解体業者が営業先を見つける方法|傷んだ建物と接道を記録する

解体工事の受注経路は、多くの場合、元請けからの紹介です。ハウスメーカー、不動産会社、建設会社。自社で直接、所有者から受注する機会は限られます。
ただ、その所有者は確実に存在します。全国の空き家900万1,600戸のうち、賃貸にも売却にも出ておらず別荘でもない放置型は385万6,000戸。そのうち一定数は、傷みが進んで解体が現実的な選択肢になっています。
問題は、どこにあるか分からないことです。統計で分かるのは市区町村単位の集計までで、どの建物がどの程度傷んでいるかは示されません。この記事では、解体の提案先をどう見つけるかを整理します。
この記事の結論
- 放置型は385万6,000戸。うち一定数は解体が現実的な選択肢になっている
- 傷み具合は統計に出ない。外観から記録するしかない
- 京都市では放置型の長屋建52%、一戸建28%に腐朽・破損があった
- 所有者が動く材料は補助金・税制・相続の3つ
- 接道が狭い物件は重機が入らない。記録しておけば見積りの精度が上がる
記事の目次
どこに傷んだ建物があるか
解体の提案先として意味があるのは、傷みが進んで使うのが難しい建物です。まだ流通に乗せられる状態であれば、所有者は売却を検討します。
ところが、この情報は統計に出てきません。住宅・土地統計調査には「腐朽・破損の有無」という項目がありますが、公表されるのは集計値だけで、個別の建物がどれに当たるかは分かりません。
| 知りたいこと | 統計で分かるか |
|---|---|
| 市区町村に腐朽・破損のある空き家が何戸あるか | 分かる |
| どの建物がそれに当たるか | 分からない |
| どの地区に集中しているか | 分からない |
| 重機が入る接道があるか | 分からない |
建て方によって傷み方が違う
参考になるデータがあります。京都市が公表した資料では、放置型の空き家について建て方別の腐朽・破損率が示されています。
| 建て方 | 放置型の戸数 | 腐朽・破損あり | 割合 |
|---|---|---|---|
| 一戸建 | 2万4,700戸 | 6,800戸 | 28% |
| 長屋建 | 2,500戸 | 1,300戸 | 52% |
| 共同住宅 | 1万6,900戸 | 1,900戸 | 11% |
長屋建は半数以上に腐朽・破損があります。一戸建の28%、共同住宅の11%と比べて突出した水準です。腐朽・破損のある放置型1万100戸のうち、80%を一戸建と長屋建が占めました。
神戸市でも区による差が確認できます。長田区23.4%、北区20.0%に対し、兵庫区は4.3%、西区は2.9%。同じ市内でも8倍の開きがあります。
「空き家が多い区」と「傷んだ建物が多い区」は違う
神戸市の兵庫区は、空き家が5年間で80.3%増えました。ところが腐朽・破損があるのは4.3%だけです。新しく空き家になった住宅が多く、状態はまだ良いということになります。
逆に長田区は空き家が5.6%減っているにもかかわらず、23.4%に腐朽・破損があります。長く残り続けている空き家が多いと読めます。
空き家率の高さでエリアを選ぶと、この違いが見えません。解体の提案先を探すなら、見るべきは増加率ではなく状態です。
現地調査で記録できること
弊社の土地調査では、調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ確認・記録します。
| 記録項目 | 解体の検討にどう使うか |
|---|---|
| 建物の状態 | 屋根・外壁の劣化、破損の程度。優先順位づけの材料 |
| おおよその規模 | 階数、建物の大きさ。見積りの目安 |
| 接道の状況 | 前面道路の幅、重機の進入可否 |
| 敷地の状況 | 隣家との距離、作業スペースの有無 |
| 使用の実態 | 実際に使われていないかの確認 |
| 地番 | 登記情報の取得につなげるための特定 |
接道は見積りに直結する
解体工事では、重機が入るかどうかで工法も費用も変わります。前面道路が狭ければ手壊しの割合が増え、廃材の搬出にも手間がかかります。
この条件は、統計にも登記情報にも記載されません。地図でも正確な幅員は分かりません。現地で確認するしかない情報です。
実際、京都市の資料は「接道している道の幅員が狭いほど空き家率が高い傾向にある」と明記しています。神戸市でも放置型の36%が幅員4メートル未満の道路にしか接していません。傷んだ空き家と狭い接道は重なりやすいということです。
隣家との距離も確認できる
密集地では、隣家との距離が作業の難易度を左右します。養生の範囲、粉じん対策、振動への配慮。外観から確認できる範囲で記録しておけば、見積りの前提が整理できます。
