円控除には期限があります。相続発生から3年から4年で、この選択肢は消えます

ただし伝え方には注意が必要です。期限を強調して急かすと、相手は身構えます。制度としてこういう仕組みがあるという事実を伝え、詳しくは市区町村の窓口や税理士に確認してほしいと案内する。この形が適切です。

なお「放置すると固定資産税が6倍になる」という説明は不正確です。特例が外れるのは勧告を受けた場合に限られ、負担調整措置により固定資産税で最大約4.2倍という計算になります。

物件側の条件は、接触前に確認できます。

接道と建物の状態を記録するため、扱いを先に分けられます。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。

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止まる理由によって対応が変わる

止まっている理由 かかる時間 できること
共有名義 長い 士業を紹介する、優先度を下げる
片付けが済まない 中程度 片付けの選択肢を示す
感情の整理 読めない 急かさず、記録を残す
物件側の条件 条件による 接触前に把握し、扱いを分ける
情報が届いていない 短い 正確な情報を伝える

5つのうち、最も早く動く可能性があるのは⑤です。制度を知らなかっただけであれば、正確に伝えれば判断が進むことがあります。

逆に①と③は時間がかかります。ここに時間をかけすぎるより、他の案件を進めるほうが結果につながる場面もあります。

記録を残しておく

止まった案件でも、どこで止まったかを記録しておけば次に使えます

記録すること 次に使えること
接触した日と方法 再接触のタイミングを判断できる
止まった理由 条件が変われば再開できる
共有者の数 優先順位づけに使える
物件の状態 時間経過による変化が追える

1年で14.8%が動いています。状況は変わります。記録があれば、変わったときに戻れます。

目的によって、対応できる範囲が変わる

立場 関われる部分
不動産会社 物件側の条件、情報の提供、売却の実行
買取再販 同上。加えて条件が悪い物件も扱える場合がある
解体会社 建物の傷みが理由の場合、解体の選択肢を示せる
士業 共有名義、相続登記、相続人の調査
空き家管理会社 止まっている間の管理を提案できる

止まっている間の受け皿もある

共有名義で合意が取れない、感情の整理がつかない。この状態では、当面持ち続けるしかありません

管理は保存行為にあたるとされ、要件が売却より緩やかです。合意形成が難しい物件ほど、管理の需要が生じるという構図になります。

個別の判断は状況によって分かれます。専門家への確認をご案内ください。

費用・期間・納品物

弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。

項目 料金(税別)
基本料金 10,000㎡あたり 1,000円
追加調査(1項目) 200円
登記情報取得(所有者事項) 750円/件
DM印刷・封入・発送代行 180円/通

調査では、建物の状態と接道の状況を記録項目に含めることができます。物件側の条件を接触前に把握できるということです。

登記情報の取得は、調査で特定した地番をもとに行います。共有名義であれば、共有者の氏名と持分も確認できます

納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。所有者情報を取得したうえで、DMの印刷・封入・発送まで一括してご依頼いただくことも可能です。

弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。

依頼から納品までの流れ

目的と調査範囲のヒアリング
何のためのリストかを確認したうえで、対象の市区町村・町丁目と調査項目、記録する条件を決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
調査候補の抽出と調査地図の作成
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。共同住宅や別荘地を除外した設定にも対応します。
現地での実地調査
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。接道の状況もこの工程で確認します。
地番と所有者の特定
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、登記情報から所有者事項を取得します。共有名義の場合、共有者と持分も確認できます。
納品とアプローチ支援
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。

進めるときの注意点

よくあるつまずき

  • 止まった理由を確かめずに再接触する/理由によって対応も時間も変わります
  • 共有名義の案件に時間をかけすぎる/合意形成には時間がかかります。優先度の判断が必要です
  • 感情の問題を条件の問題として扱う/価格を上げても動かないことがあります
  • 期限を強調して急かす/相手は身構えます。事実を伝えるにとどめてください
  • 止まった案件の記録を残さない/1年で14.8%が動いています。状況は変わります

よくあるご質問

家財が残っているかどうか分かりますか?

分かりません。現地調査は公道から外観を確認する形のため、建物内部の状態は判断できません。ただし外観の状態から、放置期間の長さはある程度推測できます。

共有名義かどうか事前に分かりますか?

登記情報を取得すれば確認できます。調査で地番を特定したうえで所有者事項を取得する形になります。共有名義であれば、共有者の氏名と持分が記載されます。

接道の状況も記録してもらえますか?

ご相談ください。外観から確認できる範囲で、前面道路の状況を記録項目に組み込めます。ただし正確な幅員の測定や道路種別の確認は行いません。役所での確認の手前で候補を絞る用途としてご活用ください。

建物の傷み具合まで分かりますか?

外観から確認できる範囲で記録します。屋根や外壁の劣化、破損の程度といった項目に分けることも可能です。解体を前提に話をする物件と、そのまま流通に乗せられる物件を分けて扱えます。

一度断られた相手に再接触してよいですか?

短期間に繰り返すのは避けたほうがよいものの、一定期間をおいての再接触には意味があります。状況は変わるためです。ただし送付停止の意思を示された相手には、除外の仕組みを設けてください。

まとめ

売却の意向がある層は18.3%、除却の意向がある層は19.2%。4割弱には手放す意思があります。それでも進まないのは、意思とは別の障害があるからです。

止まる理由は5つ。共有・片付け・感情・条件・情報です。

このうち物件側の条件だけは、接触前に把握できます。接道のおおよその状況、建物の外観の状態。これらは現地調査で記録できるため、有望な物件と確認が必要な物件を先に分けられます。

そして最も早く動く可能性があるのは、情報が届いていない場合です。制度を知らなかっただけであれば、正確に伝えれば判断が進むことがあります。ただし期限を強調して急かさないでください。

共有名義と感情の整理は、時間がかかります。ここに時間をかけすぎるより、他の案件を進めるほうが結果につながる場面もあります。止まった理由を記録しておけば、状況が変わったときに戻れます。

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