所有者が動く3つの材料
傷んだ建物を見つけても、所有者が動かなければ受注にはつながりません。判断を後押しする材料は3つあります。
①解体補助金
多くの自治体が、解体費用の一部を補助する制度を設けています。補助率は解体費の1/3〜1/2程度、上限は50万〜100万円が中心です。
ただし制度の有無も要件も自治体によって異なります。老朽危険家屋を対象とする制度では、自治体による老朽度の判定が前提になることもあります。
多くの制度で、工事着手前の申請が必要です。解体してから申請しても対象外になります。提案の際は、まず市区町村の窓口に確認するよう案内してください。
②税制
解体すると土地の住宅用地特例は外れますが、建物分の固定資産税はかからなくなります。全体でどうなるかは、土地と建物の評価額によって変わります。
なお「解体しないと税金が6倍になる」という説明は不正確です。特例が外れるのは勧告を受けた場合に限られ、しかも負担調整措置により課税標準額の上限は評価額の70%。固定資産税で最大約4.2倍という計算になります。
不正確な説明は、詳しい所有者には見抜かれます。制度の仕組みを示したうえで、詳しくは市区町村の窓口や税理士へと案内する形が安全です。
③相続
全国で世帯が所有する空き家の61.6%は、相続・贈与によって取得したものです。引き継いだ家をどうするか決めかねている所有者が多いということです。
相続した空き家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。対象は昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、令和6年1月1日以後は、譲渡後に買主が除却工事を行った場合も対象となりました。
期限は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。解体を含めた判断に時間的な区切りがあるということです。
傷んだ建物と接道の条件を、まとめて記録します。
重機が入るかどうかまで押さえたリストで、見積りの精度が上がります。
目的とエリアを伺ったうえで、調査項目と範囲をご提案します。
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受付 10:00〜20:00/年中無休
所有者への接触
空き家の所有者は、その建物に住んでいません。訪問しても会えないのが前提です。
登記情報から取得できるのは氏名と住所で、電話番号は含まれません。公開情報だけで接触するなら、郵送が実質的な手段になります。
| 工程 | やること |
|---|---|
| 1 | 現地調査で傷んだ建物を確定し、地番を割り出す |
| 2 | 登記情報から所有者事項を取得する |
| 3 | DMを送る |
弊社では、調査で特定した地番をもとに登記情報を1件750円(税別)で取得し、そのままDMの印刷・封入・発送まで1通180円(税別)で代行できます。
返送は一定割合で出る
登記簿の住所は、登記の手続きをした時点のものです。その後に転居していても、変更登記をしなければ更新されません。一定の返送は構造的に避けられません。
なお2026年4月から住所等変更登記が義務化されました。長期的には改善に向かいますが、施行前の変更は2028年3月31日までの対応とされているため、当面は古い住所が残っている前提で発送数を決めてください。
目的によって、見る条件が変わる
| 立場 | 主な目的 | 優先して見る条件 | 調査で指定するとよい条件 |
|---|---|---|---|
| 解体会社 | 解体工事の受注 | 建物の劣化、接道、隣家との距離 | 状態と接道を記録項目に含める |
| 不動産会社 | 解体を前提とした仕入れ | 敷地の広さ、接道、建物の状態 | 空き地も同時に指定する |
| 自治体 | 管理不全空家等の把握 | 腐朽・破損の程度、周辺への影響 | 町丁目単位で全域を対象にし、状態別の分類を依頼する |
空き地も同時に見ておく
解体後の土地がどうなっているかは、その地域で解体が進んでいるかの手がかりになります。空き地が多い地区は、すでに解体が行われた地区だということです。
「空き地(更地)」を同時に指定すれば、空き家と空き地を色分けした地図で納品します。調査項目の追加は1項目につき200円(税別)です。
倉庫・工場も対象になる
住宅だけが解体の対象ではありません。使われていない倉庫や工場も、転用や建替えの過程で解体が発生します。
これらは住宅・土地統計調査の対象外で、全国にどれだけあるかを示すデータが存在しません。件数は住宅より少なくなりますが、1件あたりの規模は大きくなります。
費用・期間・納品物
弊社の土地調査サービスの料金は、調査面積に応じた従量制です。基本料金は10,000㎡あたり1,000円(税別)、調査項目を追加する場合は1項目につき200円(税別)が加算されます。町丁目単位まで絞り込んだ範囲指定に対応しています。
| 項目 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金 | 10,000㎡あたり 1,000円 |
| 追加調査(1項目) | 200円 |
| 登記情報取得(所有者事項) | 750円/件 |
| DM印刷・封入・発送代行 | 180円/通 |
面積に対する従量制のため、調査費用は範囲の切り方でほぼ決まります。旧市街地や造成年代の古い住宅地に絞り込むほど、費用あたりの成果は上がります。
納品形式は、ゼンリン地図への転記(調査項目ごとに色分け)、住所・地番リスト(PDF形式/追加料金)、Excel件数リスト(地区別・分類別集計)からお選びいただけます。
弊社は47都道府県をカバーする自社ネットワークを持ち、県境をまたぐ調査も同一の基準・フォーマットで実施できます。
依頼から納品までの流れ
何のためのリストか(解体提案/用地の仕入れ/実態把握)を確認し、記録する状態の区分や接道の扱いも含めて決めます。面積に応じた見積りをご提示します。
指定条件に該当する建物・土地を選定し、調査員が使用する地図に落とし込みます。
調査員が対象エリアを歩き、外観から一件ずつ状態を確認・記録します。接道の状況もこの工程で確認します。
調査結果をもとに対象の地番を割り出し、必要に応じて登記情報から所有者事項を取得します。
地図・リスト・集計表の形で納品します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくこともできます。
提案を進めるときの注意点
よくあるつまずき
- 空き家率の高いエリアを選ぶ/増えている区と傷んでいる区は一致しません。見るべきは状態です
- 接道を確認せずに見積りを出す/重機が入るかどうかで工法も費用も変わります
- 「補助金が使えます」と断定する/制度の有無も要件も自治体によって違います
- 着手前申請に触れない/解体してから申請しても対象外になります
- 「税金が6倍になる」と伝える/勧告を受けた場合に限られ、上限も約4.2倍です
よくあるご質問
建物の傷み具合まで記録してもらえますか?
外観から確認できる範囲で記録します。屋根や外壁の劣化、破損の程度といった項目に分けることも、段階に分けて分類することも可能です。どの粒度が必要かはヒアリング時にお伺いします。
接道の状況も記録してもらえますか?
ご相談ください。外観から確認できる範囲で、前面道路の状況を記録項目に組み込めます。重機の進入可否は見積りに直結する条件のため、現地調査の価値が出やすい部分です。
倉庫や工場も対象にできますか?
できます。「倉庫・工場」を調査項目として指定いただければ、使われていない事業用の建物を調査・報告します。住宅・土地統計調査の対象外のため、現地調査でしか把握できない対象です。
所有者が県外に住んでいる場合も特定できますか?
できます。調査で特定した地番をもとに登記情報を取得するため、居住地が県外であっても対応します。そのままDMの印刷・封入・発送までご依頼いただくことも可能です。
空き地も同時に調査できますか?
できます。調査項目として両方を指定していただければ、同じ範囲を1回歩いて両方を記録し、地図上で色分けして納品します。追加は1項目につき200円(税別)です。
まとめ
解体の提案先として意味があるのは、傷みが進んで使うのが難しい建物です。しかしその情報は統計に出てきません。公表されるのは市区町村単位の集計だけで、個別の建物がどの状態かは分かりません。
そして空き家が増えている地区と、傷んだ建物が多い地区は一致しません。神戸市の兵庫区は空き家が80.3%増えましたが腐朽・破損は4.3%。空き家が減った長田区は23.4%です。
接道も重要です。重機が入るかどうかで工法も費用も変わりますが、これは現地でしか分かりません。傷んだ空き家と狭い接道は重なりやすいという傾向も、京都市や神戸市のデータで示されています。
所有者が動く材料は、補助金・税制・相続の3つ。いずれも正確に伝えることが前提です。制度の仕組みを示したうえで、詳しくは窓口や専門家へ。この形が最も信頼されます。まずは1〜2地区で実施し、中身を確認してから範囲を広げてください。
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